Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2011年2月21日開催 Web広告研究会 第23回WABフォーラムレポート(2)第二部「ファンの数にとらわれずに コミュニケーションの目的に合わせた施策を行う」 イベント報告

  • 掲載日:2011年3月31日(木)

(前ページ)2011年2月21日 第23回WABフォーラム 第一部

【第23回WABフォーラムレポート 後編】

ファンの数にとらわれずに
コミュニケーションの目的に合わせた施策を行う



第23回WABフォーラムの第二部は、「デジタルコミュニケーションで変わるソーシャルマーケティング」と題したパネルディスカッションが行われた。壇上ではTechWave編集長の湯川鶴章氏をモデレーターに、株式会社リクルートの友澤大輔氏、株式会社電通の森直樹氏、アジャイルメディア・ネットワーク株式会社の徳力基彦氏をパネリストに迎えての進行となった。

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TechWave編集長
湯川 鶴章氏


湯川氏は最初に、同じ時事通信ホールで2007年7月に行った「爆発するソーシャルメディア」というイベントを振り返り、「本当にソーシャルメディアが爆発しだした」と話した。「当時はGoogleが全盛期で、検索で世の中が変わるという主張が一辺倒だったが、ソーシャルメディアの時代が来ることを主張していた」という湯川氏は、「思ったよりも早いスピードで、昨年の秋くらいからソーシャルメディアの時代が来たと感じる人が多くなった」と説明した。

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株式会社リクルート
インターネットマーケティング室 マーケティング推進G
ゼネラルマネージャー
友澤 大輔氏


続いてリクルートの友澤氏が、同社のソーシャルメディアの取り組みについて、クーポン共同購入サイト「ポンパレ」の状況を中心に説明した。ポンパレは、講演の段階でTwitterのフォロワー数が8万5,000人、Facebookのファン数が2万人を超えており、ディール(取引)の情報をTwitterやFacebookに流してポンパレへの流入を促すような施策を行っているという。また、Facebookでは、タブを利用してサービス告知を行い、ユーザーの声を聞くことも積極的に行っており、サービス改善の要望を吸い上げて実際にサービスに活かすことも行われているようだ。

次に、リクルートのサービスのなかでポンパレに次いでFacebookのファン数が多い不動産情報サイト「SUUMO」について説明。ポンパレが販売数などビジネス成果を中心としたコミュニケーションを行っているのに対し、SUUMOではキャラクタを中心としたブランディングを行い、「あるけ!ふどうさん」などのソーシャルゲームを実験的に展開し、どのようなコミュニケーションが行えるかを試行錯誤しているという。これらのソーシャルメディアへの取り組みについて友澤氏は、「トランザクションのなかで換金できる可能性がどれだけあるのかを縦軸に、我々が持っているコンテンツ量の多さを横軸にしてサイトの方針を変えている。たとえば、ポンパレは換金の可能性が高くコンテンツ量も多いため、会員獲得などのキャンペーンを行った結果、最近はソーシャルメディアからの購入数も得られるようになっている。一方で、不動産を扱うSUUMOはソーシャルメディアから購入に直結することが少ないため、認知やブランディングに力を入れている」と説明した。

ここで湯川氏が「Facebookの公式ページで1万人のファンを集められる企業は頑張っていると思うが、テレビの視聴率から考えれば、1万人はそれほど大した数字ではない」と話し、電通の森氏に「Facebookのファンを増やして何の効果があるのか、という声に対して代理店としてどう答えているのか」と質問した。それに対して森氏は、「そう言ってもらえると代理店としては追い風。コミュニケーションの目的として“まず知ってもらう”というマス的なやり方は非常に重要だが、シンパシーの深い人に継続的にコミュニケーションしてエンゲージメントを深めていくことで、マスと近い効果あるいはマスとの相乗効果を得ることができ、企業や商品への関心度や親和性を高める効果を期待できる。私自身は、企業や商品のファンは多ければ多いほどよいのでなく、小さくても成り立つコミュニケーションもあれば、大きいほどよいコミュニケーションもあり、戦略やKPIによって変わってくると思う」と答えた。

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株式会社電通
コミュニケーション・デザイン・センター
次世代コミュニケーション開発部 プロデューサー
森 直樹氏



ポスト検索の意味から考える
これからのコミュニケーション


今回のフォーラムの冒頭で発表されたWAB宣言「ポスト検索~変わる生活者、Digitalコミュニケーション時代に向けて~」の感想を求められた友澤氏は、「検索が出てきた時代、リクルートは検索というものが伸びると思っておらず、検索が流行ってしまうと紙媒体中心のビジネスモデルが崩れると考えていたが、現在では事業の収益の1/3くらいがインターネット事業となっている。ポスト検索のソーシャルの時代となった今、どのように対応していくかを考えていかなければならない」と答えた。同様に森氏は、「ポスト検索というのは、検索行為が新しくなるということだと思う。これまでのテレビやインターネットから、新たな手法であるソーシャルメディアやスマートデバイスというコンタクトポイントが増えてきているが、トレードオフではなく、融合してそれぞれの活かし方を考えなければならない。これらをすべて理解できる人が今後は必要になってくる」と話した。

再び湯川氏が「これまで、Webサービスには2,000万人の壁があると言われ、どんなサービスでも日本ではユーザー数が2,000万人以上にはならなかった。ソーシャルメディアやモバイルなどのさまざまなデバイスがつながって融合することによって、2,000万人の壁を超えてユーザー数が1億人になるということは起こるのか」と質問すると、森氏は「少なくとも日本は、きちんと利活用できているユーザーの数が米国ほど多くなく、実際に1億人のユーザーを獲得できるかは難しい。今後は、これらのユーザーが延びていくことを期待したい。機能的な価値を果たしているサービスであれば、コミュニケーションの手段として根付く可能性は高く、ネットワーク効果で回りの人につられて利用する人も増えると思う」と答えた。

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アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
代表取締役社長CEO
徳力 基彦氏


パネリストの2名が“ポスト検索”に注目したのに対し、アジャイルメディア・ネットワークの徳力氏は、「個人的には、宣言の中に“コミュニケーション”という言葉が入っているというのがうれしかった」と話した。「インターネットは昔も今もコミュニケーションが一番の魅力だったはず」と話す徳力氏は、「以前は、企業がインターネットのコミュニケーションを活用しようと考えても、2ちゃんねるなどの影響で使いづらく、インターネットのコミュニケーションは企業からずっと無視され続けてきた。しかし、最近のソーシャルメディアブームで、あらためてネットにおける新しいコミュニケーションの可能性が明確になってきているのではないか」と説明した。徳力氏によれば、「日本でソーシャルメディアの活用というと、すぐに企業がTwitterの公式アカウントやFacebookファンページを作ることと思われるが、、個人的にはそれはオウンドメディアに近い活動で、あくまでソーシャルメディアとオウンドメディアが重なっているところに窓口を作っているだけと思った方がいいと思う」と話し、ソーシャルという言葉に惑わされている傾向があることを危惧する。その上で、「本当に企業にとって重要なのは、ソーシャルメディア側での利用者の会話やコミュニケーションをいかに最大化するかということ」と話し、「その意味では、今回の宣言は、ソーシャルという言葉を一切使わずに、サブタイトルにコミュニケーションという基本的な言葉を持ってきたことはすごいと思う」と語った。

また、徳力氏は「利用者側の会話やコミュニケーションに、いかに自分たちの製品やサービスが自然に出てくるようにするかが重要で、リアルな会話では伝播力が弱かったものが、インターネットやソーシャルメディアにより効率的に伝播する可能性が高くなってきていると思う。そのためには、TwitterアカウントやFacebookのファンページを作ることばかりにエネルギーを注ぐのではなく、良い製品やサービスを作るという本質的なところに戻らないといけないと感じている」と指摘した。

一方、森氏は広告代理店の立場から「ソーシャルメディアによって利用者のコミュニケーションを聞きやすくなったことは確か。コミュニケーションを取ろうと考えるよりも、まず傾聴することが重要だと思うし、傾聴ができていない企業が多い。傾聴したユーザーの声を自分の会社のことだと受け止め、その先のコミュニケーションや商品開発などに活かしていくことが重要で、企業にとってのソーシャル活用の第一歩となる」と話した。


ユーザーの声を傾聴し
可視化することによって伝播を行う


徳力氏と森氏の話を聞いた湯川氏は、「まず、良いものを作って、ユーザーの声を傾聴するということは、ソーシャルメディアの活用でよく話に出る。それをできていない企業が多いから言われることが多いのだと思うが、それらができた後はソーシャルメディアで何をすればよいのか」と話を切り出した。

徳力氏は、「個人的には可視化だと思う」と話し、「たとえば、リアルの世界では自分がどの店に行ったとか、今日は何を飲んだとかを会話にする可能性は少ないが、foursquareなどを使っていれば自分がどこの店に行ったとか、毎日どこへ行っているかといった行動が可視化されることになる。利用者がファンであることを自然にソーシャルメディア上で言ってもらえるようにし、可視化できるような仕組みを作り、キャンペーンを行えることがソーシャルメディアならではの取り組みだと思う」とした。

湯川氏は「オープンなTwitterやfoursquareでは可視化を行えるが、比較的クローズドなFacebookやmixiではどのように情報が伝播すると考えているのか」と話を向けると、森氏が「Facebookやmixiでは、友達を巻き込んでいく仕掛けを作ることが広告の手法としては一番効果があると思っている。最初は起爆剤としてバナー広告やマス広告が必要になると思うが、起爆さえできれば、友達から来るリクエストに対しては参加するシンパシーが高い。ソーシャルメディアのキャンペーンによって自社製品のクチコミをさせるとなると非常に重いが、ただキャンペーンを楽しんでもらうということであれば、友達を巻き込むことは非常に軽いことなので、そこから始めていくことは非常に良いと思う」と答えた。

しかし、それに対して徳力氏は、「自分のイメージする可視化は回りに見えればいいので、オープンかクローズドかは関係がない」と話した。「Facebookのいいねボタンなどは、可視化の最たる技術だと思う。Webサイトを見に行って、何かに投票したり投稿する行為は、実はそのサイトの人しか知らなかったりするものが、今はタイムラインで何でも流れてしまう。たとえば、mixiが年末にやっていたmixiクリスマスは、広告枠を使わずにmixiボイスと連動させていたが、誰かが何かに参加したよ、というのが可視化されるとその周りの人が引き込まれるというインフラができていることがポイントだと思う」(徳力氏)



米国と日本の利活用の違いと
ユーザー層の見極めが重要


続いて、湯川氏が「森さんの話のなかで、マス広告やバナー広告で最初のキッカケを作って伝播すると言っていたが、今のマス広告はあまりクチコミで広めたいと思わせるようなものになっていない。今後変わっていくのか」と話を向けると、森氏は「マスコミュニケーションの後、ソーシャルメディアで爆発させるということを想定しているケースはまだ少ない。今後は機運も高まっているので、マス設計をする際にもソーシャルメディアを意識してうまくつなぎ、爆発的に伝播するといった成功事例が増えてくることを期待したい」と話した。

具体的には、「わかりやすいメッセージと見た人が参加したくなるような企画があれば、成功しやすいかもしれない。ウェブ主導やソーシャル主導ではなく、フラットな考えで最終的にどのようなムーブメントを起こすかという視点からすべてを組み立てていくことが成功に導くと思う」と森氏は話し、「ファンの人だけにわかるCMを流し、コアなファンがつぶやくことで伝播させていくという手法もある」と湯川氏も話した。

ここで、話題は米国と日本のソーシャルメディア利用者数の違いに話題が上る。湯川氏が「米国ではソーシャルメディアの利用者が6割以上いて、話題を広げるための仕組みがすでにできているが、日本ではまだ10%程度のソーシャルメディアの利用率で、大きな効果はないのではないか」と話すと、「企業としては、Webリテラシの高い層だけでなく、マスを使いたいのであればもっと広い層に広げたいと考えているので、ぼやけてしまいがち。両方の目的を一緒に達成しようとすると、なかなか難しいということがジレンマとなる。皆が使って伝播してくれるようなサービスが増えると、米国のような事例も増えてくると期待している」と森氏も今後のソーシャルメディアの成長に期待を寄せている。

一方で、徳力氏は「マスマーケティングをする製品なのか、ターゲットを絞ってマーケティングをする製品なのかという、根本的なスタートラインの議論を始めたほうがいいと思う」と、そもそもの手法が違うことを強調した。「日本はマスマーケティング最適国家で、テレビCMの話題を皆と共有でき、マスマーケティングの効果は高い。マスマーケティングをやるべき製品なら、マスマーケティングだけでソーシャルメディアを無理に使わなくてもいいのではないか。ただし、ターゲットを絞ってコミュニケーションしたいと考えるのであれば、ソーシャルメディアのコミュニケーションから入って、そのメッセージを広げるためにマスメディアを使うという順番になると思う」(徳力氏)

それを聞いた友澤氏も「そういった意味では、リクルートのような領域がハッキリとしたようなサービスのほうがソーシャルメディアを活かしやすいのではないかと考えている」とした。

森氏は、ディスカッションの最後に1月に米国で行われたコンシューマエレクトロニクスのイベント「International CES 2011」に行ったときに、タクシーの運転手と話した経験談を披露する。10人の運転手に「ソーシャルメディアを使っているか」と聞いたところ、10人全員が「ソーシャルメディアを使っている」と答え、なかには運転中にiPhoneでTwitterをやっている運転手もいたという。米国のソーシャルメディアの普及を改めて認識した森氏は、「米国の事例や状況をウォッチして、参考にしながらソーシャルメディアの施策を考えることが多いが、日本と米国のユーザー数の違いを認識し、使っている層を見極めてコミュニケーションしていくことが重要だと思う」と話し、第二部のパネルディスカッションが終了した。


Web広告研究会として
Webに関わる人たちの熱意にこたえていく



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社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会
副代表幹事
新島 徹氏

WABフォーラムの最後となる閉会挨拶では、社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会 副代表幹事の新島徹氏が登壇。「このようなフォーラムを行えるのはスタッフの力が大きく、さまざまな人の努力で開催ができている」と話し、「Webページも表面上はきれいにできているが、裏方ではバタバタと社内調整し、ユーザーの評価を取り入れるなど、見えないところで努力がなされている。これまでWebの仕事を続けられている会員の方々の、毎日更新しながら周りに気を配っている話を聞くと、熱意に心を討たれる。そういった熱意にこたえていけるように、これからのWeb広告研究会を維持していきたい」と閉会の挨拶を述べ、第23回WABフォーラムを終えた。