Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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第21回WABフォーラムレポート第二部、第三部 「トリプルメディア、トリプルスクリーン戦略を考える時代」でWeb担当者がやりたいことを実現させるために重要なこと イベント報告

  • 掲載日:2010年3月18日(木)

第一部でメディア戦略に対する貴重な意見が交わされたトークセッションが行われた後、第二部では、「多様化するメディア/デバイスに企業はどう向かい合えば良いのか? 〜広報部、広告部、宣伝部、崩壊?〜」と題されたトークセッションが開催され、Web広告研究会消費者メディア委員会の委員長である本間充氏をモデレーターに、ad:tech Tokyoプロジェクトディレクターの武富正人氏とネットイヤーグループの石黒不二代氏が出席した。冒頭に「タイトルは固めだが、少しゆるめにセッションしていきたい」と本間氏が話すように、動画やTwitterなどを使いながら、和気あいあいとした雰囲気の中でセッションが進んでいった。


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Web広告研究会 消費者メディア研究委員会 委員長/花王株式会社 本間充氏


めまぐるしく変化する環境の中で何を行うか

セッションの冒頭で武富氏は「皆さんに見せたい動画がある」と話し、YouTube上にアップされている「Did you know 4 0 〜あなたは知っていましたか?〜」という動画が紹介された。インターネットやメディア関連の統計情報を興味深く紹介するこの動画を来場者に見せることによって武富氏は、「日本だけでなく、世界中の人がメディアやデバイスの変化・技術革新時代にチャレンジしようとしている。それが挑戦につながることを共有したい」と話した。

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ad:tech Tokyo プロジェクトディレクター 武富正人氏


同様に石黒氏も、変化の大きな流れについて「迷走している状態で、供給側がさまざまなことを仕掛けているにもかかわらず、実際はみんなが追いついていない状態」と話した。「世の中の動きが早過ぎるなかで、それをどう乗り越えていくかがテーマ」と本間氏も続けるが、「Twitterなどによって自らリアルタイムに発信できるようになってきたが、Twitterが広告に利用されているケースは少ない。YouTubeなどは広告に使われているが、コマーシャルの手法としては大きな変化は生まれてきていない」と新たなメディアを使いこなせていない現状が説明されていった。

そのなかで武富氏は、1つの提議として80年代に放送されていた洗顔フォームのCMを紹介していく。このCMでは、BGMに松田聖子のデビュー曲が使われているが、CMには松田聖子は登場しておらず、当時、アイドルはビジュアル重視でCMに出演せず、歌だけが使われることは異例であった。しかし、1人のレコード会社のディレクターが強く松田聖子を推し、所属した中堅プロダクションも敢えて大手と違うやり方でデビューさせることを選択、、その後の成功に導いたということを例に、以前はコミットメントのない状態で個人の力でやりたいことを実現できたことを伝えた。なお、この話は武富氏自身のブログ「汐留通信」の「Breakthroughは少数意見から起こる case:seiko matsuda」という記事にも投稿されている。

現在はこのように、少数派の意見を強気で通す人が少なくなっているというが、本間氏は「熱く何かを話す人がいないように見えているが、それぞれが熱いものは持っているはず」と話す。しかし、やりたいことがあっても上司に言えないという現状があり、石黒氏は「Webがメディアとして認識される前から積極的に関わろうとせず、そのまま15年が過ぎてきている傾向があるため、何かやりたいことがあっても社内を説得できないのではないか」と分析した。その反面、ここに来てWebのメディアとしての価値が認められてきて、何かを仕掛けたいと考える人が多くなってきたという傾向もあるという。

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基礎をしっかりと勉強して戦略はすばやく実行する

では、少数意見を通してやりたいことを実現するためには何が必要なのだろうか。これに対する3人の意見は、やはり「しっかりとした根拠を示すための勉強が必要となってくる」というものだ。ここでトークセッションの話題は、米国と日本の環境の違いという話へ移っていった。米国では、社会に出てからも大学に戻って教授に相談したり、勉強する環境が整っているが、日本では社会に出てから教授に会いに行ったり、大学に戻ったりすることが少ない。社会的な背景や環境が違うこともあるが、もっと自ら勉強していく必要があることで3人の意見は一致し、石黒氏からは「自分をよくするための法則は“人と違うことをやること”。誰もやっていないことをやるためには、自分で勉強して道を開いていかなければならず、相当の苦労とリスクをともなうが、自分への実りが大きい」という話も出てきた。

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ネットイヤーブループ株式会社 石黒不二代氏


一方で、戦略やツールの使い方などの基礎の部分はしっかりと勉強しなければならないが、戦術はすばやく立てて実行したほうが良いという意見も交わされる。石黒氏は「Webやインターネットの世界は100%のものを出さなくても、80%のものを出せばよい。ユーザーが一番の批評者なので、まず出してみて、ユーザーの意見を取り入れながら改善していけばよい」と話し、それを受けて本間氏も「Webでは、設計段階とリリース段階の環境が違ってしまっているケースが多い。ビジネス的に間違っていたというケースは少ないと感じるので、多少“前のめり感”を持って進めることは重要」とスピード感のある実行が功を奏すると説明した。



自分の世界に留まらずにやりたいことを実現するために勉強していく

どのように勉強していけばよいかという話題の中では、サミットやカンファレンスに積極的に参加し、その場で自らの意見や質問をぶつけることも重要という話も出てきた。石黒氏は、「現在は、日本人が海外に行って勉強しなくても情報がすぐに入ってくると思いがちだが、入ってくる情報は歪められているケースが多い。大規模になるとセールスカンファレンスとなってしまうので、なるべく小規模な段階から米国発のサミットやカンファレンスに出たほうがよい」と話す。また、武富氏は以前参加したCMOサミットの写真を見せながら、米国の名だたる大企業のCMOやエグゼクティブがケーススタディや戦略を発表し、1泊2日で合宿研修している様子を説明。企業のトップであっても、常に新たな技術や戦略に対しての勉強は欠かしていないことを示した。

「松田聖子を推したディレクターは、それだけの理由を説明するための勉強ができていて、今後の環境変化などの勉強もできていたから少数意見を出しても説得できた」と話をまとめた本間氏は、来場者からのTwitterによる質問にも答えていった。その流れで英語の必要性について話がふくらむなか、あまり英語が得意ではない頃からad:techの招致を画策し、英語を話せるようになるまで苦労したという武富氏も「今から始めても遅くはない」と来場者にエールを送る。また、本間氏も「なぜ日本人は日本語でTwitterをやるのか。Twitterも140文字くらいなら英語で書けば、今まで以上の情報を得ることができるはず」と提案する。

最後に本間氏は、「タイトルとはまったく違う話をしてきたが、今回伝えたかったのは、自分の世界だけに留まらずに、やりたいことを考えてくださいということ。やりたいことをやるためには、相当の説明が必要で、能力も求められる。そのためには勉強が必要」と話した。

たとえば、今日のフォーラムに参加した担当者が、「これからはトリプルメディア・トリプルスクリーンの時代がくる」と社内で語っても、言葉だけが独り歩きしていては何も変わらない。何かを変えるには、まず自分自身が変わらなくてはならない。担当者は代理店や制作会社にまるなげするのではなく、自分で考え動くこと、そして受ける代理店や制作会社は、得意先と同じ目的にフォーカスすることが必要だ。そのためには、説明するだけの能力が求められ、新しいことにチャレンジするのは簡単ではない。本間氏は、「大変ですがチャレンジしましょう。そうすることでしか明るい未来はない」と会場へ語りかけ、「Web広告研究会ではそういった情報交換ができるので、Web広告研究会を皆さんが切磋琢磨できる場として活用していただきたい」と今後もWeb広告研究会がサポートしていくことを来場者に約束した。

また、武富氏は「今日集まった人たちは企業の中でも非常に頑張っている方々だと思う。日本はレベルの高い国なので、今がんばってやっていけば必ず変化に間に合うはず」と話し、石黒氏は「Web広告研究会はインターネットの初期から自発的にやる人が集まった会だと思う。日本では業界の中での横のつながりが少ないが、このような場所で勉強していくことは重要で今後も発展してほしい」と話してトークセッションを終えた。



2010年Web広告研究会宣言
「トリプルメディア、トリプルスクリーン戦略を考える時代」

フォーラムの最後となる第三部では、Web広告研究会代表幹事の渡辺春樹氏から2010年のWeb広告研究会宣言が発表された。今年の宣言は「トリプルメディア、トリプルスクリーン戦略を考える時代」という、第一部でも語られたトリプルメディア、トリプルスクリーン戦略とされた。

宣言では、メディアやデバイスが多様化していくなかでは、トリプルメディアやトリプルスクリーンを自在に組み合わせる必要があることが示され、そのためのWeb人材育成にWeb広告研究会が努めていくことも盛り込まれている。今後も、業界の枠を超えたWeb広告・マーケティングの研究活動の実践的な場として、意見交換やさまざまな研究発表が行われていくことが期待される。

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Web広告研究会宣言は、Web広告研究会の会員社で共有する意識をオープンにし、同じような課題を抱える会員以外の企業や個人、研究者にも広げていきたいという趣旨のもと、2002年から発表され今回で11回目を数える。宣言の趣旨にあるように、WABフォーラムは会員社以外にも一般公開されており、Web広告業界に携わる多くの人々で会場は埋め尽くされた。

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