Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2011年4月27日開催 Web広告研究会4月月例セミナーレポート(1)スマートフォンサイトへの各社の取り組みを事例から読み取る イベント報告

  • 掲載日:2011年6月14日(火)

【2011年度 第2回月例セミナーレポート】

スマートフォンサイトへの各社の取り組みを事例から読み取る
サイト運営担当者と声を交す新企画、「サイトあらびき団(β)」も始動


2011年度2回目となるWeb広告委員会の月例セミナーは、第一部として「スマートフォンサイト構築事例研究 - その取り組みとメリット、今後の課題を読み取る」という講演が行われ、大和ハウス工業株式会社と全日本空輸株式会社(以下、全日空)のスマートフォンへの取り組みが発表された。また、第二部では、日々サイト運営に携わっている人たちの現場の声が聞ける場として「サイトあらびき団(β)」という新たな試みも行われた。

制作ガイドラインを作りながらスマートフォンに対応

第一部前半に登壇した大和ハウス工業の大島茂氏は、会社概要を説明した後、同社のスマートフォンの取り組みを説明していく。

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大和ハウス工業株式会社
大島 茂氏

大和ハウス工業では、2009年12月にPCおよびiPhone用のアプリとして「デスクトップジーヴォ」を提供開始し、2010年6月にはAndroidにも対応。2010年7月には、同社のスマートフォンサイトも公開されている。スマートフォンサイトは、住宅のトップページやカテゴリのトップページだけがスマートフォン用に作り変えられているが、その他のコンテンツはページ数が多いため、簡単にすべてをスマートフォン対応にすることはできないとのことだ。

しかし、2011年3月からは資料請求フォームをスマートフォンに対応させた。これについて大島氏は、「住宅カタログなどを請求する場合は、氏名や住所など、さまざまな情報を入力しなければならないが、PCよりも表示領域の小さなスマートフォンではスムーズに入力させる仕組が必要だと考えた」と説明している。そのため、エントリーフォーム最適化(EFO)に対応させ、PCでは項目の種類別に並べられている入力項目を、入力必須の項目が上にまとまるようにレイアウトしたという。また、ラジオボタンの間隔を広くして、誤タッチが発生しないようにするなどの工夫も行われている。さらに、スマートフォンでは文字入力時の際に画面の下に表示されるキーボードによって項目が隠れないように、表示領域を考慮してページを作成した。

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大和ハウス工業のスマートフォンサイトの入力フォーム



スマートフォン対応にあわせ、制作ガイドラインを作成

これらのスマートフォン向けのサイトを制作するにあたって、大和ハウス工業では制作ガイドラインを作成している。この制作ガイドラインでは、スマートフォンサイトのアドレス、ディレクトリ、制作上の注意、検証機種などを決め、ヘッダ・フッタ・メニュー、タイトル・リンク・フォント、コーディングなどのルールも取り決めており、表示領域についてもiPhoneの画面を基本にして細かく指定している。

また、スマートフォンサイト開設以降のアクセスログの見直しも行った。大和ハウス工業のスマートフォンサイトのページビュー数は、2011年の1月から大幅に増えているが、これは2010年末にAndroid端末の発売が相次いだためだと大島氏は分析している。トップページのスマートフォンによるページビュー数は、2011年2月現在で2010年8月の約2.8倍に増えているという。

また、PC、モバイル、スマートフォンのページビュー数とセッション数(訪問回数)を比較すると、スマートフォンサイトはまだ独自のコンテンツが少なく、ページ移動が少ないつくりになっているため、ページビュー数は全体アクセス数の1%前後と少ないが、セッション数は2011年になってから全体の5%近くになるなど、増加傾向がみられるという。閲覧時間のピークを見ると、PCでは昼と夜にピークが来るが、モバイルやスマートフォンは深夜にアクセスが集中しているという。また、PCに比べて、モバイルやスマートフォンは朝の7時台にもそれなりのアクセス数があり、通勤時間帯などにサイトを閲覧している傾向も見て取れる。

サイト訪問者の利用OSについては、2010年8月に比べて2011年2月は、iPhoneが11位から7位に、Androidが16位から9位に上がってきており、20位圏外だったiPadとiPod touchもそれぞれ13位と15位になり、スマートフォンやタブレット端末の利用者が増えてきていることがうかがえる。特にAndroidの伸び率が高く、「5~6月には、AndoroidがiPhoneを抜くのではないか」と大島氏は話した。

今後の展開について大島氏は、コンテンツの拡充をあげ、「トップページや資料請求ページ以外はまだスマートフォンに対応できていないので、アクセス状況を見ながら順次対応サイトを増やしていきたい」と話した。また、GPSを活用し、営業所や住宅展示場、分譲マンション・住宅などのレコメンドも行い、ロケーションサービスを用いたキャンペーン展開も行いたいとしている。さらに、ソーシャル活用に関しても検討しているという。

一方、課題として、スクリーンの種類が増えることでサイト作成の時間や人材を確保しなければならなくなることがあげられた。大島氏は、それぞれに対応するのではなく、スクリーンごとに共通で作成する基本コンテンツと、スクリーン特性に合わせて作成するスペシャルコンテンツの整理の必要性を話し、基本コンテンツをデータベース化してスクリーンごとに表示できるような仕組み作りに取り組んでいることを明かした。また、資料請求ページのスマートフォン対応は完了したが、その前にある商品サイトなどがスマートフォンに対応していないため、これらのページを作成してユーザービリティを向上させることも今後の課題としている。

最後に大島氏は「今はまだ融通がきくが、今後のユーザー数の増加にともない、よりきちんとした体制が必要になる。少ない予算と人材でこれらの課題をどのように解決するかが問題」と話し、課題解決のアイデアや事例について情報を共有していきたいとまとめた。


スマートフォンを主軸と考え対応に力を入れていく

第一部後半に登壇した全日空の高柳直明氏は、「特に昨年はスマートフォンを中心に取り組んできた」と話し、2010年から本格的にスマートフォンに注力してきた全日空のスマートフォン戦略について説明した。

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全日本空輸株式会社
高柳 直明氏


全日空のスマートフォンサイトは2008年6月から公開されている。当初は先進的なユーザーの利便性向上と日常的な接点の構築という目的があり、従来のPDAサイト(テキスト版サイト)をスマートフォンに対応させて、国内線予約などのサービスを行っていた。

しかし、ここ最近になってスマートフォンからのアクセスが急増していると話す高柳氏は、従来型の携帯電話やスマートフォン市場の推移予測の資料などを示して、今後のインターネット販売を見据えるなかで、スマートフォン対応は必須となってきていることを説く。

全日空としては、スマートフォンを携帯電話以上の表現力を持つ進化したチャネルと捉え、基本機能の提供だけでなく、スマートフォンならではの機能や情報の提供が必要だと考えているという。また、スマートフォンの利用が先進的なユーザーから一般層に拡大するとし、今後は一般層に向けた対応も必要となってくると説明した。

そのため、全日空では、2010年度からはPC、携帯電話に続く主軸のチャネルとしてスマートフォンの強化を検討し始めた。スマートフォンサイトに加え、国内線用のアプリや国際線用のアプリを提供し、Android端末のFelicaへの対応やiPadの日本語/英語サイトなどにも取り組んできた。スマートフォンアプリは複数展開しており、国内線用のアプリでは、位置情報との連動や旅のクチコミ情報サイト「旅達空間」の情報などが提供され、日常や旅の途中でも利用できるような作りになっている。また、Facebookとの連携なども行われている。

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全日空が取り組むスマートフォン端末への対応


Android端末への対応も積極的に行う全日空だが、高柳氏は「iPhoneとiPadはユーザーエージェントで区別できるが、Android端末にはさまざまなものがあるため、苦労した」と話し、Android端末向けの制作を行う会社を探して、良い会社を選ぶことが最も難しかったことを明かしてくれた。

スマートフォンサイトに関しては、従来PDAサイトとして提供してきたものを作り変えてリニューアルし、アイコンなども揃えて提供している。また、画面上部には、PCや携帯サイトと同様に最新の運行状況などを表示させるようにした。Felicaへの対応は、Android端末の場合はブラウザベースで対応することによって、従来の携帯電話のように機種や通信キャリアを気にせずに導入できたという。

日本語/英語およびiPhone/Android端末の4パターンに対応した国際線用のアプリでは、PCサイトで利用されている多通貨決済のエンジンを使えるようにしている。予約や予約確認、チェックイン、運行状況確認などの基本的な機能に加え、Facebook連携などのコミュニケーション機能も提供する。設定した3か国の時刻が表示される時計などを表示させるなど、旅行や出張時に使ってもらえるように工夫されている。

「iPadはそのままPCサイトにアクセスできるので、iPad用のアプリを作る必要があるのかという議論もした。しかし、PCとは違った表現ができ、日常的に使われるため、新たなコミュニケーションができると考えた」と高柳氏が話すiPadアプリは、バーチャルエアポートというコンセプトで空港を模したイラスト上で操作できるようになっている。イラストやアニメーションなどに凝り、掲載コンテンツの入り口を横にスクロールする空港のイラストに配置している。

今後の課題について高柳氏は、端末の多様化と進化に追いつくことが大変になってきていることをあげている。また、従来の携帯電話では、通信キャリア各社と連携して情報を集めていたが、今後は端末ごとの違いが大きくなるため、通信キャリアからの情報だけでなく、端末メーカーとの連携も考えていかなければならないとした。

最後に高柳氏は「人材の確保という課題もあるなか、お客様のライフスタイルも変わってきているので、PC、携帯電話、スマートフォンの区分けについても考えていかなければならない。お客様の使い方に合わせて、我々がどのようにサービスを提供するかも組み立てていく必要があり、非常に悩む過渡期にあると言える」と話し、講演をまとめた。

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