Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2011年4月27日開催 Web広告研究会4月月例セミナーレポート(2)新企画「サイトあらびき団(β)」BtoBサイト統合における課題を示したルネサスエレクトロニクス イベント報告

  • 掲載日:2011年5月31日(火)

(前ページ)2011年4月27日月例セミナーレポート(1)


BtoBサイト統合における課題を示した
ルネサスエレクトロニクス


今回から新企画として始まった「サイトあらびき団(β)」は、日々サイト運営を頑張っている現場の人に登場して取り組みを発表してもらい、会場の人たちと情報共有や悩み事の解決を行っていくという趣旨で始められている。第一回目のスピーカーとして登場したルネサスエレクトロニクスは、2010年4月にNECエレクトロニクスとルネサステクノロジの合併によって生まれた半導体専業メーカーだ。

登壇した土屋陽子氏と関口昭如氏は、軽快なトークを織り交ぜながら、合併時のWeb統合、BtoBサイトの課題、アクセス解析と最適化、若い世代へ伝えたいもの、という4つのテーマで話を進めた。

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ルネサスエレクトロニクス株式会社
関口 昭如氏(左)、土屋 陽子氏(右)


競合会社であった2社のWebを統合するには、プロジェクト期間の短さ、異なるCMS、異なるアクセス解析コードの3つの難しさがあった、と関口氏は話した。また、企業文化の違い、一般売りとカスタム売りの違い、上場と非上場の違い、という3つの違いもあったという。そのなかで、両方の強みを活かし、ユーザービリティの再確認を行うことを統合方針とし、完全統合(バックエンドとの接続)には時間をかけ、まずは上の階層から統合していくことを決めている。

Webの統合に向け、ルネサスエレクトロニクスでは、はじめにGlobal Usability Study(インタビュー)を全世界のユーザーに対して行い、顧客のニーズを再確認することから始めた。しかし、インタビューをしてみるとさまざまな意見があり、ユーザーごとに優先すべき箇所が異なっていたため、優先順位を付けていくのに苦労したという。その1つの解として、これまでは製品やアプリケーションといったカテゴリで情報提供していたものを、目的別にセグメントを分け、Find、Try、Buyという顧客の購買プロセスに沿って必要な情報を提供していくようにインターフェイスを変更した。

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Global Usability Study(インタビュー)再確認


また、地域ターゲティングを使い、たとえば、インドからアクセスしてきた場合はインド向けの特設サイトを表示させるようにしたという。これによって、ブランド知名度の低い国でもルネサスエレクトロニクスが取引を行っていることを認知させることができるようになり、実際にインドからの問い合わせが6倍に増えたという。「もともと、NEC、日立、三菱の半導体事業が独立してできた会社であるため、海外市場においては我々の社名の認知度が非常に低いことが課題となっている。こういった取り組みを行うことで、少しでも認知度を上げていきたい」と土屋氏は話した。


BtoBサイトではオフラインの営業活動との連携が課題

続いてBtoBサイトの宿命と課題に話題は移る。Find/Lead、Try、Design、Buyといった顧客の活動に合わせてWebサイト上ではある程度のモデルを用意できる。しかし、BtoBサイトでは営業活動での商談などのオフラインでの活動が多く、オンラインの活動とオフラインの活動を連携させることが課題となると関口氏は話した。営業などの既存のチャネルとオンラインチャネルの特性の違いを把握し、小口顧客と大口顧客に対してどのようにアプローチし、どのように関係構築させるかが重要だ。BtoBサイトの今後の課題として関口氏は、オンラインのCRMとオフラインの営業用のCRMとの連携、セルフサービス型で独自色のあるサポートの強化、Webサイト制作に関わる担当者への内部インセンティブ強化などの動機付け強化をあげている。

アクセス解析と最適化の取り組みについては、KPIモデルをしっかりと把握して、マクロ視点での強化を行っている。また、アクセス解析は改善活動には必須だが、分析を誤るとサイトを壊してしまうことになりかねないため、ページビュー数やユニークユーザー数だけでなく、Webで何をしたいのかを考えて来訪者をセグメント分けし、分析・改善を行っていると説明した。どこから来たのかという「リソース」、サイト内での「行動」、アクセスしてきた「地域や言語」「時間」などのセグメントに分けて最適化することが重要だ。

実際に行った良い改善例として、ユーザー登録での離脱率を分析して、パスワードの桁数の多さなどが原因で離脱している人が多いなどの原因を見つけ、フォームを改善して離脱率を約30%減少させた例を示した。悪い例としては、直帰率と入口数だけの分析による評価をあげ、製品の仕様変更などの来訪者が少なくても必ず出さなければならないコンテンツもあるため、単純にアクセス解析の数値だけで端的に判断することは危険だとした。また、サイト内検索の結果が0のキーワードを重要視して分析と改善を行うことが、ユーザービリティ向上やマーケティングデータの取得に有効だったとのこと。さらに、半導体事業におけるビジネスモデルの変化をあげ、Webにおいてもそのスペクトラムを変更していく必要があると語った。

現在、ルネサスエレクトロニクスでは、既存顧客へのビジネスだけでなく、若い世代の育成などについても取り組んでいる。社会貢献活動として「マイコンカーラリー」の大会を通じた技術者の育成や、子供向けに半導体をやさしく説明する漫画コンテンツ「うーちゃんと電子家の人々」などの啓蒙活動についても紹介された。

最後に「Webは内部の状況がちゃんと表われる皮膚のようなもの。また、アクセス解析とKPIは健康チェックのようなもので、必ず健康チェックを行いながら進めていかなければならない」と話した。今後の課題については、ビジネスモデルのセルフサービス型が進むなかで、日本特有のおもてなしの心や人のふれあいをWebサイトに現していきたいと話し、こうした取り組みを若い世代にどのように伝えていくかという育成などの長期的な課題が重要とし、講演を締めくくった。

講演後は、会場の来訪者との質疑応答や意見交換が行われ、グローバルとリージョンの問題や、スマートフォンへの対応、ニーズの洗い出しの考え方、CRMの活用方法などについて話し合われた。「サイトあらびき団(β)」は、今後も回を重ね、サイトの取り組みを発表する企業も募集している。