Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2011年5月30日開催 Web広告研究会5月月例セミナーレポート(1)世界の調査データや専門ニュースサイトのアクセスから見る携帯ユーザー動向 イベント報告

  • 掲載日:2011年6月28日(火)

【2011年度 第3回月例セミナーレポート】


2011年5月に開催されたWeb広告研究会第3回月例セミナーは、スマートフォンをはじめとする携帯電話利用者の動向や傾向を解説した2つのセッションが行われた。第一部ではコムスコア社の携帯調査データを使った報告が行われ、第二部では専門ニュースサイトであるImpress Watchのアクセスから現在のスマートフォン事情を読み取り、それぞれ今後のスマートフォン対応に対する指針が示されている。また、前回の月例セミナーから始まった企画「サイトあらびき団(β)」の第2回も開催され、株式会社イプロスのサイトリニューアル手法について、貴重な事例が公開された。

各国で異なる携帯電話市場

第一部は、株式会社インターアローズ代表取締役社長CEOの男澤洋二氏による「コムスコアデータによる世界の携帯ユーザ動向と日本市場」と題された講演が行われた。

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株式会社インターアローズ
代表取締役社長CEO
男澤 洋二氏

「携帯電話の状況は各国によって大きく異なる。たとえば、米国ではスマートフォン以外の3G携帯ブランドが非常に伸びているが、これらは日本の市場からはなかなか見えてこない」と前置きした男澤氏は、この先の市場の変化を読み解くために、携帯ネット視聴率データの「モビレンズ」を使った米国や欧州各国、日本での調査結果を発表した。


米国市場データ
3G携帯をiPhoneが抜き去る


米国の調査では、2010年8月時点で所有している携帯のトップがBlackBerry(Curve 8330)で、トップ10中2台がスマートフォンという結果になっていたが、4か月後の2010年12月にはBlackBerryやiPhoneに加えてMotorola Droidなどのスマートフォンがトップ10に入ってきている。また一方で、1位のSamsung Intensityや10位のLG Cosmosなどのスマートフォンではない3G携帯の人気が高いのも米国の特徴だ。「米国でもスマートフォンは多くなってきているが、BlackBerryのようなキーボード付きの形で、比較的安価な端末が売れている」と話す男澤氏は、そのさらに3か月後で直近のデータとなる2011年3月のデータも示した。

米国では2011年3月にiPhone 4G(16GB)がトップとなっている。ハイスペックな機種が好まれる日本では32GBが販売数を伸ばしているのに対して、米国では32GBは10位となっていることも興味深い。一方で、前述のLG CosmosやSamsung Intensityも3位と4位に入っており、3G携帯も伸びていることがうかがえる。また、Android端末市場に対して男澤氏は「Android対応機種はどんどん進化しているが、画面サイズによってユーザーの動向が変わるので画面サイズも見ていくことが重要であり、テザリング機能などがあるかどうかも重要となる」と話している。

米国の携帯人口は、2011年3月時点でシングルデバイス携帯ユーザーは2億3,400万人。そのうちスマートフォン人口は7,544万人で、32%のシェアとなる。OSシェアでは、2010年10月にGoogleがAppleを超え、12月にはBlackBerry端末メーカーのResearch In Motion (RIM)を超えてOSのトップがGoogleとなっている。一方でAppleも、2011年2月にRIMを超えている。ハンドセットメーカーでは、サムスンとLG電子が市場の50%弱を占め、韓国勢のグローバル戦略が成功していることが示された。

米国では、iPod Touchをタブレット端末とすると、タブレット端末のユーザー数は約3,000万人強。そのうち、iPod Touchユーザーは1,800万人、iPadユーザーは約900万人、iPhone 4の16GBの所有者は約79万人で他のiPhoneの所有者も多いという。一方でGalaxy Tabユーザーは約70万人で、所有しているスマートフォンはiPhone以外のBlackBerryも平均的に多くなっている。

米国の属性別データでは、年齢・性別を見ると、iPadユーザーは男性の25~34歳、18~24歳、35~44歳の順に高く、若い男性層に受け入れられている。一方で、Galaxy Tabユーザーは、女性の25~34歳や45~54歳の比率が高く、サイズや重さの差が受け入れられていることが推測されるという。また、タブレットユーザーはSNSの利用頻度が高く、たとえば、ほぼ毎日利用するユーザーは3G携帯ユーザーの2倍の割合となっている。

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米国タブレット市場


スマートフォンへの推移を米国のデータから探ると、2010年10月からの3か月間で携帯電話を機種変更または新規購入したユーザーの42.2%がスマートフォンを選択しており、スマートフォンのシェアが携帯市場の50%を超える日も近いと分析している。

また、SNSの利用状況を見ると、米国ではTwitterを使う95.2%がFacebookを利用しており、相性の良い結果を示している。これには、日本市場と比べてTwitterよりもFacebookのユーザーが非常に多い米国市場の特徴もあるという。また、SNS利用者が使う携帯機種はスマートフォンが多いこともデータで示された。これは、SNSだけでなく動画の利用者やコミュニティを利用するユーザーがスマートフォンを利用することが1つの流れとなってきているという。



英国データ
スマートフォンユーザーのゲーム購入率は2倍


続いて男澤氏は、英国での調査結果を発表していく。英国の2010年12月の調査では、トップ10の中で5台がスマートフォンとなり、2006年に発売されたNokia 6300が6位に入るなどの「古いものを大切にする」という英国の特徴が携帯市場にも表れている。3か月後の2011年3月では、iPhone 4がトップとなり、米国と英国でiPhoneの占める割合が高くなってきていることが見て取れる。

米国のスマートフォン人口は、米国よりも少し高く約40%を超え、欧州の方が米国よりもスマートフォン人口が多いようだ。OSシェアを見ると、2010年3月時点では、欧州で強いSymbianをAppleとGoogleが超えている。

スマートフォンユーザーとその他のユーザーの比較では、ゲーム利用頻度とインストールしているゲーム数が大幅にスマートフォンユーザーの方が多い。また、どのようなゲームの種類であっても、スマートフォンユーザーは他のユーザーよりもインデックスで200%以上(2倍以上)利用しているという。ゲームの購入割合についても、スマートフォンユーザーは他のユーザーの2倍以上となっているため、男澤氏は「ゲームの収益性を図るならスマートフォンユーザーの早期獲得が必要」と話した。


欧州データ
スマートフォンシェアは40%近くまで拡大


欧州5か国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)では、スマートフォンのシェアが2011年3月で35.3%。なかでも英国とスペインは40%を超え、「スペインは携帯ビジネスで注目すべき国だ」と男澤氏は説明する。また、ドイツでは2010年10月から12月にかけて、48.9%のユーザーがスマートフォンへと乗り換えているという。

年齢別のスマートフォン所有者では、やはり男女ともに若い世代が高めで、Android端末は年齢が高めのユーザーにも受け入れられている点がiPhoneユーザーとは異なるという。携帯電話で利用するサイトの調査では、GoogleやFacebookなどの主要なサービスが高い数値を示すなかで、スマートフォンやタブレット端末にいち早く対応しているフランスの「AlloCine」という映画情報サイトを紹介し、「スマートフォンユーザーをいち早く獲得するには、画面サイズに合わせた最適化が重要になる」と説明した。



日本データ
いち早くスマートフォンに対応しグローバル展開を考える


ここからは、日本国内での調査結果を男澤氏は示していく。モビレンズの2010年12月データによると、日本の、シングルデバイス携帯ユーザ人口は1億90万人で、男女比はほぼ5:5で変わらないという。そのなかで、スマートフォンユーザーは、男性約470万人、女性約220万人と男性の所有率が高く、やはり若い層のシェアが高い。直近の2011年3月データでは、スマートフォンユーザーは970万人となり、携帯ユーザー全体の1割近くとなったが、欧州や米国が30~40%を占めていることを考えると、まだ少ないといえる。ただし、「東京ではスマートフォンを持っている人をよく見かけるので、地域によってスマートフォンシェア率は異なると考えられる」と男澤氏は言う。これは、米国や欧州でも同じように都市部にスマートフォン利用者がやや多いという結果になっているようだ。

OSシェアでは、2011年3月にAppleをGoogleが抜いている。また、年齢・性別では、iPhoneとAndroid端末はともに男女の若い層に受け入れられているが、iPhoneは女性の35~44歳にも受け入れられており、iPhoneの利用者の年齢層が広い。

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日本スマートフォンOS推移


キャリア変更の動向を見ると、ソフトバンクモバイルへのキャリア変更が圧倒的に多い。auはAndroid端末を発表して以降はキャリア変更希望者の数が大幅に減少しており、昨年と比べるとウィルコムやイーモバイルへの変更希望者も増えているという。また、ドコモやauにキャリア変更したいというユーザーのなかには少なからずiPhoneユーザーもいるというデータを示し、スマートフォン所有者のなかにもキャリア変更を希望するユーザーが存在することも示している。

携帯ユーザーが最も利用するサイトについては、海外とは異なり、トップにヤフーの各種サービスが入ることが日本の特徴だ。さらにサイトを細かくサブブランドに分けると、ヤフーのメールサービスがトップとなる。ただし、Android端末はヤフーよりもGoogleの利用者が多く、男澤氏は「持っている携帯によって接するWebサービスが異なるため、できればOSやバージョンごとに細かく見ていくことが重要」と話す。また、スマートフォンユーザーにSNS利用者が多いというのは欧州や米国と同様で、日本の場合はTwitterの利用者がFacebookを上回っている。

最後のまとめとして「スマートフォンユーザーにSNS利用者が多いというのは欧州や米国と同様で、日本の場合はTwitterがFacebookに先行して利用者が多くなっている」と話す男澤氏は、OS、キャリア、ハンドセットを見ると、専用アプリの提供や、サイトのスマートフォン最適化がされているかによって選択する携帯サービスのブランドが変化していることが見て取れると説明する。3G携帯のユーザーと比較して、スマートフォンユーザーは2~3倍アクティブであり、日本ではゲームのダウンロードや有償ゲームの利用者が約5倍の差となることも示した。さらに、海外への市場参入のチャンスがあるとともに、海外からのサービスブランドの参入もあり、これまで以上にサービスのグローバル展開が求められることも示し、第一部を終えた。

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