Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2011年5月30日開催 Web広告研究会5月月例セミナーレポート(3) イベント報告

  • 掲載日:2011年6月20日(月)

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第三部では、前回の月例セミナーから始まって好評だった「サイトあらびき団(β)」の第2回が行われた。今回は、株式会社イプロス経営企画室執行役員の石原誠氏が講演。BtoBサイトを2010年11月にリニューアルすることによって、検索エンジンからの直帰率を大幅に改善した事例を発表した。

https://www.wab.ne.jp/wab_sites/images/0000/0384/384.jpg
株式会社イプロス
経営企画室
執行役員
石原 誠氏



イプロスは、産業用センサーメーカーのキーエンスの社内ベンチャーとして生まれた会社だ。2001年に100%子会社として誕生し、技術者が必要としている部品やソフトウェアを探すためのマッチングサイトを運営している。イプロスでは、日本の製造業従事者が1,000万人で、そのうち選定権限のある技術担当者を300万人と想定しており、その半分の150万人が同社のサイトを利用しているとしている。また、重要なKPIとなるマッチング件数は月間約4万件で、1分間に4.2件の商談が成立しているという。これらは、リニューアル成功後の数値だ。

一方、リニューアル前のイプロスでは、検索エンジンからの集客が主でありながら、訪問者のうち90%が直帰しているという状態であり、2年前から検索エンジンからの訪問者にどのように問い合わせを行ってもらうかという課題を持っていた。「これらを乗り越えるためには、技術の壁、体制の壁、分析の壁の3つの障壁があった」と、石原氏は当時の様子を話した。

「技術の壁」に関しては、ランディングページの見直しを行い、商品名で検索してきた訪問者が最初に見る個々の商品ページ(ランディングページ)に対して、レイアウトの見直し、Welcomeモジュールの掲出(訪問者と同じ検索ワードでサイト内検索した結果の表示)、レコメンド機能の実装を行うことを課題としてあげた。

「最も苦労したのは、踏み込んだ付き合いをしてくれるパートナーがいなかったこと」と話す石原氏は、レイアウトの変更やレコメンドの設定をすぐに結果が出ないなかで、試行錯誤しながら成果を上げていけるリスクを超えたパートナーを見つけることが重要だということを明かした。

「体制の壁」については、社内のWeb制作チームが、早く結果を出してクライアントを獲得したい営業と外部の開発会社の板ばさみとなっていたという課題があった。そのため、外部の開発パートナーに社内会議への出席と常駐を求めたという。これまでは、Web制作チームも営業の会議などに出席したことがなかったが、これらの会議でどのような言葉が交わされているかをパートナーとともに見ていくことで課題を把握し、営業部門の課題を肌で感じようと考えたのだ。これによって、3か月かかっていた改善のサイクルを1か月に短縮でき、細かな調整は週単位で行えるようになったという。

「分析の壁」については、「アクセス解析は行っていたが、検索エンジンからのランディング数とコンバージョン数しか見ていなかった」と石原氏は説明する。しかし、これらの数値がある一定以上増えると、改善を積み重ねてもコンバージョンが増えなくなってきたため、コンバージョンに至らなかったトラフィックを細かく分析したという。ここでは、コンバージョンはしていないがブックマーク登録やカートに入れるなどの“おしい行動”をしているトラフィックを“プレコンバージョン”と呼び、指標を設けて対策を立てたという。たとえば、電話で問い合わせたユーザーの行動を把握するため、はじめから電話番号を表示させずに、あえてワンクリックすると表示されるようにしてアクセスを判別するなどの工夫が行われている。

最後に「これらの施策でリニューアルした結果、イプロスでは直帰率を50%まで下げることができた」とまとめた石原氏。残りの時間は、セミナー参加者と石原氏の間で活発な質疑応答や意見交換が行われ、外部の協力会社を常駐させた場合の考え方や方法論、コンバージョンをどのように上げたかなど、話題が尽きないまま、セミナーの終了となった。