2011年6月28日開催 Web広告研究会セミナーレポート 東日本大震災に企業はどのように対応していったのか、各社アンケート調査、対応状況からWebサイトの役割を考える(1) イベント報告
- 掲載日:2011年7月27日(水)
【2011年度 第4回月例セミナーレポート第一部】
東日本大震災に企業はどのように対応していったのか
各社アンケート調査、対応状況からWebサイトの役割を考える
6月28日に開催された第4回月例セミナーは、「東日本大震災後の各社のWebサイト対応について」として開催された。第一部ではWeb広告研究会Webプロデューサー育成プロジェクトが行った「企業の震災対応アンケート結果報告」の発表が行われた。また、第二部では4月14日に開催された、Web広告研究会サイトマネジメント委員会で報告された各社の対応が公表され、各社の対応発表に基づいたパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは、ソフトバンクモバイル株式会社の高橋宏祐氏をモデレータに、実際の現場担当者として株式会社ベネッセコーポレーションの松本圭介氏と、キヤノンマーケティングジャパン株式会社の増井達巳氏を迎えた。
震災直後の企業Webサイトの対応を調査
株式会社ベネッセコーポレーション/Web広告研究会 Webプロデューサー育成プロジェクト
松本 圭介氏
第一部で登壇したベネッセコーポレーションの松本圭介氏は、Web広告研究会のWebプロデューサー育成プロジェクトにも参加しており、同プロジェクトが行った東日本大震災でWeb担当者がどのような対応を取ったか、アンケートの結果を発表した。
最初に「100件以上のアンケート協力があったことに感謝したい」と話す松本氏は、まず「事務所に被害はありましたか」という質問について説明を始める。回答は、「操業停止や事業が大きく滞る被害」が13.1%で、「事業がいくらか滞る被害」が30.7%と、回答者の半数近くが何らかの形で事業を停止せざるを得ない状況であったことがわかった。また、事業規模別に見ると、大規模な会社ほど震災の影響を受けていることも示されている。これについて松本氏は、「回答の8割が関東圏の会社であることも影響しているが、大規模な会社ほど被災地に事業所や工場などがあるためではないか」と分析している。
サイトに被災者へのお見舞い文をいつ掲載したかについては、当日が13%で、地震発生後の週明け月曜日である14日までに掲載したのが45.4%、翌週中の掲載が30.6%であり、8割以上の企業が翌週までには何らかのお見舞い文を掲載していた。また、松本氏は「対応が早ければいいとは一概には言えず、対応の早さの是非を問うものではない」と前置きしつつ、大規模なBtoC企業の方が総じて対応が早いことも明かしている。
被害状況の告知については、お見舞い文非掲載が6.5%だったのに対して被害状況非掲載は24.1%と、掲載しなかった企業が多く、企業規模が大きいほど掲載している結果となった。震災関連情報を目立たせるようなデザイン・レイアウトの変更は72.2%が実施しており、義援金や物資寄付などの支援行為の発表も75.9%が実施している。
震災対応の特設サイトの開設は全体の1/3程度だが、3,000人以上の規模の企業では49.0%と半数近くの企業が特設サイトを開設している。災害によって、インフラの強化やサーバー・データセンターの分散化、クラウド化を実施したかという質問に関しては、実際に実施した企業は1割にも満たない結果となった。
多くの企業が震災直後にメルマガやバナー広告を停止
広告や宣伝の対応については、メールマガジンを発行している中で停止しなかったのは19.2%で、メールマガジンを発行している企業のおよそ8割が何らかの形でメールマガジンを停止していることが明らかになった。また、メール広告の掲載・配信を停止したのは実施している企業の9割となり、自社配信よりも停止割合が高くなっている。これについては、「メールがライフライン化している中で、メールの流通を増やしてしまうことはよくないという判断があったのではないか」と松本氏は分析する。
バナー広告の掲載は、実施中で停止しなかった割合が23.7%と、メールマガジンなどと同様に停止した企業が多くなっている。一方で、リスティング広告は実施中で停止しなかった割合が44.3%で、他の広告と比べると停止しない割合が高くなっている。キャンペーンサイトは、実施中で停止しなかった割合が36.9%で、比較的停止しない割合が高かった。しかし、停止はしていないが告知もできなかったという回答が目立っていたという。また、マスメディアへの広告掲載は、実施中で停止しなかった割合が6.5%しかなく、多くの企業がマスメディアへの広告掲載を控えていたことがわかる。
この結果、ユーザーに直接届く自社メールマガジンやメール広告がマス広告に次いで停止されており、震災後も継続して最も多く使われていた宣伝手法はリスティング広告だった。また、停止の理由は自粛ばかりではなく、業種によっては商品提供ができないケースも目立っていたという。広告を再開するか否かの判断は、世の中のムード、広告代理店からの情報、競合の動向などが大半であった。
ソーシャルメディア運営方針や提供内容の変化については、Twitter公式アカウントの運営において、一時的なツイート中止やツイート内容への配慮などが見られたが、震災については、「まったく触れない」または「震災についての情報を積極的に出す」というように見解が二分化されていたという。
震災対応で顕在化したWeb担当者としての課題
今回のアンケートでは、震災を経て、Webサイトの運営体制、危機管理、担当者に求められるスキルなどの顕在化した問題があったかどうかについても聞いている。
サイトの運営体制やポリシーについて顕在化した問題は、大きく分けて「意思決定ルート」「出社不可能な場合の更新」「会社全体の意思決定の問題」の3つがあったという。たとえば、緊急時のサイトへの対応をマニュアル化するべきという意見や、親会社やグループ各社の動向を待って対応したため、お見舞い文の掲載が遅れたなどの意見が寄せられている。また、担当者が出社できずに更新できなかったため、ノートPCを導入してVPNを設定したという事例なども明かされた。
インターネットの活用に対しての認識が変わったと感じるか、という質問に対しては、回答数は多くなかったが、「情報提供ツールとしてのインターネット」と「非常時における社員間連絡ツールとしてのインターネット」という2つの意見が多く、情報提供ツールとしての重要性が再認識された結果となった。
今回の震災に対して、事前に準備していた危機対応マニュアルや事業継続計画などに沿って対応できたかという質問では、企業規模が大きいほど事前の対策に沿って対応が行われている一方で、マニュアルはあってもWebサイト上の対応方針が整備されていなかったという反省があるという。
今後のWeb担当者に求められるスキルや素養については、非常に熱心な回答が多く、大別すると「情報収集力」「交渉力・調整力」「迅速な判断・決断力」に分けられるという。その他の意見としては、Web活用のスキル向上に努めて不測の事態に冷静に対応できるようにするという意見や、特別なスキルではなく、社会人や一担当者として自分が果たす役割を認識して適切に行動できればよいという意見も意外と多かった。また、他社サイトを運営している人への同様の質問では、「今までにない提案を行う」「エンドユーザーの立場を考えた提案を行う」などの意見が寄せられている。とまとめた。
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