2011年9月14日開催 Web広告研究会 第24回WABフォーラムレポート 第一部ソーシャルメディアとどのように向き合い、どのように活用するか プラットフォーマーの話を聞き、ソーシャルメディアの現状を紐解く(2) イベント報告
- 掲載日:2011年10月12日(水)
【第24回WABフォーラムレポート第一部(2)】
毎日60万以上の新規アカウントが開設
日本はTwitterの海外戦略で最も重要な市場
Twitter Japan株式会社
葉村 真樹氏(Skypeで参加)
続いてTwitter Japanの葉村氏がTwitterの現状を解説。まず、日本法人の設立については「今後の収益化に向けて日本は重要な地域と位置づけられ、最初の海外オフィスとして設立されている」と説明した。
Twitterを「世の中の今を知る最高の方法」と位置づけ、「ユーザー1人ひとりにとって意味のある情報とを結び付けます」というミッションがあると話す葉村氏は、Twitterにはグローバルで2億以上の登録アカウント数があり、1日あたり新規登録アカウントが60万以上、グローバルで1日に2億ツイートがあると説明し、モバイル利用が50%を越えてモバイルとの親和性が高いと解説した。
米国以外では、日本、ブラジル、欧州、インドネシアで盛んなTwitterだが、日本は特にツイートする人が多いという特徴がある。過去の瞬間ツイート数(1秒間)のトップ10を見ると、なでしこジャパン優勝の2位をはじめ、日本語での新年の挨拶や東日本大地震などの日本に関連するツイートが3つランクインしているという。
そのような状況のなかで葉村氏は、「Twitterは収益化が進んでいないと言われるが、2010年3月頃からTwitter上での独自の広告ビジネスを展開し、ちょうど1年前くらいから本格化している」と説明した。
新機能としては、2011年7月から日本語ハッシュタグが利用できるようになったことがあげられた。また、プロフィールページにその人の最近の画像を表示させるようになったことや、今後のiOS 5との統合、ツイート内でのYouTubeやUstreamの動画配信などが説明された。
また、2011年10月には、米国ではすでに提供されているTwitter独自の広告商品「プロモ商品」が日本でも提供されることが明かされた。このプロモ商品では「relevance」「resonance」「realtime」が特徴となっていると葉村氏は話し、Twitterでは広告が「100% ORGANIC」で自然であることが重要視されていると説明した。テレビ番組の流れで自然に見ることができるテレビCMや、検索キーワードに関連した情報を提供する検索連動型広告のように自然な広告であると話す葉村氏は、Twitterの広告もフォロワーから提供される情報と同じように興味を持てる情報でなければならない、という哲学で広告商品を設定したという。また、プロモ商品には、アクティビティを加速する「プロモトレンド」、対話を増幅する「プロモツイート」、フォロワーを拡大する「プロモアカウント」の3つがあることも明かされた。
さらに、葉村氏は米国の広告実績を紹介。CPG(消費財)では、ユニリーバのマグナムアイスクリームのキャンペーンでプロモトレンドのCTR(Click Through Rate)の最高値を記録した事例が紹介された。また、自動車関連ではフォルクスワーゲンの新車発表会で24時間以内に9,000万以上のインプレッションとプロモートされたツイートに接触したTwitterユーザーの52%のエンゲージメントを獲得した事例、リテールではTwitterでの対話から実店舗への集客誘導を行いネット上で売上を伸ばした事例、映画業界ではTwitterから独占試写を募ることで話題を呼んで公開週の予想収益を52%上回ったパラマウントの事例、テレビ業界ではTwitterで認知度を上げることで視聴率アップを実現したDiscoveryチャンネルの事例などが紹介された。旅行業界の事例では、ヴァージン・アメリカがTwitterで低料金を訴求したうえで予約ごとに非営利団体へ5ドルの寄付が行われることをアピールし、歴代4位の日次収益を記録したという。
複数のソーシャルメディアを担当者はどのように使い分けるべきか
両社がプレゼンを終えると、横山氏から葉村氏に「ハッシュタグが日本語になることで何ができるのか」という質問が行われた。これに対して葉村氏は、「英語しか使えないことで、ヘビーユーザーでなければハッシュタグの仕組みを理解できなかった。日本語にすることでハッシュタグが使いやすくなり、日本独自のハッシュタグを使った大喜利のような掛け合いも生まれている」と説明した。こういったハッシュタグを使う素地がユーザーにできることによって、ハッシュタグを使ったプロモ商品に参加しやすくなるという点も見逃せない。
続くパネルディスカッションでは、まず横山氏が「mixi対Twitterという図式を作っているわけではなく、お互いに使い分けや、それぞれの強みというものがあると思う」と話し、どのような使い方をすればお互いの強みが出るかを質問した。
これに対して辻氏は「米国ではFacebookとTwitterの2つを連携して使っていくことが重要になるだろうが、日本ではこれにmixiを加えた3つを使うことになると思う。そのなかでmixiの強みは20代の女性ユーザーが多いことや、イノベーターだけでなくマジョリティまでカバーしていること。また、情報の二次伝播や三次伝播が行われ、親しい友人間で情報が伝播していくこともmixiの特徴で、その方向にサービスの舵を取っている点がわれわれの強み」と話した。一方、葉村氏は「Twitterはソーシャルメディアとは名乗っておらず、ソーシャルグラフ(人々のつながり)よりもインタレストグラフ(興味関心のつながり)に強みを持っている。非常に親しい仲であっても、仕事関係や有名人や業界人などであっても、その人たちの発言や行動が気になるということがベースにグラフを形成している。そのなかでTwitter、Facebook、mixiのそれぞれのユーザーがオンラインの時間をうまく使っていただければと考えている」と話した。
横山氏が「ソーシャルグラフとインタレストグラフを結合させながらキャンペーンを作るということではないか」と葉村氏に話を向けると、葉村氏は「Twitterにはmixiが持っているようなある意味ウェットな関係性はない。お互いにない部分を補完し合うことで、ユーザーや生活者に訴求するものができる」と答えた。
また、Twitterの新たな広告モデルについても話は進んだ。葉村氏はTwitterの広告モデルについて、「従来のCPA(Cost Per Action)やCPC(Cost Per Click)といったものではなく、CPE(Cost Per Engagement)というエンゲージメントに対して課金していくモデル」と説明し、「エンゲージメントへの課金を広告主が理解し、興味を持つかが課題となる。それには、ソーシャルを取り入れた形で、広告全体やWebマーケティングの考え方を再設計する必要がある」と説明した。また、「CPF(Cost Per Follow)を求める人もいて、それに対しては米国の先進事例をもとに効果を出すことができる。実際に、Twitterを使ったキャンペーンではプロモ商品を広告媒体として使うことによって、コスト効率が高くリツイートを獲得できる」とも説明している。
Google+の登場によるサービスの認知向上
競争による発展が起きることに期待
続いて、横山氏はmixiページのリリースに話を移した。「mixiページやFacebookページは、ブランド力というよりも企業自身の伝える力や伝播させる力に課題があるのではないかと思う。より濃い関係が形成されているmixiとFacebookの使い方の違いはどこに出てくるのか」と話を向けられると、辻氏は「Facebookとはグラフの違いやユーザー層の違いがあり、mixiはこれまで親しい友人や知人とのコミュニケーションという部分に軸足を置いてサービスを展開してきたので、その特徴をうまく使ってほしいと思う。また、スマートフォンやフィーチャーフォンにも対応しているので、モバイルも含めた取り組みができるという点も特徴や強みの1つ」と答えた。
「企業がさまざまなプラットフォームを使い分ける必要があるなかで、新たにGoogle+も登場してきている」と話す横山氏は、Google+に対する両者の印象も聞いていった。
辻氏は「mixiは2004年からやっているが、TwitterやFacebookに加えて、ここにきてGoogle+が加わることによって、2011年はソーシャルメディアが一気に芽吹いたというターニングポイントになると思う。Google+のサービスはこれからで、まずは心地よいグラフを作ることが重要になると思うが、これらのグラフに関する議論が本格的に始まってきたというところも興味深い。Google+が加わることで、よりソーシャルメディアの世界が活性化するのではないかと期待している」と話した。
それに対して葉村氏も、「やはり、活性化ということは非常に考える。Google+は、TwitterとFacebookのいいとこ取りをしたうえでGoogleらしく洗練されており、プロダクトとしての魅力がある。当然、競争が激しくなることで、ユーザーの使い分けも変わってくるかもしれないが、お互いに横目で見ながらユーザーニーズにあわせてプロダクトを洗練させていく。また、Googleが参入してくることで、サービスとしての“お墨付き”をもらったとも考えている」と話し、Google+の参入をより発展していくためのプラス要素として捉えていること明かした。
さらに横山氏は、「Google+が増えることで、やらなければならないことが増えると考える広告主もいると思うが、複数のプラットフォームを自在に使っていくポイントはあるのか」と聞く。それに対して辻氏は、「これまでもよく言われているように、目的を持ってやるということが大事。また、1年くらいで状況が変わってしまうので、半年くらいで見直しを行っていくことも重要となる。また、だれがどう運用するのか、パートナーやツールをどうするのかといったことも重要になってきている」と話した。
コミュニケーションの全体設計を
見直していくことが第一歩
実際に米国ではどのように各プラットフォームを活用しているのか、Twitterの事例を問われると、葉村氏は成功事例も含めて話を進めた。「まず、ソーシャルマーケティングをやるうえで、マーケティングあるいはコーポレートコミュニケーションの全体設計をしなおす必要があると思う。日本とは異なり、米国はCMOというマーケティングコミュニケーションのプロフェッショナルが存在し、末端のCPAやCPCという話だけではなくマスやWebを含めた全体を見ることができる。だから、先ほど紹介したようなキャンペーンが可能になってくる。この点が大きな違いで、部分最適化の積み重ねでは全体の最適化にはつながらない」と、CMOや専門部隊の存在が、導入のスピードや最適化に大きく影響していることを話した。
最後に横山氏は、「ブランドマネージャーがたこ壺型でデジタルマーケティングをやっているのを横串で情報共有したいとよく相談される。まだまだ、ブランドマネージャーごとにプロモーション予算の一部をデジタルマーケティングに使う状態でスケールが小さい。デジタルの領域だけでもCMOのような役割を作りたいという相談も受けるが、米国の先進事例ではしっかりとしたCMOがいてトップダウンで統合してやっている。しかし、そのやり方は日本では合わないところもあって、ボトムアップでさまざまなセクションからプロジェクトチームを作って情報を共有し、施策を共同で運用していくことになる。これでは俗人的になりがちとなるが、傾聴や発信の仕組みづくりを組織的な対応をしていかなければならない時期に日本も来ているのではないだろうか。プラットフォームもどんどん変わっていき、新しいものも出てくるなかで、単に使いこなしたり、キャッチアップするだけでなく、踏み込んだ組織作りが必要になってきている」とまとめ、最後の時間は来場者との質疑応答にあてた。
質疑応答では、ブランドハッシュタグ活用の話題や効果測定ツールなどについて質問され、ソーシャルメディアを使った広告やビジネスの可能性について、真剣に取り組んでいく必要があることを来場者が再認識する有意義な時間となった。
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