Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「データで見る国内スマートフォンの現状~その1~」 
2011年12月13日開催 Web広告研究会セミナー:「スマートフォンをマーケティングに活用するため~データと事例から、ユーザー像と活用ポイントを探る~」レポート  イベント報告

  • 掲載日:2012年1月17日(火)

スマートフォンのユーザー調査と各社の取り組みからスマホ活用ポイントを探る
企業のマーケティングで活用するには、今何が必要となるのか




Web広告研究会の2011年度12月月例セミナーでは、スマートフォンに現状に着目した講演とパネルディスカッションが行われた。第一部ではコムスコアと電通の調査データをもとに、現在のスマートフォンの利用状況とユーザー像について掘り下げた講演が行われた。第二部では、実際にビジネスでスマートフォン対応によるユーザーとのコミュニケーションを行っている企業がどのような戦略を立てているのか、パネルディスカッションで発表された。


コムスコアの調査データから見る欧米と国内のスマートフォン市場の違い


第一部では、インターアローズの男澤洋二氏と電通の森直樹氏が登壇。まず男澤氏が、「コムスコアモビレンスから見たスマートフォンの市場とユーザー像」というタイトルで講演を始めた。

株式会社インターアローズ 男澤 洋二氏
株式会社インターアローズ
代表取締役社長CEO
男澤 洋二氏

今年の傾向として「デバイスの多様化・マルチ化」「クラウド化」「通信の高速化」「3G+Wi-Fi&LAN」「SNSの多様化」というキーワードをあげた男澤氏は、2011年8月度の米国でのアプリケーションダウンロード数トップ300のデータをもとに話を始める。

トップ300のうち、無料アプリケーションのダウンロード数をスマートフォン(iPhone)とタブレット(iPad)で比較すると100:20と圧倒的にスマートフォンが多いが、有料アプリケーションの比較では100:42とタブレットの比率が高くなり、売上となると100:108でタブレットのほうが高くなるという結果となっている。このデータを示しながら男澤氏は「これまではiPhoneからiPadの開発を行っていたが、世界を舞台にビジネスを展開するには逆のiPadからiPhoneの開発を行うパターンも多く出てくると思われる」と説明する。しかし、米国と比較して日本ではWi-Fiを使ってアクセスするユーザーが少なく、特にiPadの場合は米国の91.9%のユーザーがWi-Fiを使っているのに対し、日本は63.9%しか利用していない。したがって、タブレット用のアプリケーション市場が成熟するには、Wi-Fiの整備が必要不可欠になるとした。



Wi-Fi、公衆無線LANの普及とスマートフォン&タブレットの関係


コムスコアの携帯データサービス「モビレンズ」のデータをもとに説明を続ける男澤氏は、まず米国のスマートフォン事情を解説する。それによると2010年度11月の米国におけるスマートフォンシェアは38.5%で、そのなかでもGoogleのAndroidとAppleのiPhoneの2強がさらに鮮明になり、RIMのBlackBerryが大きく失速していることがわかった。また、機種別ではトップ10の3位までをiPhoneが独占し、Android端末のトップはHTC EVO 4Gの4位であった。

一方、EU5(仏独伊西英)で最もスマートフォンが普及している英国では、携帯電話利用者の49.7%がスマートフォンユーザーで、GoogleやAppleとともにRIMユーザーも増加。EU5全体ではスマートフォンのシェアは41.6%で、GoogleやAppleが増加するなかでSymbianは減少傾向にあるものの、依然トップを維持する結果となった。また、RIMもわずかではあるが増加してきているという。

一方で、米国のタブレットユーザーは約5,000万人で携帯ユーザーの21.3%となる。コムスコアの定義では、iPod touchはタブレットに含まれ、これまでシェアトップとなっていたが、今回の調査では急上昇しているKindleに抜かれ、同じく急上昇しているiPad 2にも肉薄されているようだ。これについて男澤氏は「電子書籍デバイスと多機能タブレットの2つの市場が形成されている」と説明する。


米国のウェブサイトアクセス調査 SNSではFacebookがトップ、Google+も急成長


  米国のブランドファミリートップ10では、Googleが最も多く、続いてFacebookとなっているが、3位のYahoo!が着実に利用者を増加させており、無視できない存在となっている。そのなかでSNSだけに絞って見ると、米国ではFacebookが圧倒的に強くなるがGoogle+が驚異的な伸びを見せており、今後が注目される。ちなみに、米国のインターネット利用者は約2億2,000万人だが、その98.1%の約2億1,600万人がSNSを利用しているという。その中で10位に入ったTumblrが訪問1回あたりの利用時間と1人あたりの平均訪問回数が他のSNSに比べて高く、今後どこまで伸びていくかが注目される。一方で、EU5でもGoogleとFacebookが伸びてきているという。


日本特有のスマートフォン市場ブランドサイトではYahoo!がトップ


  日本国内では、スマートフォンユーザーは約1,460万人で、全携帯ユーザーの14.3%と欧米に比べて伸びが低い。しかし、iPhone 4S発売直後の2011年10月までの調査であるため、現在はさらにスマートフォンユーザーのシェアが伸びていると考えられる。スマートフォンユーザーは、Google(Android端末)が890万人、Apple(iPhone)が493万人となっているが、フィーチャーフォンも含めた全携帯端末の機種別シェアでは、1位と2位がiPhoneとなっている一方、Android端末は8位のSharp IS03がトップで、富士通 F-07Aのようならくらくホンが3位に入っているのは日本特有の状況だという。

また、ブランドファミリーでは、Yahoo!が圧倒的に高いのも日本の傾向だ。SNSでは、欧米に比べてTwitterが強いことも日本の特徴だが、Facebookが急速にユーザーを増やしており、2012年初めにはポータルサイトなども含めたブランドファミリーのトップ10に入ってくることも予想できる。


日本の携帯端末トレンド


日本のブランドファミリートップ10

 これまでは比較的高い年齢層にスマートフォンユーザーが多かったが、最近では若い世代にもスマートフォンユーザーが増えてきており、18~24歳の男女のユーザーがiPhoneおよびAndroid携帯に興味を持ち始めていることも明かされた。スマートフォンの毎月の通信利用金額は7,000~8,499円が多く、フィーチャーフォンよりも高めとなり、比較的Android端末のほうがiPhoneよりも利用金額が高い傾向にある。一方でデータプランの料金に関しての重要性についての調査では、ユーザーによって千差万別の考え方であるとした。
SNS、チャット、ブログなどは特にスマートフォンユーザーの利用度が高いことも調査結果で示された。その利用方法も、SNSや写真/動画共有サービスの利用頻度がフィーチャーフォンよりも高くなっており、チェックインサービスなどを利用する比率も高くなっている。
これまでのキャリア公式サイトのサービスをスマートフォンユーザーが引き継ぐかという調査では、占いが例に挙げられた。占い自体はスマートフォンユーザーにも移ってきているが、同じブランドを利用するかはスマートフォンへの最適化とその時期が重要となると説明している。
このような状況の日本がEU5や英国から学ぶべきこととして、ブラントファミリーの7位に入っているBBCのサイトを例にあげて男澤氏は説明を続ける。BBCでは、2011年の9月に「Tablet age redesign for BBC portal home page」という目標を掲げ、PCよりもタブレットを重要視し、タブレットのデザインを決めてからPC用のページを作るようにしたという。従来のPCサイトからタブレット用のページを作るといったものとは逆の流れで、今後はこのような動きが多くなると男澤氏は話す。
最後に男澤氏は、「日本における多機能タブレットはiPad/iPad2に集中しており、電子書籍デバイスはKindleが伸びてくることが予測できる」とし、次の5つのポイントを紹介し、今回の調査結果をまとめた。

  1.  日本市場ではスマートフォンもタブレットも市場拡大はこれから
  2.  スマートフォン・タブレットの普及にはWi-Fiや公衆LANのペネトレーションが重要
  3.  現在はアプリでのサービス提供が必要で、今後はブラウザの最適化へ移行する
  4.  海外のSNSブランドのトレンドをウォッチすることが重要
  5.  タブレットのユーザービリティを中心としたPCサイトデザインへの変革