「2chや食べログのステマ騒ぎはなぜ起きたのか? WOMJが明かす健全な口コミマーケティングへのガイドライン」2012年4月24日開催 イベント報告
- 掲載日:2012年6月1日(金)
【2012年度第2回月例セミナーレポート(2)】
ソーシャルメディア上のマーケティング施策が活発になるなか、健全な口コミマーケティングへの取り組みが問われている。消費者の間でも、ステルスマーケティングが話題となるなか、企業はどのように考え対応していけばいいのか、WOMマーケティング協議会の濱田氏が、指針を示した。
WOMマーケティング協議会の活動とWOMマーケティングガイドライン
第二部は、WOMマーケティング協議会理事長の濱田逸郎氏が登壇し、「健全なWOMマーケティングのために」というセッションが行われた。最初に濱田氏は、米国のWorld of Mouth Marketing Association(WOMMA)を参考に2009年に設立されたWOMマーケティング協議会(WOMJ)の設立経緯と活動概要を説明する。
WOMマーケティング協議会理事長
濱田 逸郎氏
WOMJには、サミット実行委員会、事例共有委員会、国際委員会、メソッド委員会、ガイドライン委員会の5つの委員会がある。WOMマーケティングに関するガイドラインは、米国WOMMAのガイドラインをベースにガイドライン委員会が策定しており、Honesty ROIという考え方が取られている。つまり、自らのR(Relationship:関係性)とO(Opinion:意見)とI(Identity:素性)を取り繕わずに正直に(Honesty)開示することで健全なWOMマーケティングとなると濱田氏は説明する。
また、2010年3月に発表されたガイドラインでは、「WOMマーケティング基本理念」として3つの項目があり、すでに次のような一文が加えられている。
“口コミは自発的なものである。金銭で生み出されない。誰からも強要されず、発信者の自由意思が尊重される”
また、「WOMマーケティング活動ガイドライン」として「関係性明示の原則」が謳われており、商品をブログなどで推奨する場合はその関係性(理念への賛同、金銭、献本など)を明記することが望ましいとされている。
「今年に入って問題となった事例が出てきたため、このガイドラインが非常に注目を浴びることになった。一方で、基本理念で“誰からも強要されず”と書きながら、活動ガイドラインで関係性の明示が望ましいとしているのは矛盾があり、反省点としなければならない」(濱田氏)
濱田氏はそう話したうえで、今年に入ってから問題となったステマ騒ぎについて次のように説明する。
「今年初めから2chまとめブログでのステマ疑惑が持ち上がっており、それに加えて食べログのランキングやらせ疑惑をマスコミが報道し始めたため、大きくステルスマーケティングが注目されるようになった」(濱田氏)
2chや食べログのステマ騒ぎはなぜ起こったのか
一連の騒ぎについて濱田氏は「個人的には、現在の風潮を非常に反映している」と話しながら野村総研が発表した「東北地方太平洋沖地震に伴うメディア接触動向に関する調査」の“震災関連の情報に接して、「信頼度が低下した」という回答比率”を示す。政府自治体やマスメディアに対する信頼が低下するなかで、情報操作されることへの生理的反発が蔓延しているのではないかというのだ。
「ここ1年で、ステマに限らず、企業のマーケティングコミュニケーションの効きが悪くなっている。個人的には、出所が不明な情報で自分が操作されていることへの嫌悪感がこの1年間くらいで浸透してきたように感じる」(濱田氏)
と話す濱田氏は、
「食べログ問題は一段落したような印象があるが、情報操作への嫌悪感は依然としてあるので、いつ再燃するかわからない。ブログや口コミサイトのやらせだけでなく、広告や自社サイトの情報などが炎上の原因になりかねないような気がする」(濱田氏)
とも話し、国民全体に政府や大手企業、マスメディアへの漠然とした拒否感が蔓延していることを示した。2ちゃんねるユーザーによるステマ事例探しやステマ叩きも行われており、いくつかの企業がやり玉に上げられるケースも出てきている。それにともない、有名人が多くブログを書いている芸能人ブログの運営事業者なども「今後は関係性の明示を必須にする」などの対応が取られ始めているようだ。
健全なメディアにするためには、さらなるガイドラインの改訂が必要
日本発の協議会として、口コミマーケティングのガイドラインを示すWOMJであるが、濱田氏によると「関係性の明示が必要であるという認識は一般化してきているが、個々に見ると難しい問題も含んでいる」のだという。
口コミや広告での関係性の明示について濱田氏は、図を示しながら次のように説明する。
「口コミや広告であればよいが、ソーシャルメディアの中には、書くか書かないかの自由のあるなしや、書く内容の自由のあるなしがハッキリしないものが多い。これらに今後どう対応していくのか。情報操作への生理的嫌悪感が蔓延しているなか、これらのグレーゾーンが残っている限り、いつ炎上するかわからない。2ちゃんねるなどでステマだと判断されてしまえば、抗弁できない状態となる」(濱田氏)
グレーゾーンへの対応が課題になりつつある
さらに濱田氏は次のようにも話す。
「排除すべきと書かれてはいるが、そんなに簡単な話ではない。たとえば、雑誌の特集記事などやテレビなどにも危ういものがあり、これらのグレーゾーンをどうするかということが我々に突きつけられている」(濱田氏)
たとえば、有料リンクやアフィリエイトの扱い、PRや出稿バーターは当てはまるのか、領域はネットだけでいいのかなどだ。こうした状況から、「ガイドラインの文言を変えるのか、解釈をもっと細かく明確にするのか、WOMJのガイドライン委員会で一歩進めた形で提示する必要がある」と、濱田氏はガイドラインの改訂が必要になっていることを明かした。
講演の最後、濱田氏は「健全なメディアに向けて」という話しを行い、「個人的な意見ではあるが」と前置きしながら、次のような考えを示した。
「食べログのやらせを行う事業者が投稿できないように規制できないかといった議論もあるが、私は違うと思う。口コミはそもそも個人的なもので、多くなることで最大公約的な意見がでてくるもの。投稿を排除するのではなく、投稿を増加することでやらせの影響力を極小化したほうがよいと思う。それがソーシャルメディアの本質である」(濱田氏)
そして、次のようにまとめて第二部のセッションを終えた。
「また、WOMJはネットメディアを健全にしようとしているが、それだけでなく他のメディアも入れた全体的視野で対応を行う必要がある。WOMJはまだ設立3年で一歩を踏み出したばかりで、何がどこまでできるかはわからないが、健全化に向けてできる限りの努力をしていきたい」(濱田氏)
講演後は、「ライバルを落とすような口コミを法律で規制したほうがよいのではないか」「芸能人ブログに書かせるという売り込みはなくならないのか」「海外での状況はどうなのか」など、会場から多数の質問が寄せられ、景品表示法や法律の問題、海外での状況などについて活発な意見が取り交わされた。
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