「スマートフォン時代の鍵になるコネクテッド20代女性と4スクリーン+クラウド型メディア」第一部 7月23日開催月例セミナー イベント報告
- 掲載日:2012年8月27日(月)
【2012年度第5回月例セミナーレポート/第一部】
スマートフォン時代の鍵になるコネクテッド20代女性と4スクリーン+クラウド型メディア
スマートフォン時代には、どのようなメディアが重要で、どのようなターゲティングで消費者行動を考えていかなければならないのだろうか。アスキー総合研究所のMCS 2012の調査結果からユーザー傾向を分析し、今後注目すべき技術を明らかにしていった。
スマートフォン、タブレット端末の利用時間は1年間で倍に
Web広告研究会の第5回月例セミナーは、「メディアのいまとこれから」というテーマで7月23日に開催された。第一部ではアスキー総合研究所の調査結果をもとに、第二部ではNTTコミュニケーションズがこれまで行ってきた事例をもとにそれぞれ講演が行われ、今後のメディアや技術がどうなっていくかを推察していく2時間となった。
株式会社アスキー・メディアワークス
アスキー総合研究所 所長
遠藤 諭氏
第一部に登壇したアスキー総合研究所の遠藤諭氏は、「コネクテッド20代女性と4スクリーン時代のメディア」と題した講演を行い、これからのメディアのありかたについて、同社の調査データを示しながら解説を行った。
これまで3回の調査を行ってきたアスキー総合研究所(以下、アスキー総研)の「消費行動とメディア・コンテンツに関する1万人調査」(MCS:メディア&コンテンツ・サーベイ)では毎年末に調査を行っている。最新の「MCS 2012」の調査によると、2010年末に比べて2011年末は、1日あたりのテレビ視聴時間が17.9分減少し、134.1分/日となっている。また、遠藤氏は各デバイスの利用時間の比較から、スマートフォンやタブレット端末の接触が増えていることを示した。
各デバイスの利用時間
テレビへの接触時間は一様に減少しているのではなく、特に1日に1時間以上テレビを見る層の減少が顕著だという。また、震災などの社会環境の変化にも影響されており、最も影響を受けたのは高年齢の女性層で、テレビの接触時間の減少も顕著だったと遠藤氏は説明する。
利用意向を見ると、高年齢の女性層は、震災などの影響で「ニュースへの関心が高くなった」「メディアに対する信頼感が低くなった」「消費意欲が低くなった」という項目の数値が高いが、「貯蓄・保険への関心が高くなった」だけは20代女性が最も高くなっていることも興味深い。
スマートフォン時代のインターネット消費者層のなかで、最も重要な層を20代女性と位置づけた遠藤氏は、「コネクテッド20代女性」という言葉を使い、スマートフォンを利用する20代女性の傾向をデータから説明していく。性年代別のiPhone/Androidの利用率から「iPhoneの利用率は20代女性が高い」とし、購入意向率から「10代後半は男女ともiPhoneを欲しがっている」と説明する遠藤氏は、「女性の多くがiPhoneを使っているというニュースや調査結果は他でもよく目にする」と話す。
スマートフォンの有料アプリ/コンテンツの利用率調査では、iPhone利用者の約半数が有料アプリ/コンテンツを購入しているのに対し(49.5%)、Androidでは約4分の1(23.4%)という結果となった。月額の利用料金は、iPhoneの月額272円に対し、Androidでは231円という結果も出ている。
しかし、利用台数シェアではiPhoneをAndroidが上回り、MM総研の調査では2011年度の国内出荷スマートフォンのOS別シェアはiOSが30.0%、Androidが69.0%であるため、一般的に市場規模はAndroidのほうが大きいと考えられている。有料アプリ/コンテンツの毎月の平均購入額では、iPhoneがAndroidを上回っているが、iPhoneは200円未満のコンテンツの購入層が半分近くを占める。一方、Androidでは5,000円以上のコンテンツを購入しているヘビーユーザーがiPhoneの倍近く多いことも調査結果として示された。
iPhone利用者のうち、利用している有料コンテンツで最も多いのは28.3%のゲームであることも示した遠藤氏は、「iPhoneとAndroidのユーザー層の違いは、実際のアクションやお金の使い方の違いとなっている。500円以上のユーティリティを30代以上のAndroidユーザーが何本も買っているというのが実情だと思う」とまとめた。
iPhone、Android利用者の有料アプリ/コンテンツ購入額(月額)
性年代別のメディア利用状況について説明し始めた遠藤氏は、「20代は他の年代層とはかなり違う」と話す。「読んでいる本も、10代はベストセラーがランキングに入るのに、20代のランキングはまったく異なり、ラノベやミステリーが上位に入ってくる。オタク的な要素が強い」とし、現在の20代は、10代の頃にアニメ番組が数多く放送されていた影響を受けているのではないか、と推測する。
そうした影響を受けているためか、新聞の閲読時間は10代や20代で短く、男女ともに年齢に比例して長くなっている。一方でマンガの年間平均購入冊数は20代が高い。ドライブを趣味とする比率は20代から30代前半男性で減少しており、鉄道の趣味は圧倒的に男性が高いなかで20代女性にも若干の伸びが見られることも明かされた。他にも、次のような特徴が調査結果から示された。
・カメラが趣味なのは60代男性と20代女性
・料理が趣味なのは20代女性
・mixi利用率は20代前半女性がトップ
・Twitterも20代前半女性の利用率が突出
・動画視聴は20代の男女が最も高い
スマートフォン時代に注目すべきコネクテッド20代女性の姿
続いて、コネクテッド20代女性(スマートフォンで有料アプリ/コンテンツを購入している20代女性)とそれ以外の20代女性の比較を遠藤氏は行っていく。※ただし、コネクテッド20代女性のサンプル数が55である点には留意が必要。
1日のネット動画の視聴時間はコネクテッド20代女性が32.5分に対し、それ以外が24.9分と、やはりコネクテッド20代女性のほうが長い。また、オタク的な要素があると考えられているコネクテッド20代女性だが、彼氏がいると答えたのは29.1%で、それ以外の23.3%より高いという興味深い結果も出ている。
ソーシャルメディアの利用率は総じてコネクテッド20代女性のほうが高く、特にTwitterの利用率にそれ以外の20代女性との差(45.5%:28.7%)が出ている。ファッション関連や書籍・コミックで利用するネットショッピングサイトの調査結果は、以下のとおりだ。
20代女性がファッション関連のネットショッピングに利用しているWebサイト
20代女性が本やコミック、DVD、ゲーム等のネットショッピングに利用しているWebサイト
メディアのハイブリッド化とテレビが向かう先
続いて遠藤氏は「4スクリーン+1クラウド時代 メディアはどう変わるのか」をテーマに話を進める。
「あらゆるメディアがクラウドと関係してくる」と話す遠藤氏は、NHKのハイブリットキャストを例にあげ、「これまではブロードキャストで映像が送られてきたが、これからはクラウド上のデータも対応させて何を提供するかがビジネスチャンスとなる」と説明する。また、クラウドは日々進化し続け、効率の良いネットワークやハードウェアが使われるようになってきていることも示した。
4スクリーン+1クラウドがもたらす変化
また、HTML5はすでにローカル版のGmailのように端末側にデータを持てることや、ゲームやマルチメディア再生、リアルタイムのデータ通信、ドラッグ&ドロップなどで活用されていると説明する遠藤氏は、「AppleやGoogleはiOSやAndroidといった強力なプラットフォームを持っており、アプリストアなどアドネットワーク的なものも所有している。これらに対応する環境として、HTML5は今後重要なテクノロジーの1つとなる」と話す。
4スクリーン+1クラウド時代となって新たに生まれた変化を示すことで、「これらをどのように捉えて、活かしていくかが重要」と提言する遠藤氏は、まず「チェックイン」機能について説明する。「チェックインによって、情報へのパスがボトムアップになってきた」とし、これまではガイドブックを開いて、地域とジャンルを選びながらレストランなどを探していたが、「『おいしかった』といった感動が最初にあって、そこから情報がボトムアップしていく」というように、情報の流れが変わることが非常に大きいという。
また遠藤氏は、あらゆるサービスの情報がソーシャルメディアに流れ出すとし、Pinterestや日本テレビのJoinTVがFacebookのAPIと連携していることを例に、「まったく違うサービスの情報がアクティビティに表示され、行動につながるようになっている」と説明する。この他にも、「エンゲージメント」や「ゲーミフィケーション」も重要なキーワードとして示された。
他にも、端末間通信のできる「NFC」、スマートフォンの画面を車載ディスプレイでタッチ操作できるスマホアプリユニットや後部座席で運転を楽しむToyToyotaのBackseat Driverなどの「画面連携」、iPhoneを野球ゲーム機に変えるアプベースボールやバーチャルスーパーマーケットなどの「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)」、カメラで撮影したテレビや新聞の情報を返す「ACR(Auto Content Recognition)」なども、新たな変化として注目しなければならないと遠藤氏は示している。
テレビの強さは“いま”を伝えることにある
続けて遠藤氏は、「これまでのメディアは同時性と同一性という、いまを伝えることが重要視されてきたが、これからはクラウドを使った非同期性やソーシャルメディアでの多様性を取り入れ、ハイブリッド化して両方と付き合っていかなければならない」と話す。一方で、「しかし、すべてがネットになってしまうと、お金にならない世界となってしまう」と、切り分けることの必要性を説き、テレビの重要性を次のように話す。
「テレビは情報の増加をやろうとしているが、本当に求められているのはクオリティ。三面記事はネットのほうが面白いと思われている一方で、42インチ以上のテレビ所有率が1年で30%以上増え、スマートフォンの増加よりも激しく動いている。テレビは制作費があるうちに客を教育してクオリティを上げたほうがよい」
さらに、「ネットが非同期であるため、生放送(同時性)を強みにテレビは対抗していこうとしているが、テレビの強みは“いま”を伝えること」と遠藤氏は続ける。同時性にはUstreamなどのインターネットメディアが適しており、いかに「いま」の時代性を伝えることが重要で、消費と連動することでエコノミクスが生まれるというのだ。ソーシャルメディアにおいても、ファンやビューの数だけに目を向けるのではなく、「エンゲージメント」を重視すべきであるとし、利用者同士が一緒に教育的に進化することが必要だと遠藤氏は説明している。
最後に遠藤氏は、「テレビの最大の発明はチャンネルで、チャンネルと時間軸の1枚のシートがテレビ番組表というフォーマットになって、このテレビ番組表があることで広告主も演出家も安心して働ける。これからのテレビは、テレビ番組表のようなだれでも合意できるわかりやすいフォーマットや言語、図式、基準を作ることが重要を作ることが重要」と話し、第一部を終えた。
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