Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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『消費者の「自然購買」「意識購買」「無意識購買」行動の実態を把握する「ID-POSリサーチ」』 2012年9月19日開催 第26回Web広告研究会フォーラムレポート(1) イベント報告

  • 掲載日:2012年11月5日(月)

【2012年9月19日開催 第26回Web広告研究会フォーラムレポート(1)】

消費者の「自然購買」「意識購買」「無意識購買」行動の実態を把握する「ID-POSリサーチ」

会員IDとPOSデータを連携させるリサーチは、通常のリサーチやアンケートよりも深く全体を見渡した分析が行える。新たな概念として、「自然購買」「意識購買者」「無意識購買者」という言葉を使いながら、ID-POS連動リサーチのメリットを探っていく。

「属性情報」「ポイント履歴」「購買履歴」から購買行動と意識を調査

公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会は、第26回WABフォーラムおよび第10回Webクリエーション・アウォード贈賞式を9月19日に開催した。


Web広告研究会
代表幹事
本間充

開催にあたり、Web広告研究会 代表幹事の本間充が開会の挨拶に立ち、「今年2月のWABフォーラムでは、『Cooking Big Data』を宣言させていただいたが、今日はそのテーマを受け、第一部では我々のビジネスにビッグデータが何をもたらすのかを話したい。また、第二部では日本経済新聞社とCNNに新しいデジタルメディアがどのように変化しているのか、グローバルも含めてアドバイスいただこうと思っている」と、第26回WABフォーラムのテーマを説明。日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が公益社団法人となって1年目の秋のWABフォーラムの幕が開けられた。

続いて、WABフォーラムの第一部では、まずロイヤリティマーケティングの小林裕介氏が登壇し、「Pontaカードの事例に学ぶ 消費者の属性とID-POS情報を連動させたリサーチサービスのご紹介」と題された解説が行われた。


株式会社ロイヤリティマーケティング
ID-POS/リサーチ事業ユニット
ユニットマネージャー
小林 裕介氏

ロイヤリティマーケティングでは、加盟店で使える共通ポイント「Ponta」の会員約4,625万人(2012年7月現在)の個人情報を扱っており、この情報とID-POSを連動させたリサーチサービスを行っている。もちろん、個人情報の扱いは厳格な管理と運用が行われており、データベースの物理的な分離、会員IDの別管理、機微情報の取扱禁止などが行われている。ID-POS連動リサーチの対象となる会員は、メルマガでのアプローチが可能な約350万人のなかで、リサーチでのアプローチを許諾したリサーチ会員45万人となる。


Ponta会員データとID-POSを連携

Pontaでは会員情報のほか、年間18億件のポイント履歴、一部の加盟店のPOS情報、リアルタイム位置情報、趣味・嗜好リサーチ情報、SNS情報などの消費者の行動履歴情報を管理している。リサーチ会員はカード会員の約1%であるため、カード会員の縮図となっており、これに対してID-POS連動リサーチ(Pontaリサーチ)を行うことにより、効果測定や商品利用調査が行えると小林氏は説明する。このPontaリサーチの最大の特徴は、加盟店のID-POS情報を使って特定した対象者を分析できることだ。


リサーチ会員45万人を対象としたPontaリサーチ

「Pontaリサーチの特徴は、3つのデータベースを組み合わせて購買の意識と行動を把握すること」と小林氏は話を続ける。リサーチ会員情報DBで「基本属性情報」、ポイント履歴DBで「ポイント履歴情報」を扱うことで、リアルタイムに時間と金の動きを把握し、加盟店側のID-POS履歴DBで「購買履歴情報」を連携させることで、消費者の購買行動を単品レベルで把握できるという。

また、これらの情報にアンケートなどを組み合わせることによって、自然購買者のなかの無意識購買者を抽出して調査することが可能となる。「たとえば、ある店でコーヒーを意識的に購入した人が無意識にケーキも購入した場合、無意識にケーキを購入した人だけをリサーチして把握することが可能となる」と小林氏は話す。購買行動を起こすまでの意識を、同じ対象者で調査できるようになるのだ。

アンケートとID-POSを組み合わせることで、ロイヤリティマーケティングでは、広告効果検証、商品需要調査、価格妥当性調査が行えるようになっている。実購買データを基に購入者を特定し、購入者の情報認知(テレビCMなど)と態度変容をアンケートで迅速に把握できるという。

「市場環境の変化や規制緩和、経済動向などによって、業界を取り巻く環境は短期間で大きく変化している。そのなか消費者の実態の把握は、より短期で正確に行わなければならない。我々は、ID-POSデータ、Ponta会員情報、ポイント履歴情報の3つのデータベースを使って、迅速で精度の高い情報をサービスとして提供していきたい」

最後に小林氏はこのように話し、実際にID-POS連動リサーチを活用した消費者調査に関する講演へマイクを手渡した。


ID-POS連動リサーチで見えてくる無意識購買者の傾向


株式会社クロス・マーケティング
マーケティング&リサーチ本部 第2部
部長
梅山 貴彦氏

続いて、クロス・マーケティングの梅山貴彦氏が「第3のビールにおける自然購買の実態 ~ID-POSと連動した自主調査結果~」と題した解説を始める。

まず梅山氏は、ID-POS連動はこれまでの調査とは異なるリサーチ手法だと、次のように説明する。

「自然購買、意識購入者、無意識購入者といった言葉は聴きなれない言葉だと思う。これまでの調査はある商品を買った人を対象にアンケートやグループインタビューを行っており、意識しながら購入している人を対象にしているのが通常だ。ID-POSを使った今回のリサーチでは、実購買した人に対してインターネットを通じて直接的に調査する初めての調査。買ったことを覚えていない無意識購入者と意識購入者を分けた」

今回の調査は、7月1日からロンドンオリンピック終了の8月12日までの間に、コンビニエンスストア(CVS)で第3のビールを購入した全国20~79歳までの人を対象としており、同期間内で売上上位5ブランドの購入者に対し、8月25日~27日にオンラインアンケートを実施した。調査では、購入したブランドを提示し、その回答から「意識購入者」と「無意識購入者」の2種類を定義している。

・意識購入者:そのビールを購入したことがあると回答した人を
・無意識購入者:購入したことがない、または知らないと回答した人(POSデータでは購入している人)

そのうえで、購入者には“購入したブランドの購入時の様子”を、無意識購入者には“普段の第3のビール購入時の様子”を聞いている。調査したのは、「のどごし<生>」「ジャパンゴールド」「クリアアサヒ」「金麦」「北海道プレミアム」の5ブランドだ。

男女比を見てみると、意識購入者が男性76.9%:女性23.1%であったのに対し、無意識購入者は男性65.6%:女性34.4%と、無意識購入者の女性比が比較的高い。これは、「ビールという商品が購入の関与に寛容的であることや、飲酒の頻度が影響しているのではないか。商品によっては無意識購入者の男女比が変わる場合もある」と梅山氏は分析する。また、「CVSの利用頻度が低いほど無意識購入率が高い」「酒類引用頻度が低いほど無意識購入率が高い」「自分用に購入する人は意識購入率が高く、家族用に購入した人は無意識購入率が高い」という調査結果も出ている。

購入ブランドと購入者の生活価値観を「慎重-直感」「派手-堅実」の2軸で示したコレスポンデンス分析も行われた。「その人のライフスタイルのイメージとCMのイメージが結構合っているという結果になった。実際に購入する人と商品のブランドイメージが比較的合致していると感じる」と梅山氏は話す。

購入ブランドと生活価値観のコレスポンデンス分析

ブランド別の意識・無意識購入者比率を見ると、クリアアサヒ、金麦、のどごし<生>の3ブランドでは9割以上が意識購入者なのに対し、ジャパンゴールドは78%、北海道プレミアムは68%で、発売間もないブランドは無意識での購入比率が高いことがわかった。

「このことからも、ID-POSリサーチは新商品の調査に非常に向いていると言える。ビールという通常は意識して買うことが多い商品であっても、新商品では20~30%の無意識購入者がいる。新商品や購入関与が低い場合は無意識購入者率が高くなるが、この無意識購入者はこれまで調査できていなかったので、非常に意義のある調査になったと思う」と梅山氏は話す。

調査結果の発表は、無意識購入者の多いジャパンゴールドと北海道プレミアムの2つに絞って続けられる。「初回認知」に関しては、2商品とも意識購入者はコンビ二で、無意識購入者はテレビCMで知ったという人が多く、意識購入者がテレビCMで知ったという人も多いため、新商品のテレビCMの効果は非常に高い結果となった。「無意識購入者は、購入した記憶はなくても、テレビCMのイメージが残っていて、それに影響されて購入したと見ることもできる」と梅山氏は話す。また、「購入場所」に関しては、2商品とも意識購入者はコンビニ、無意識購入者はスーパーでの購入比率が高い。

「購入時に他のビールと比較検討したか」という質問については、意識購入者はあまり比較検討しておらず、無意識購入者は比較検討している人が多くなっている。「コンビニでは、多くの商品を買う人ほど無意識購入が多くなり、よく吟味する人ほど買った商品のブランドを忘れるのかもしれない、という仮説を立てることができる」と梅山氏は説明する。

「購入予定の有無」では、ジャパンゴールドの無意識購入者は、普段は買う銘柄を決めているという結果となった。一方、北海道プレミアムは、何らかのビールを買おうとしていた人となっている。これについて梅山氏は、「2商品の購入者の購入の選定基準に違いがあり、属性やグループが異なるという結果が見て取れる」と話す。

「購入理由」は、2商品とも意識購入者は新商品だから、無意識購入者は普段は飲んだことがなく価格が安いという結果となっている。これらの結果を踏まえて、梅山氏は第3のビールにおける意識購入者と無意識購入者の特徴を次のようにまとめている。


購入意識ごとの特徴

無意識購入者には女性が多く、家族用に買う傾向が高いことについて梅山氏は「ビールは男性が多いと思われるが、実際にそのビールを買うのは男性の奥さんや家族の場合も多い。その女性の気持ちを捉えないまま、男性をターゲットに広告戦略や商品戦略を立てて本当によいのだろうか。自分が主たる利用者ではない購入者は、非常に多くいると考えられ、それらの人をターゲットに施策を立てることはこれまで困難だった。ID-POSリサーチがこれまで見えなかった層に調査を行えることがというのがわかる特徴的な部分だといえる」と説明する。

最後に梅山氏は、実際にID-POSを活用した調査を行った結果、見えてきたメリットとして、まず「実際に購入している人への調査である」ことを挙げた。「購入したことを意識して(覚えていて)調査に応じているのではなく、自然に購入している人も調査対象となることがこれまでの調査と最も違うところ」と梅山氏は強調する。Pontaのアンケート調査会員IDとPOSデータを紐付けすることによって、購入日時、数量、金額、回数、同時購入などの組み合わせで、購入者を知ることができる。新商品のユーザー分析、新規ユーザーと継続ユーザーの分析、購入頻度や利用金額別の分析、売上構成比い合わせた分析が可能となる。たとえば、「50本の第3のビールを買っている人は?」「リピートして買っている人は」などの今まで見えなかった顧客像がわかってくることも梅山氏は示し、第一部の講演を終えた。

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