Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「Facebookはよそいき、ホンネのTwitter、コミュニティに欠かせないLINE、ユーザーインタビューで明かす利用実態」2013年11月26日開催月例セミナーレポート(2) イベント報告

  • 掲載日:2014年1月20日(月)

Facebookはよそいき、ホンネのTwitter、コミュニティに欠かせないLINE、ユーザーインタビューで明かす利用実態

「ソーシャルメディアユーザー調査2013」の調査結果を報告したWeb広告研究会の2013年度第8回月例セミナー。第二部では、定性調査(グループインタビュー)に参加した、シックス・アパートの平田大治氏、三菱電機の辰巳裕子氏、サントリーホールディングスの石原洋子氏、インタビューのモデレーターを務めたグラスパの小梨由美氏がパネリストとして登壇。アジャイルメディア・ネットワークの四家正紀氏をモデレーターに、パネルディスカッションが行われた。

Facebookは“よそいき”の場、見られていることを意識


アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
四家 正紀氏

四家氏は、事前の打ち合わせで4名のパネリストからグループインタビューの印象をキーワードで出してもらったことを明かし、そのキーワードをもとにディスカッションを進める。18~24歳の若年男性と若年女性、50歳以上のシニア男性とシニア女性、4グループ各6名のグループインタビューから見えてきた、ユーザーの利用実態が明かされていった。

まず、石原氏によって示されたキーワードは、Facebookの「公式感」だ。


サントリーホールディングス株式会社
石原 洋子氏

「シニア層も若年層もFacebookは実名利用が前提なので、企業の公式アカウントもきちんとしたものだと捉えられていた。Facebookはソーシャルメディアのなかでも公式感があり、企業のメッセージがストレートに伝わりやすいと感じる」(石原氏)


Facebookの利用状況

続けて平田氏から「よそいき」というキーワードが紹介される。


シックス・アパート株式会社
平田 大治氏

「参加した人が口を揃えて言っていたのは、“見られている感”。実名で身近の知り合いがつながっているので、書き込みを見られていることを意識して、見られてもよいことだけを書くコミュニケーションが中心となっている。
たとえば、学生は就職時期になるとよくない内容を消したり、友達が投稿した自分の写真も消してもらわなければいけないと自覚している。米国では若者のコミュニケーションツールと捉えられていたと思うが、日本では“よそいき”なツールとなっており、米国でのLinkedInのような使われ方がされている」(平田氏)


三菱電機株式会社
辰巳 裕子氏

また、「公式感とよそいきという2つのキーワードは似ていて、少しニュアンスが異なる」という四家氏の話を受け、辰巳氏は企画に関する意外なポイントがあったことを明かす。

「特にシニア女性には“よそいき”な意見が多い。素の顔に疲れてきた人もいる。“プレゼントに応募すると友達に知られてしまうのが嫌”という意見があり、プレゼント紹介の記事には、いいね! が付きにくい理由がわかった」(辰巳氏)


株式会社グラスパ
小梨 由美氏
(グループインタビューのモデレーター)

小梨氏は「若年層の気持ちが強い」を「若年層がより強く感じている」と話し、「Facebookを公式ページとして名刺代わりに使う」や「世間体があって人目が気になる」といった意見があったことを示す。また、就活のためにFacebookを使うが、企業にいいね! をすると自分の情報が見られてしまうので、悪い情報を削除するか、内定が決まってからいいね! をするという意見もあったという。

多様性が広がるTwitter、人とのつながりから情報検索ツールに


Twitterの利用状況

Twitterのキーワードは「リテラシーによってさまざまな使い方がある」というもの。石原氏は、リテラシーによる使い方の差を最も感じメディアだと話す。

「Facebook、Twitter、LINEのなかで、最も使い方が人によって異なるのがTwitter。印象的だったのは、若年層が意外とリアルなコミュニケーションに利用していたこと。友人間とのちょっとした会話に使われている。シニア層は、電車の遅延や今夜のおかずなどを検索して使いこなしているという印象を持った」(石原氏)

さまざまな使い方があるなか、平田氏は若年層もシニア層も「検索をうまく使いこなしている」と話す。

「シニア層では、世論を知るために検索しているという意見もあった。若年層では同じテレビ番組にどんな感想が書かれているかを検索やハッシュタグで探している。一番印象的だったのは、シニア女性の“アカウントは持っていないがTwitterの検索は行っている”というものだった」(平田氏)

平田氏に続けて、四家氏は「人とつながるよりもコンテンツを探すというように大きく変わっている。書き込むほうもコンテンツを出すという意識が出始めているのではないか。そこがFacebookとは大きな違いがあると思う」と述べた。

もうひとつFacebookとは大きく異なる点として「キャラごとにアカウントを使い分けしている」というキーワードを辰巳氏は示す。

「若年女性から出た意見で、つながるための表の顔とネガティブ情報のためのアカウントを使い分けたり、キャラごとにアカウントを作ったりしている。こうした意見から、本音の情報が集まりやすいメディアであることも再認識した」(辰巳氏)

「人に知られたくない趣味のアカウントもある」と説明する四家氏は、前述のコンテンツの話に触れ、若年男性がネタツイートをリツイートしてもらうためにTwitterをやっていたが、ネタも尽きてリツイートも少なくなったから辞めたという意見を紹介し、「Twitterの役割が明確になってきたと思う」と話す。

小梨氏は、「ネガティブなことを書くためにだれもフォローしない隠しアカウントを作り、企業のキャンペーンなどにも隠しアカウントで応募するという意見も印象的だった。政治的な話が好きで1,000人のフォロワーがいるが、友達に話が長いと言われて別のアカウントを取ったという意見もあった」とその他の意見を紹介する。

四家氏は「さまざまな使われ方となって多様性のおもしろさが出てきた。そのあたりは、企業が活用するポイントにもなるかもしれない」と話している。

LINEは連絡のための必須手段、急激な普及に不安を感じることも


LINEの利用状況

LINEについて四家氏は、石原氏の「連絡のための必須手段」というキーワードを紹介する。「LINEの基本機能であるメッセージと電話を使いこなしているという印象。学校の連絡網としても使われており、LINEをやっていないことで自分だけ連絡もれするもあったというお母さんもいた」と石原氏は話す。

辰巳氏は「きめ細かいグルーピング」というキーワードを示し、「シニア女性が、娘と自分のグループ、娘の友人も含めたグループ、息子と嫁を含めたグループなどを使い分け、日常の生活のなかで駆使してきめ細かなグルーピングを使いこなしている」と説明する。

一方で、平田氏は「怖い」というキーワードを示す。

「LINEの便利さやすばらしさも語られたが、一方でLINEに対する違和感が若年層とシニア層の両方から出てきている。子供にはスマートフォンを買い与えたくはないのに、部活動の連絡網のためにLINEに入るように同調圧力をかけられたり、さらにLINEに入っていないために連絡されないという意見もあった。LINEを使ったいじめによって登校拒否になったという話も具体的にあった。また、LINEの既読無視が怖い、返事をしないと付き合いが悪いと思われて不安、という話は若年層からも出てきている」(平田氏)

平田氏は、こうした現象は絶頂期のmixiにも当てはまり、疲れや違和感を覚える人も少ないわけではなく、良い点と悪い点を含みながら、すごい勢いで伸びているメディアだと印象を語った。また、四家氏は「本来ソーシャルメディアは自発的に使うものだが、普及しているからこそ、こうした同調圧力が生まれている」と説明する。

FacebookとTwitterは属性によって利用傾向が分かれるのに対し、LINEは若者男性、若者女性、シニア女性の利用傾向に共通点が多いのも特徴だ。そうしたなか、シニア男性が孤立しているのはなぜか、小梨氏は次のように話す。

「シニア女性もすぐに飛びついたわけではなく、不安もあったが、家族やサークルの仲間などから非常に強く勧められたのがきっかけで始めた人が目立った。入った後は楽しくなって自分が勧める側に回っていたりする。
一方シニア男性では、ITに詳しいと自負し、LINEの存在を息子に教えたといいながら、自分自身は使えていない人がいるなど、全般にLINEを始められない様子があった。
今回のインタビューに参加したのがリタイア層だったこともあるが、コミュニティを多く持っていないことがその理由なのではないか。つまり、だれも勧めてくれないのだと思う(笑)」(小梨氏)

四家氏はインタビューで印象に残ったこととして、「少し寂しくなる話だが、子供たちもお母さんには教えても、お父さんには教えない。お父さんもプライドがあって教わりたくないのかもしれない。男性にはやってみたいから使うという面があるが、女性はコミュニケーションをしたいと思って使う」と話した。

ソーシャルメディアの生活への影響は少ない

グループインタビューでは、「時間の使い方」という側面の話を聞くために、「ソーシャルメディアが生活をどう変えたのか」「メディア接触がどう変わったのか」と質問されている。

「あえて“いつから”とは決めずに聞いたところ、シニア層からはメールで生活が変わったが、その後は他のツールが置き換わっただけという回答で、メールが1つのエポックとなっていることがわかった。メールが登場して以降の時間の使い方は、あまり変わっていない。しかし、昔の友達とつながるなど、つながり方は少し変わってきている。
情報収集ツールとしてのソーシャルメディアとマスメディアの違いも、対象者の意識としてはあまり出ていない。性格が違う情報として使い分けされており、マスメディアにソーシャルメディアがプラスされた形となっている。ただし、テレビを選択的に見るようになり、だらだらと見続けることはしなくなったという意見はある」(小梨氏)

「生活時間の大きな枠組みは変わっていない」という仮説に対して意見を求められると、まず平田氏が対象者の属性によって違いがあると説明する。

「今回の対象者は若年層の学生と、引退後のシニア層で、比較的暇な時間があるため、ソーシャルメディアを使っても他のメディアの時間が減ることはないと思う。昨年の20代有職女性のなかには、トイレに行く時間を使って返信やコミュニケーションを行っているという意見もあったので、層によっての違いはあると思う」(平田氏)

一方、辰巳氏が「自分の話になるが」と前置きし、「電車に乗っている時間や少しの待ち時間にアクセスするとついつい長くなってしまい、大きな枠組みは変わっていないが、若干後ろにずれることを感じる」と話すと、石原氏もその意見に同意し、「何かをしながらスマートフォンを触ることが増えた。生活が変わるほどではないが、少しオンされて情報が増え、思っていた以上のことが見えることがある」と話している。

また、石原氏は「マスメディアへの接触態度」について、「テレビを見る際、以前は自分だけで感じていたことが、Twitterも合わせ見ることで、同じ意見や異なる意見を共感・共有する場ができたことを感じる」と話している。

これに対して四家氏は、「冬季五輪のたびに情報共有の場はどこかを意識しているが、8年前のトリノ五輪では2chが使われ、前回のバンクーバー五輪ではTwitterとなっている。共有する気持ちは同じでツールが変わった」と説明する。

平田氏も「以前は、知っている人だけが2ch実況板でテレビ番組のことを共有し合っていたが、Twitterで一般的になったと感じているし、テレビとの親和性があると思う」と話した。

ソーシャルメディアはきっかけ、企業ホームページが重要な判断材料に

続いて、「モノの買い方」と「情報の信頼感」に話題が移り、パネリストから意見が述べられていった。

「ソーシャルメディアで流れる情報が嘘だと思っているわけではないが、メディアによって受け取る印象が異なっている。Facebookはフォーマットがしっかりして信頼できそう、LINEはカジュアルで親しみやすい、Twitterはなりすましがあるかも、といった見た目の信頼度の違いがある。また、TwitterやFacebookでは速報性はあるが、自分がほしい情報が流れるとは限らない。ほしい情報を探すときには企業ホームページを見るため、ホームページの位置付けが上がり、最終的にたどり着く場所となっている」(小梨氏)

「PCやネットのリテラシーとは異なる情報のリテラシーの高い人が増えている。物を買うとき、ユーザーの使用感を調べてしっかりネガティブチェックをしていても、それを100%信じるわけではなく参考にするだけで、最後は企業の公式ホームページで詳細を確認し、納得できたら買うという意見が印象的だった。
ソーシャルメディア上の情報はきっかけ作りであり、最終的にはどのルートを通っても企業ホームページで最終判断されている。改めてホームページを充実させておかなければと感じた」(辰巳氏)

また石原氏は、「それぞれのソーシャルメディアに対して、企業のトーン&マナーが重要」だと話す。

「同じ内容を伝える場合も、それぞれのメディアの特徴を意識しないと企業のメッセージは受け入れらない。たとえば、新商品情報やキャンペーン情報を知るのはTwitterという人もいるので、うまく活用を考えていかなければならない」(石原氏)

石原氏に続けて平田氏も、ユーザーの情報行動が変化するなか、企業として情報の出し方を考える必要があると述べている。

「今回の調査では、企業ホームページは信頼性が高く、嘘をつかないと評価されている。しかし、フォロワー層のなかにもステマに騙されず見分けられると話す人がいて、実際に取捨選択できる人がこれから増えていくなかで、企業はユーザーが自分で信頼できると思える形での情報の出し方をさらに考えていかなければならないと思う」(平田氏)

企業は正直なメッセージを伝える必要がある

パネルディスカッションの最後は、グループインタビューを通じでソーシャルメディアの今後はどのように変化し、企業はソーシャルメディアとその先にいる人と、どのように接触すればよいのか。四家氏から石原氏、辰巳氏、平田氏の3人に意見が求められた。

「これまでもやってきたことだが、改めてユーザー目線で情報を発信していくべきだと感じた。情報過多で複数のソーシャルメディアがあるなかでは、読まれるメッセージはわずかになってくる。企業が言いたいことはたくさんあるが、お客様にとってどのようなメリットがあるかを自分ごと化して、しっかりとしたメッセージを伝えることを心がけなければならない」(石原氏)

「Facebook、Twitter、LINEと、それぞれコミュニケーションと文化の違いがあることを感じた。また、前述のようにプレゼント系の投稿記事はいいね! が付きにくいもののアクセス数は非常に高い。企業側はユーザーの行動をしっかりと見極めて判断しなければならないと思う。
ユーザーの情報リテラシーが高まり、ソーシャルメディアを使いこなして購入を検討している。企業側は、ユーザーの行動を認識し、それに沿った形で情報発信を設計していく必要がある」(辰巳氏)

「グループインタビュー全体で感じたのは、プライバシーに気を遣ってリスクを感じていること。ただ、漠然としたリスクであるため、よくわからない場合はやらない人もいる。そのため、たとえばプレゼントキャンペーンを行う場合は匿名にすることで応募数が増えるなど、ユーザーの心理に合わせて、気持ちの良い方法にするのがよいことを非常に感じた。
また、企業が何をやろうとしているかは、表にしていないところまでユーザーに見透かされており、社会人経験の豊富な人が見透かして、一瞬のうちに拡散されてしまうこともある。企業は、ユーザーとの間でお互いのメリットとデメリットがわかるような形にして、ユーザーが気持ちよく選択できる状況を作ったほうがよい」(平田氏)

最後に四家氏は、「ソーシャルメディアがこれだけ成熟してきて、それぞれのユーザーに合った使い方がされていく時代になっている。我々も本気で1つひとつのことを考えていかなければならないと感じた調査だった」とパネルディスカッションをまとめている。

2013年11月26日月例セミナーレポート(1)


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