「企業サイト・動画・Facebookの運用ノウハウを6社が公開、Webグランプリ受賞者が話すWebサイト施策の目的と効果」4月21日Webグランプリフォーラムレポート6 イベント報告
- 掲載日：2014年6月30日（月）
企業サイト・動画・Facebookの運用ノウハウを6社が公開、Webグランプリ受賞者が話すWebサイト施策の目的と効果
広報・顧客対応・プロモーションなど、さまざまな目的で運用される企業サイト。そんな企業サイト運用の裏側をWeb担当者が語る「Webグランプリフォーラム」をWeb広告研究会が4月21日開催した。フォーラムでは、2013年に開催した「第1回Webグランプリ」の企業グランプリ部門を受賞したサイトの担当者が、企画・運用体制・成果などを明かした。
お客様が迷子にならないサイトに
すべてのメンバーが自分事化して企業の“想い”を実現
「中部国際空港セントレア」（中部国際空港株式会社）
企業グランプリ部門 企業サイト賞 グランプリ
http://www.centrair.jp/
中部国際空港株式会社
営業推進本部
営業企画室
村松 洋文氏
2005年2月17日に開港し、日本で4番目の国際空港と誕生して10年が経つ中部国際空港セントレア（以下、セントレア）は、後発の国際空港として運用面や施設面で成田国際空港や関西国際空港にアドバンテージがあると村松氏は説明する。しかし、2つの国際空港に比べて後背人口も空港規模が小さな同港は、空港利用者が比較的少なく、施策なしでは空港間競争で生き残るのが困難な状況であることが大きな課題となっている。
また、羽田空港の国際化もセントレアにとっては大きな脅威だ。そのため、展望風呂や商業施設を充実させ、空港内での結婚式やセグウェイの導入、滑走路見学、イルミネーションなどの企画を行ってきたセントレアでは、飛行機を利用する人以外の遊びに来る人も利用できる空港としての価値を上げてきた。
「空港のサイトは、フライト情報やアクセス情報などを掲載していて、どれも似たり寄ったり」と話す村松氏は、2008年頃から「セントレアらしさ」を出すためのサイトリニューアルを提唱してきたが、リーマンショックなどの影響で、売上に直接つながらないWebに予算は付けられないと言われてきたという。そのなかで、的確にサイトリニューアルの課題や目的などを話せる制作会社と出会い、具体的な提案を行うことができるようになったことで、2012年のリニューアルプロジェクトにつなげることができた。
リニューアルの目的は、Webサイトを「ブランディングおよびユーザーに利便性を提供するツールとする」ことだ。リアルでは顧客満足度をうたっているのに、サイト利用者の顧客満足度は低かったと村松氏は振り返る。
また、村松氏は、「サイト作りは掛け算。1つでも0なら、結果は0になる」と話す。セントレアの良さを伝えたい「想い」、それを体現するデザインや設計などの「技術」、各部門の歩み寄りによる「理解」の3つを掛け合わせることで相乗効果が生まれ、いずれも欠かすことができないことを全メンバーで理解し、共有するようにしたという。
制作会社とも想いを共有するため、リアルの会議室で徹底的に議論
想いが伝わるサイトにするため、制作現場ではWebマスターが総監督として判断し、各コンテンツオーナーが「自分事化」してサイトに取り組む体制をとった。制作会社にもすべて任せるのではなく、共に闘うチームメートとしてお互いに共有・理解しながら、目標に向かっていくようにした。
リニューアル後のサイトは、セントレア利用者、航空利用者、商業施設利用者、関心が薄い層の4つでパネルを切り替えられ、それぞれでアピールするコンテンツを変えられるようにしている。
ユーザーの目的別に4つのパネルを設置
「それぞれの目的を持って訪れたユーザーに必要な情報を上から配置し、下までいけば発見ができる構造にした」と村松氏は話し、それでも発見できない場合は、最下部のナビゲーションで他パネルへの誘導、サイト内検索、問い合わせなどが行えるようにし、サイト上で迷子にならない設計にしていると説明する。
また、現場の声を聞くことも非常に重要と村松氏は話す。免税店は飛行機を使う人しか利用できないため、航空利用者向けのパネルで動線を強化していたが、免税店側から空港のお店の1つであるという認識が高いことを聞かされ、商業施設利用者向けのパネルで動線を強化したところ、半数は同パネルから流入するようになったという。
また、従来のフライト検索はプルダウン選択だったが、地図上で直感的に目的地を選択できるようにしてほしいという現場の声を汲み取ったところ、ユーザーの約3割が地図からの選択を利用し、すばやく検索できると好評を得ている。
セントレアのサイトは、リニューアル後の1年間で訪問者数が約2割増加、「繁忙期ごとの訪問者数増加後に平均訪問者数の底上げができている」と村松氏は話す。また、他の空港のリニューアルで、同様の見せ方が採用されており、自分たちのリニューアルが正しかったことを証明することとして村松氏は自信を深めている。
講演の最後、村松氏は「情報がまとめられている」「いろいろ楽しめるサイト。実際にいってみたくなった」といったWebグランプリ審査員の好評価を得た一方で、悪い点は真摯に受け止め、今後もサイトの改善を行っていきたいと最後に話した。