Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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有名サイトのWeb担当者6人が明かした成果・運用の舞台裏――2016年度Webグランプリフォーラム第1部 イベント報告

  • 掲載日:2017年4月11日(火)
  • 委員会・ワーキンググループ:Webグランプリプロジェクト

企業Webサイトの担当者たちが、互いのサイトを相互評価してたたえるWebグランプリ「企業グランプリ部門」の受賞企業が、サイトの成果や舞台裏を語るWeb広告研究会のWebグランプリフォーラムが2月6日に開催された。ポーラ美術館、NEC、資生堂、モリサワ、KDDI、日清など、有名サイトの担当者はどのような考えでサイトを運営しているのかが明かされた。

スチューデント賞 グランプリ――ポーラ美術館 美術への興味・関心を育成する


ポーラ美術館「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ」展・特設サイト
http://www.polamuseum.or.jp/sp/paris_2016/


箱根町・仙石原にあるポーラ美術館は、モネ19点、ルノワール15点、ゴッホ3点、ピカソ19点、藤田嗣治176点を収蔵し、豊かなコレクションを持つ美術館だ。ポーラ美術館のサイト全体の役割は、「集客への貢献」「美術への興味・関心の向上と顧客の育成」「顧客との関係強化」「法人顧客サポート」を対象としたマーケティング活動全般にわたる。

公益財団法人ポーラ美術振興財団ポーラ美術館
中西 由里香 氏

ポーラ美術館は豊かなコレクションを誇るが、森に囲まれた環境の良い美術館である一方、交通の便が悪いという問題があり、気軽に立ち寄ることが難しいことがPRの課題だった。

そのため中西氏は、Webサイトを通して「環境が良く、四季折々の自然を満喫できる」ことのメリットを感じてもらい、「小さな美術館ではなくて、日本屈指のコレクションを収蔵する美術館であると認知もらう」ことを目指したという。

一方、スチューデント賞を受賞した企画展サイトの役割は、目的の2番目にあたる「美術への興味・関心の向上と顧客の育成」であり、日常的な情報収集を経て、美術に興味を持ってくれた人を対象にしている。

興味を持った人に企画展の情報や学びのコンテンツを提供し、「予習して来館することでより楽しんでもらうこと」「実際に企画展を見た人が後から復習して楽しんでもらうこと」が役割だ。

来館前から来館後までの流れ

限られたリソースで成果を上げるコンテンツ活用術

ポーラ美術館のサイトは、「来館未経験者を来館経験者にする」という短期的な見込み客を育成する役割がある。一方、企画展はより詳しく知りたい人への情報提供による「優良顧客育成」を目的としているが、予算と人員という2つのリソース不足が課題だった。

これを解決するために考えられたのが、コンテンツ活用と外部パートナー協力の最大化だった。ポーラ美術館は、約1万点のコレクションという豊富なコンテンツを持っている。ニュースリリースのほか、学芸員が書いていた既存の情報を活用しつつ、必要に応じて顧客視点のストーリーで書き直していった。

企画展を担当するキュレーターは、ストーリーを作り、作品を選んでいるが、これをWebサイト上にも展開したのだ。初めて企画展に触れる人の気持ちになり、企画展のストーリーを理解するための入口を提供して、情報の深度を徐々に増すように気をつけながら、検索エンジンから流入した人が求めていそうな情報を充実させた。

たとえば、「ルソー、フジタ、写真家アジェのパリ 境界線への視線」という企画展では、タイトルになっている3人の画家の情報を入口として、プロフィールや美術用語などの基本情報を押さえながら、エピソード情報などを加えていった。

基本情報をきっかけに検索して訪れた人へ、情報の深度を深くしながら、企画展のタイトルにある「境界線」の趣旨を伝えていくようにサイト内の動線を設計し、SNSとも連携してサイトの外から企画展サイトに流入させるような投稿も行った。

外部パートナー協力では、企画展のコンセプトやサイトで強調したい要素を制作会社と共有したうえで、企画展の世界観を表現し、期待感を醸成するデザインを目指したという。また、無駄な作業の発生を未然に防ぐため、制作会社や社員との調整と確認を行い、できることと、できないことを明確にしながら進めるように心がけたという。

スチューデント賞のグランプリ受賞結果について、美術に初めて接する人にもわかりやすい表現を心がけた結果ではないかと中西氏は話す。

また、審査員のコメントをもとに、今後は、WebサイトのみにとどまらないPR施策の充実、美術に興味のない人が、興味を持つきっかけとなるようなPRイベントの実施や、コアファンを軸に友人知人を美術館へと誘う「人を誘う人」を育成して、クチコミしやすくなるコンテンツを提供していくことを課題として挙げた。

 

 



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