Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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有名サイトのWeb担当者6人が明かした成果・運用の舞台裏――2016年度Webグランプリフォーラム 第3部 イベント報告

  • 掲載日:2017年4月11日(火)
  • 委員会・ワーキンググループ:Webグランプリプロジェクト

ソーシャルサイト賞 グランプリ――資生堂
デジタルで掘り起こす若者のプチギフト需要


資生堂「マジョリ画」(公開は終了)


ソーシャルサイト賞グランプリの「マジョリ画」は、大学生中心の若年層をターゲットとしたギフトサービス。資生堂のメーキャップブランド「マジョリカ マジョルカ」を、オリジナルの似顔絵を添えてプレゼントできる。

資生堂ジャパン株式会社
朝倉 萌 氏

マジョリカ マジョルカは、ファンタジックな独自の世界観と、手に取りやすい価格帯でありながら高品質の商品として支持されてきたブランドだが、販売開始から14年が経ち、課題を抱えていた。

低価格メーキャップ市場は店頭販売チャネルの競争環境が激しく、ブランドエクイティや想起量が低下していたのだ。そのため「スピーディな売上拡大とブランディングの両立がミッションだった」と朝倉氏は話す。

ただし、新製品の開発期間はなかった。そこで朝倉氏は、ミッション達成のための資源として、「コアファンの存在」と「パッケージの評価が高いこと」に着目した。独自性の高いブランディングによって得てきた、これらの資源を有効活用することを考えたという。

また、ブランドのターゲットである若年層の特性を考え、「SNSの拡散力」「プチギフト習慣」「サプライズ好き」という点を企画に盛り込もうと計画。若者の特性を考えた結果、ギフトのエモーショナルな価値を活用したブランドエクイティの向上が戦略として考えられた。

具体的には、若年層のプチギフト需要をデジタル上で掘り起し、友人という第三者からのオススメをきっかけに、ブランドへのトライアル機会を創出することを目指した。ポイントは、友人を介してブランド体験を生み出すことだと朝倉氏は説明する。

施策の位置づけは、ギフト機会の創出による新規ユーザーとの接触およびブランドイメージの形成とし、店舗販売への間接的な寄与も計画した。また、CRMを活用したギフト利用者のリピート獲得、既存商品のWeb販路拡大も狙っている。

マジョリ画の施策は、化粧品市場だけではなく、ギフト市場からも新規を獲得する狙いがあったと朝倉氏は説明する。そのため、他社のギフトサービスと比較して、新規性や独自性を持つこと、モノ+体験であることなどを差別化のポイントとした。

プチギフト施策で目指すストーリー

広告色を出さずブランドの世界観に没入してもらう

こうして生まれたのが、似顔絵ジェネレータ機能を備えたギフトサービスのマジョリ画だ。ギフトを購入すると、似顔絵イラストがギフトボックスとともに届けられるほか、似顔絵を無料ダウンロードしてシェアすることもできる。

サービスのコンセプトは、「あげたいのは、私の思う“かわいいあなた”。もらったのは、私の知らない“かわいいわたし”」。イラストレーターの宇野亞喜良氏とのコラボレーションによって、ブランドの世界観を深めるコンテンツが作られた。

マジョリ画のコンテンツは、広告色を前面に出さない作りになっている。これは、世界観に没入して「ブランドを知らない人・忘れている人」に楽しみながらブランドを体験してもらい、体験者人数を増やすことを優先したためだ。

また、似顔絵ジェネレータのバリエーションが非常に多く、似顔絵で使った絵具(化粧品)をそのままギフトとして自然な流れで購入できることも好評だったと朝倉氏は説明する。

作った似顔絵を無料でダウンロード可能にしたことは、広告費をかけずに認知度を向上させることにつながった。「友達といっしょにできる」「今だけ」「宇野さんのだから」「似顔絵を美化しすぎない」など、シェアしたくなる文脈があったことも成功要因だったと、朝倉氏は説明する。


余白のあるコンテンツでユーザーのシェアを生み出す

こうした一連の施策の結果、2016年7月~12月のマジョリカ マジョリカのEC売り上げ(資生堂オンラインショップ ワタシプラス)は前年比219%、新規顧客の割合は74%となり、購入者の77.4%が友人へのギフトとしていることから、第三者によるトライアル機会の創出につながった。

1人当たりの購入単価は1.3倍となり、マジョリ画を体験した人の約20%が店頭でも購入していることが調査でわかった。目標としていたブランドエクイティの向上は計画比120%、ブランド好意度も22ポイント向上した。

また朝倉氏は、ユーザーのシェアによる自走型の認知獲得を目指したと話し、キャンペーンを次のように振り返る。

「共創のようにユーザーと一緒に創るマーケティング手法もあるが、今回はコンテンツに余白を持たせて、ユーザーに委ねたことが重要だったと思っている。マジョリ画の似顔絵を使ってノートやクッキーを作ったという投稿も多く、自然な形でブランド接触とイメージを向上できた施策だった」(朝倉氏)

結果、マジョリ画のサイト訪問者は340万ユニークユーザー、200万以上の似顔絵が作成され、SNSのシェア拡散は延べ7,200万件以上、200以上の記事がメディアに掲載された(2016年11月時点)。広告費に多くをかけられないなか、自走型の施策によって計画を大きく超える成果が得られたという。

Webグランプリの審査員からは、「ターゲットをとらえて、デジタルならではの体験とブランドの世界観をうまく融合させた施策」と評価されている。これを受けて朝倉氏は講演の最後、次のように話した。

「今回の施策では、あらためて若年層をターゲットとした広告の形について考えさせられた。若年層は広告嫌いと言われているが、それは真意ではない。広告かどうかではなく、面白いかどうかが若者の関心ごとであり、今後の施策や広告に多くの示唆を得る結果だった」(朝倉氏)

 



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