Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「CES 2017とMWC 2017に見るAmazonの衝撃、主役はプロダクトからエコシステムへ」2017年5月24日開催 月例セミナーレポート 第2部 イベント報告

  • 掲載日:2017年8月8日(火)

家電の見本市として知られるCES(Consumer Electronics Show)、モバイル業界の先端テクノロジーが集うMWC(Mobile World Congress)。日本にいても、海外カンファレンスの情報は得られるが、参加者だけが感じられる熱量やトレンドがある。第二部は、「CES2017とMWC2017 モバイルとIoT世界の現状は?」をテーマに、現地のレポートが届けられた。


「家電の見本市」から「最新テクノロジーの見本市」に変化したCES

株式会社電通
CDC エクスペリエンス・デザイン部長
森 直樹 氏

家電の世界的な見本市として知られるCES(Consumer Electronics Show)は、この数年でテクノロジー色が濃くなり、「新たなテクノロジーやエコシステムを紹介する場になっている」と、例年、現地を視察する森氏は説明する。

事実、市場のトレンドにあわせてCESの主催団体であるCEA(Consumer Electronics Association)は、2016年に名称をCTA(Consumer Technology Association)に変更している。

CES 2017の主要テーマは、「IoT」「5G」「AI/ML(人工知能/機械学習)」「Amazon Alexa」「AR/VR」などだったという。

会場で特に目を引いたのが、Amazonの音声認識AI「Amazon Alexa」だったと森氏は話す。今回、Amazon自身はCESに出展していないにもかかわらず、自動車、住宅、各種ガジェットなど、さまざまな企業がAmazon Alexaとの連携サービスを展示していたのだ。


Amazon Alexaとの連携サービスであふれたCES 2017の会場

Amazonは優れたデベロッパープログラムを提供することでエコシステムを築いており、コネクテッドカー、コネクテッドホームなど、多種多様なサービスが発表されていた。こうした状況が、「Amazonのエコシステムの成功を表している」と森氏は説明する。

いまやCESの主役は、デジタル化によってプロダクトからエコシステムに移り変わっており、個々のプロダクトで競争優位に立つことは難しいと森氏は話す。プロダクト同士をつなぐネットワークやクラウドサービスを提供できなければ、優位に立てないというのだ。


3年先のモバイルテクノロジーが集うMWC

株式会社アクアビットスパイラルズ
CEO & Founder
萩原 智啓 氏

世界最大規模のモバイル展示会であるMWC 2017(Mobile World Congress)は、基本のビジターパスが日本円で10万円前後するにもかかわらず、4日間で10万人以上が来場する。

MWCの主催は、世界各国の携帯通信事業者が参加する業界団体GSMAだが、カンファレンスにはデバイスメーカーやソフトウェアメーカーも参加するようになり、この5年はスマートフォンの普及とともに拡大している。

5年前に初参加し、2017年は出展者として参加した萩原氏は、「1~3年で実用化される技術が展示されている」と話す。MWCで紹介されたプロダクトが数年後、日本市場に登場することも珍しくないという。


オープンイノベーションに積極的な海外企業

セミナー後半のディスカッションに入り、森氏は「日本にいても海外の情報は得られるが、実際に国際カンファレンスに行くと何が得られるのか」と問いかける。

「世界中のトッププレイヤーとつながりやすい。オープンイノベーションのなか、大企業も積極的にスタートアップの技術を活用しようと話を聞いている。新しい事業を始めようとするスタートアップにとっては、展示を見に行くよりも、プレゼンするつもりで行ったほうがいい」(萩原氏)

今回、萩原氏はアクアビットスパイラルズとして、MWCと併設されるスタートアップイベント「4YFN(4 Years From Now)」アワードのIoT領域トップ8社のファイナリストとして招待されていた。


4YFNでプレゼンした、スマホをかざすと情報にアクセスできる「スマートプレート」

また、国内カンファレンスと比較して、海外は新しい技術を使ってサービス展開するスピードが圧倒的に速いことも、海外カンファレンスならではの特徴だという。

国内カンファレンスで展示されるプロダクトは、既存の技術を日本市場向けにアレンジされている例が多い。これには、日本企業のビジネスと照らし合わせて評価できるというメリットもあるが、グローバルでは荒削りなプロダクトを見つけられる刺激があるという。

萩原氏のコメントを受けて、「どこよりも早く先んじることが競争優位の近道だ」と森氏は説明する。Amazonのデベロッパープログラム公開から1年経たないうちに、Alexaの関連プロダクトがCESの主役になっていたことが良い例だ。

こうした熱量は、現地に参加したからこそわかることでもあるが、萩原氏は、ニュースに載らないようなローカル企業が先端技術を展示しているといった側面についても話す。

「大企業の展示情報はいずれ入ってくるが、ローカルの小さな企業でも先端技術を使った展示が行われていることが多い。翌年に中国企業が同じ技術を使っているなど、トレンドが見えることもある」(萩原氏)


海外カンファレンスに参加する人のために

講演の最後は、これから海外カンファレンスに参加しようとする人に向けたアドバイスが伝えられた。

萩原氏は自身の経験から、「CESやMWCは、見に行くよりも、コミュニケーションを取りに行く場所」と話す。片言でもかまわないので、英語の自己紹介を叩き込んで行くことが必須だという。

また、欧米のビジネスコミュニケーションはLinkedInが中心で、名刺交換せずにLinkedInでつながることも多いという。日本と違い、Facebookはプライベートに使う傾向にあるため、LinkedInのアカウントを準備しておくことも重要だと萩原氏はアドバイスする。

CESのレポートを続けてきた森氏は、現地参加のメリットとして、世界の経営者が何を考えているかを知る機会になると話す。CESやMWCでは、CEO、CMO、CTOといった役員クラスが講演しており、会社にフィードバックしてプロセスを変革するのにも役立つという。

 

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