「ヤフー 志立氏が語るインターネット50年の歴史とデジタルマーケティングの未来」2017年5月24日開催 月例セミナーレポート 第1部 イベント報告
- 掲載日:2017年8月8日(火)
2007年に初代iPhoneが発売されてから10年、スマートフォンが浸透して生活者のライフスタイルは大きく変化した。Web広告研究会5月の月例セミナー、第一部では「日本のインターネットの奇跡 ~Yahoo! JAPANの歩み~」をテーマにヤフーの志立氏が講演。インターネット登場から現在までのできごとを振り返り、今後のデジタルマーケティングの潮流を探った。
軍事研究から始まったインターネットの歴史
ヤフー株式会社
執行役員 社長室長
志立 正嗣 氏
「そもそもインターネットとは何か」と志立氏は語り、インターネットの歴史をなぞっていく。
インターネットの始まりは、米国の軍事利用にかかわる研究が発端だった。
1958年、米国国防総省の高等研究計画局としてARPA(アーパネット:Advanced Research Projects Agency)が設立される。そして、1969年にインターネットの起源となるパケット通信ネットワークARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)が誕生した。
ARPANETで最初に送信したメッセージは、カルフォルニア大学からスタンフォード研究所へ送った「login:」というテキストだったが、「lo」まで送信したところでシステムがクラッシュしてしまったという。
TCP/IPが生まれた1973年
その後、1973年に現在も広く使われているインターネット通信プロトコル「TCP/IP」(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)の初期バージョンが開発される。
1982年にはTCP/IPの完成によってインターネットという概念が提唱され、1983年にARPANETの標準プロトコルとして採用された。同じ1983年には軍事用ネットワークがARPANETから分離し、ARPANETは研究目的のネットワークに変化していった。
1986年にはインターネット技術の標準化推進団体であるIETF(Internet Engineering Task Force)が設立される。1989年には、CERN(欧州原子核研究機構)がWWW(World Wide Web)を提唱して構築した。
WWWの父と世界初のWebサイト
世界初のWebサイトが公開されたのは1991年。WWWのもとになるグローバル・ハイパーテキスト・プロジェクトを提案していたティム・バーナーズ・リー氏が公開したものだ。
1992年にはISOC(Internet Society)が設立され、翌1993年には米国立スーパーコンピュータ応用研究所(NCSA)のマーク・アンドリーセン氏が、テキストと画像を同時に表示できる最初のWebブラウザ「Mosaic」を開発した。
「電話などの規格は国や国際機関が決めているが、インターネットはIETFなどの民間の団体がオープンな環境で標準規格を決めているところが大きく違う」(志立氏)
インターネットは「フラット」「オープン」「グローバル」でなければならないと志立氏は続け、特定の国に閉じることなく、フラットかつオープンな議論によって、グローバルに規格などを決めるべきだと述べる。
日本におけるインターネットの歴史
ここまでは世界的なインターネットの歴史だ。日本の歴史を振り返ると、1992年にAT&T Jensが日本初の商用ISPを開始した。Windows 95が発売された1995年には、深夜に電話代が定額となるテレホーダイサービスをNTTが提供開始し、ブロードバンドがないダイヤルアップ時代にインターネットを低価格で利用しやすくなった。
「Windows 95の登場は、インターネットにとってエポックメーキングな出来事だ」と志立氏は話す。インターネット接続機能が標準搭載されたWindows 95の登場によって、個人のインターネット利用が爆発的に増えたのだ。
そして、翌年の1996年4月にYahoo! JAPANがサービスを開始する。総務省の情報通信白書によれば、2015年時点のインターネット人口普及率は83%となっているが、96年の日本のインターネット普及率は3.3%、日本のWebサイトの数は3万件ほどだった。
iモードとiPhoneが加速させた日本のモバイルインターネット
1999年2月にはNTTドコモのiモードが登場し、モバイルのインターネット端末化が始まる。インターネットがいつでもどこでも利用できるようになり、メールコミュニケーションが浸透して、時代とともに音楽ダウンロードやニュース配信など、携帯電話の使い方が進化していった。
2001年には、Yahoo! BBをはじめとしたブロードバンドサービスによって、家庭へのインターネット普及が進んでいく。ブロードバンド普及期の様子を振り返りながら、志立氏は「通信が高速化したからといって、むやみにコンテンツをリッチ化しようと考えるべきではない」と語る。考えなくてはならないのは、ユーザーが何を求めているかということだ。
「ブロードバンド化が進んだとき、Yahoo! BBポータルを作ってリッチコンテンツを配信しようとした。しかし、実際にユーザーが求めていたのは、高速通信でリッチコンテンツを楽しむことではなく、より多くのニュースを読んだり、より多く検索したりすることだった」(志立氏)
米国に1年遅れた2008年、日本でもiPhoneが発売されて国内のスマートフォン市場が大きく拡大していく。スマートフォンやタブレット端末の普及に比例して、インターネット利用者数や利用時間が爆発的に増加し、ソーシャルメディアの利用率も増加していった。
デバイスの進化とインターネットの傾向
インターネットの普及には、前述のスマートフォンのようにデバイスの進化も大きく関与している。
PCデバイスの進化を振り返ると、世界初のPCは、1970年にゼロックスのパロアルト研究所で開発されたAltoだという。1976年には、アップルから後の創業につながるApple Iが発売される。
日本で最初に家庭用PCが発売されたのは1979年、マイクロソフトのOSを搭載したNECのPC-8001だった。1992年には、世界中に普及するPCの原型になったDOS/V機(PC/AT互換機)が日本で普及し、1995年にWindows 95が発売する。1998年には初代iMacが登場し、デザインが話題となった。
PCデバイスの進化
モバイルデバイスは、1999年に初代iモードが発売され、2000年に写メールケータイが登場。2001年にiPodが発売され、2004年にはFelica対応ケータイ、2008年にiPhone、2009年にAndroid OSのスマートフォン、2010年に初代iPadが発売されている。
モバイルデバイスの進化
2015年になると、インターネットの利用端末でスマートフォンがPCを上回り、現在までインターネット利用時間の増加を牽引している。
現在のスマートフォンのインターネット利用時間は、ブラウザ22%に対してアプリ78%と、アプリが圧倒的なシェアを占めている(2015年ニールセン調査)。「Yahoo! JAPANは、スマートフォンファーストで成功したが、今後はアプリファーストに挑戦していかなければならない」と志立氏は話す。
インターネット市場で繰り返される2つのトレンド
「インターネットはオープンな市場とクローズな市場の行き来を繰り返している」と、インターネットの歴史を振り返って志立氏は説明する。
インターネットが普及する前の1980年~1995年はクローズなパソコン通信が使われていた。1995年からPCインターネットが普及してオープンになったが、その後は再びクローズなiモードが使われるようになった。そして、2008年からオープンなスマートフォンでWebを見るようになり、2013年からは再びクローズなスマホアプリが使われているというのだ。
インターネット市場2つのトレンド
また、日本のインターネットはガラパゴスでの成長の後、グローバルに合流してきたと志立氏は話す。
たとえば、PC市場ではドメスティックなPC-9800の登場後にグローバルなPC/AT互換機が利用されるようになった。モバイルでも同様に、ドメスティックなガラケーの登場後にグローバルなスマートフォンが登場した。
ソーシャルメディアでもドメスティックなmixiやGREEが普及した後にFacebookが利用されるようになってきており、日本で成長したYahoo! JAPANのサービスも、グローバルに合流していくと志立氏は最後に語った。
(C)2017 Web Advertising Bureau. All rights reserved.
※このコンテンツを利用して直接の対価を得るのでなければ自由に利用いただいてかまいません。
この作品は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。