Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「Webグランプリ」受賞企業が語るサイト制作の裏側――2017年度Webグランプリフォーラムレポート(3) イベント報告

  • 掲載日:2018年3月29日(木)
  • 委員会・ワーキンググループ:Webグランプリプロジェクト

企業Webサイトの担当者らが互いのサイトを相互審査するWebグランプリ「企業グランプリ部門」。Web広告研究会が2月27日に開催した「Webグランプリフォーラム」では、「企業グランプリ部門」を受賞した企業が、受賞サイトの目的や狙い、企画立案の経緯、公開後の結果と評価などについて明らかにした。

2017年度のフォーラムでは、受賞者のなかから、サントリーホールディングス、日本財団 、KDDI、コクヨ、雪印メグミルク、三菱自動車工業の6社がプロジェクトの裏側を語った。
 

企業BtoCサイト賞 グランプリ――「牛乳パックを親子で楽しもう。」雪印メグミルク
夏休みの工作に大人気、親しみやすいコンテンツでブランドイメージを築



http://www.meg-snow.com/fun/make/special/

企業BtoCサイト賞を受賞した「牛乳パックを親子で楽しもう。」は、牛乳パックを使った工作のアイデアを紹介する夏休み向けのスペシャルコンテンツだ。

なぜ、雪印メグミルクが、工作コンテンツに力を入れるのか。背景には、ブランドパワーに課題を感じていたことがある。

2017年の同社イメージ調査では、食品メーカーとしての認知度は高いが、過去の食中毒事件、分社・統合といった変遷から、同業他社と比較して「親しみやすさ」や「信頼度」が低いという結果になっていた。そこで、Webサイトでは、親しみやすさを醸成することを目的に、レシピ、チーズやこの工作などのコンテンツを発信している。


雪印メグミルク株式会社
丸亀 夏紀 氏

手作りで制作した夏休みの牛乳パック工作サイト

同社のWebサイトの訪問者の推移を見ると、特徴的な傾向がうかがえる。2~3月のバレンタインデーやホワイトデーに関連する手作り需要、そして7~8月の夏休み中の工作や自由研究需要、それぞれのタイミングでピークがある。

グランプリ受賞以前から、「牛乳パックでつくろう!」という夏休みにあわせた工作コンテンツを用意してきたが、8月になると通常の4倍までアクセス数が跳ね上がるという。

牛乳パック工作サイトの役割は、同社のファンを増やすことにある。そのための達成目標として、丸亀氏は「コミュニケーション」「社会貢献」「環境保全活動」の3つを挙げる。これらを通して雪印メグミルクのファンを作っていくことを目指す。


牛乳パック工作サイトにはファン獲得につながる3つの役割をもたせた

工作サイトは2004年に2作品からスタートし、社内スタッフ、OB、そして一般の方からのアイデアをもとに、いまでは107作品を掲載するまでに成長した。工作や動画制作はほぼすべてを社内スタッフで担当している。

2017年のスペシャルページのコンテンツは大きくわけて4つある。

「乗りものの街」では、もともと工作に乗りものが多かったので、道路や街を印刷して乗りものを並べられるようにした。「意外と知らない牛乳パックの実力」では、夏休みのアウトドアで牛乳パックを使うアイデアを紹介した。

他にも、インテリアのモビールが作れるデザインをダウンロードできるようにしたり、水遊びに使えるおもちゃの作り方を紹介したりするなど、多数のコンテンツを用意している。

牛乳パックのコミュニケーションツールとしての強みについて、丸亀氏は「牛乳メーカーが牛乳パックを使う納得感」「他社にない独自コンテンツへの興味」「パッケージとの長時間接触によるブランドへの親近感」の3つを挙げ、「企業ファンを作れる有力コンテンツ」だと話す。

公開後は一般の人が作品をSNSにアップしたり、各種メディアで取り上げられたりするなど、反響も多いという。


牛乳パック工作サイトの効果

受賞にあたっては、審査員から「身近で、温かみのあるコンテンツ」「工作を通して企業に親近感が持てる」などの評価を受けた。これからも、ブランドへの親近感を醸成するためのコンテンツを企画していく考えだ。

「コンテンツを見る、作る、遊ぶという長時間の接触でブランドイメージを醸成できている。これからも作りたい、楽しいと思ってもらえるコンテンツを追加していきたい」(丸亀氏)


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プロモーションサイト賞 グランプリ――「週末探検家」三菱自動車工業
ありきたりなアウトドアサイトではつまらない、本気の遊びで新しいファンをつくる



http://www.mitsubishi-motors.co.jp/special/weekend-explorer/

プロモーションサイト賞を受賞した「週末探検家」は、週末の本気の遊びを提案するサイトだ。サイト制作の背景には、自動車業界全体が抱える課題である「若者の車離れ」がある。この課題に対して三菱自動車工業では、新しいファンをつくるためにするべきこと、どんなタッチポイントを増やすべきかを模索していた。


三菱自動車工業株式会社
高橋 幸代 氏

こうしたなか、高橋氏に下ったミッションが、「アウトドアポータルサイトを作って、ファンを新規獲得せよ」というものだ。当時は、燃費不正問題による広告自粛期間を終えたばかりのタイミングだったが、「こんな時だからこそ、守るより攻めるべきだ」と高橋氏は考えた。

「キャンプ場やアウトドア・アクティビティを紹介するありきたりのサイトではなく、新しいことをやりたかった。年齢や性別を限定しない、本格的なサイトを目指した」(高橋氏)

企画は代理店と協力して進められた。攻めの姿勢から、提案に対して「もっと」とプレッシャーをかけることもあったという。そうしたなか、気象情報会社であるウェザーニューズの「災害だけではなく前向きなことに向けて情報を発信したい」という思いと、「新しい遊び方の創造に挑戦したい」という高橋氏の思いがマッチし、協力してプロジェクトが進んでいく。

そして生まれたのが「週末探検家」だ。プレミアムフライデーや働き改革などで、週末の過ごし方に注目が集まっていたことから、週末にこだわった。「探検」という言葉には、挑戦への思いが込められている。

週末探検家のファーストミッションとして選んだのが「雲海」だった。ウェザーニューズと協力して、日本全国30スポットの週末の雲海出現率を予測する「雲海出現NAVI」をメインコンテンツとして用意した。


週末の雲海出現率を予測、グーグルマップによるルート案内も行う


4つのこだわりが拡散につながる

週末探検家がこだわったことは4つある。

1つ目は、あえて三菱自動車の商品(車)を表に出さないことだ。

「商品の直接的なPRではなく、商品の具体的な使い方(車でアウトドアを楽しむこと)をPRしたかった。受賞の審査員からは商品を出さないのはもったいないというコメントもあったが、こだわってよかったと思う」(高橋氏)

2つ目は、誰でも挑戦できること。雲海は1年を通して日本で発生しやすい自然現象であるため、誰でも楽しめるコンテンツとして、週末探検家のファーストミッションに適していた。

3つ目は、サイトデザイン、ロゴ、動画まで妥協せずに「挑戦」を演出すること。

4つ目は、PR活動によって情報を広げていくことだ。オンラインのニュース媒体に限らず、テレビを含むメディア各所に案内した。「1、2のこだわりでメディアが扱いやすく、そして3、4で多くの人に受け入れてもらうことができた」と高橋氏は振り返る。

ニュース番組で取り上げられた時には、番組コメンテーターに「共感PRを取り入れている。Webサイトを使用すると企業に好印象を抱き、今後の選択肢として浮かぶ。すぐに売ろうとせずに消費者との信頼関係を築く、急がば回れの施策」と評価され、感激したという。SNSでも拡散され、これまで触れ合えなかった人たちからの反応が多く寄せられた。

Webサイト公開後は、追加施策としてチラシやポスターの配布、Web広告の出稿、雑誌やWebメディアとのタイアップなどを進めた。さらに、ミニバン「デリカ D:5」オーナー限定のリアルイベントとして、ウェザーニューズの雲海博士と一緒にトレッキングに行く企画も実施した。

「商品を出さなくていいのか迷うこともあったが、グランプリを受賞し、よいチームメンバーにも恵まれて、自信を持ってこれが自分の担当だといえるようになった」と高橋氏。企画当初は、「なぜ雲海なのか?」といった上司の声もあったが、今は理解を得られているという。現在は、チームメンバーとともにセカンドミッションを計画している。

 

2017年度Webグランプリフォーラムレポート(1)

2017年度Webグランプリフォーラムレポート(2)

 

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