Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「マーケターが考えるイノベーションとは? Web広告研究会の幹事・委員長ら4人が伝授!」2018年4月24日開催 月例セミナーレポート 第2部 イベント報告

  • 掲載日:2018年6月11日(月)

イノベーションを起こすための思考法、仕事術が語られたコンセプター 坂井直樹氏の講演を受け、4月月例セミナーの第2部では、「Web研幹事によるイノベーションの起こし方とは?」をテーマに、Web広告研究会の各委員会の委員長らが登壇。それぞれ、異なる目標に向けて活動する4人の委員長がイノベーションの起こし方を議論した。


モデレーター
Web広告研究会 イノベーション委員会 委員長
株式会社ニューバランス ジャパン
鈴木 健 氏



Web広告研究会 West Webマーケティング委員会 委員長
大和ハウス工業株式会社
大島 茂 氏



Web広告研究会 Big Data研究委員会 委員長
Supership株式会社
小林 秀次 氏



Web広告研究会 モバイル委員会 委員長
株式会社電通
森 直樹 氏


4つの委員会活動

鈴木氏:最初に各委員会の活動内容をうかがいたい。まず、イノベーション委員会では、デザインシンキングのワークショップやその時の話題のテーマについてカンファレンスを開催するなど、普段の会社ではできないことを意識して活動しています。

大島氏:大阪の企業が集まって活動しているWest Webマーケティング委員会では、BtoBとBtoCに分かれて担当者やモデレーターを決め、毎月異なるテーマでプレゼンやディスカッションをしています。

小林氏:Big Data研究委員会では、DMP、アドフラウド、データ品質などのほか、最近では位置情報データの活用、個人情報やプライバシーなどデータの取り扱い、同意のとり方などをテーマにディスカッションしています。

森氏:モバイル委員会では、モバイルのみならず、IoT、コネクティビティなど最新のトレンドを追いながら、生活者に提供できる価値を考えています。マーケットやテクノロジーが変わっているので、何をテーマにしていくか模索しているところです。


多様な価値観が交わりイノベーションにつながる

鈴木氏:各委員会において、イノベーションはどう取り扱われていますか?

大島氏:イノベーションそのものについてのディスカッションはありませんが、現状を打破したい人、問題意識がある人が集まって、アドフラウドなど新しい課題について議論している。問題意識があり、人脈を持っている人たちが委員会を引っ張っています。

小林氏:イノベーションを起こすというよりも、新しいトレンドやキーワードをとらえるためにディスカッションが行われている。たとえば、今後でいえばZOZOスーツの登場により、個人の体格データに合わせたプロモーションの可能性など、新しいテクノロジーについての意見交換が多いです。

森氏:顧客接点としてスマートフォンが基本になり、さらにスマートフォンという端末を越えて、IoTなど考えるべきエリアが広がっている。「あえてモバイル委員会で何をやるのか?」については、悩むことでもあります。ただ、携帯事業者、代理店、アプリ開発など、モバイルにかかわるさまざまな立場の人、背景を持つ人が集まっているので、イノベーションが起こしやすい分野だと感じています。

鈴木氏:先ほどの坂井さんの講演(第1部)にもあったように、多様な価値観、問題意識を持つ人が集まると議論ができ、そこからイノベーションが生まれる。委員にこんな人がきて変わった、あるいは、こんな人が来てほしいというのはありますか?

大島氏:広告主に入ってほしいですね。いろいろな業界の成功事例を学びながら、自社に置き換えてアイデアを考えられるからです。フラットに相談するのはサプライヤーよりも広告主のほうが多いです。

小林氏:教わりたいという姿勢の人よりも、自分の意見、自社での取り組みを積極的に話して議論できる人がいいですね。意見があれば議論になりますし、少人数だから言いやすいと思うので、ぜひ参加するだけでなく発言する人に来てほしいです。

森氏:悩んでいる人に相談に来て欲しいです。プロバイダー、代理店もいるので、悩んでいる人への解を議論したり、有識者を呼んで話を聞いたりできますから。


反対がないアイデアはつまらない、社内を説得して進めるための仕事術

鈴木氏:坂井さんの話で、イノベーションの起こし方、思考方法などがあった。イノベーションを起こすための工夫はありますか?

小林氏:情報のインプットの幅を広げることですね。常にアンテナを張っておくと、別の事象が現れても結びつけやすくなって、既存の枠組みにとらわれないところで考えられます。たとえば、Amazonはダッシュボタンを用意したことで、買い物のためにECサイトにアクセスするという既存の行動を取っ払い、ユーザーの負担を解消できたと思います。

森氏:代理店としてお客様のお手伝いをしているのですが、やりたい人がいても、邪魔する人が障壁になって進まないことがあります。その障壁を取り除くことに代理店として3割くらいの労力を割いています。

大島氏:しかし、賛成ばかりで反対する人がいないアイデアはつまらない。反対が多いほうが成功するように思うし、おもしろいアイデアであることが多い。反対していた人が、数年後には(新しい施策やツールなどを)普通に使うようになっていることはよくあります。

森氏:反対が多いということは、既存の習慣やプロセスを否定しているということだといえるかもしれません。

鈴木氏:反対する人を説得する方法として、決裁権者と仲良くなるのは有効ですよね。

森氏:どこかの工程で立場が上の人に来てもらい、関わってもらうことでスムーズになります。同じ場所に来てもらうことでステークホルダーを全員同じ目線にすることが鍵です。

大島氏:決定権者の意見を全否定するのでなはく、一部でも意見を取り入れる。そして、その人から他の人に話してもらうようにすれば、うまくいきます。


失敗を許容・検証できない風土はイノベーションを阻害する

鈴木氏:人の説得は重要ですよね。他にイノベーションを阻害する要因は?

森氏:プロトタイプを作ってユーザーテストをした時に、些末なことまで否定的な意見を聞きすぎて全体に弊害が起こることがあります。調査結果をうのみにするのではなく、プロのフィルターをかけて判断する必要がある。1割の否定を消すために9割の否定を増やすなら、1割を切り捨てる決断がいるので、そこをロジカルに説得しなければなりません。

大島氏:新しいことをやろうとすると、費用が問題になる。住宅の場合、Webが最終的な契約、受注につながったことを証明しにくく、評価しづらいのがつらい。

小林氏:新しい取り組みが失敗した時に、失敗を許容してプロセスを評価できる風土や文化があることが大事ですね。失敗したとしても得たものがあるはずなので、失敗のプロセスを承認することです。

鈴木氏:失敗の判定の期間設定も難しい。高速PDCAを回しすぎて、3日間でクリエイティブを変えていたが、長期的に見ると最初のクリエイティブが良かったということもあった。失敗をどう判定していますか。

森氏:代理店の場合は、クライアント仕事なので判定がまずあり、KPIが期待値を超えるかどうか。アプリなど(デジタルの施策)は、結果がすべて数字に現れるシビアな世界なので、悪かった時にそなえて、プランBを用意したり、リカバリーの方法を用意したりする。

大島氏:KPI、KGIを目的にそった形で決めて評価していますが、それが間違うこともあります。展示会への集客を増やす目的でプレゼントを配ったら、家を買わない人が大勢来て、集客数は満たせたけれど、契約に結びつかなくて現場から怒られたことがあります。

鈴木氏:数字ははっきり出ますが、目標の予測の精度も大切ですね。予想通りなら成功としていいのか判断が難しい。目標設定はどうするのがいいのか。

森氏:定性的な評価を取り入れるやり方があります。ただ、クライアントがプロジェクトに納得していないとき、「なんでやっているんだろう?」と思っている時は、ブレイクスルーは起きないし、うまくいっていないと感じることが多い。


2018年はホームIT、AIスピーカーのブレイクスルーに注目

鈴木氏:最後に2018年、注目するイノベーションは?

大島氏:会社としては、Google ホームやAlexaなどのホームITが加速すると思っているので、今年は取り組んでいきたい。あとは、アプリベースでの広告ソリューションでなにかできないかと思っています。

小林氏:「IoT、とくにホームIoTがどうなるのか」、「VRやARとはどうつながるのか、エンタメ領域から生活に近いところで何が起こるのか」、といった点に注目したいです。それから、ICタグ、スマホやアプリで決済できるキャッシュレスも進みそうです。リアルな購買データもつなぎやすくなるのではないでしょうか。

森氏:コンシューマーのITでいうと、UIとしての音声にブレイクスルーが起きるか興味があります。また中国はアリペイ、WeChatなどのエコシステムができていますが、日本の場合はどこが作って、どこが生活者から支持されるのか興味がありますね。



2018年4月24日開催 月例セミナーレポート 第1部
 

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