Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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『おじさんマーケターが知らない若年層のリアルに驚き――「たまったSNSをこなす」「動画を見ながら動画視聴」』2018年5月22日開催 月例セミナーレポート 第1部 イベント報告

  • 掲載日:2018年6月28日(木)

マーケティングにおいて「若年層」「F1層」「M1層」という切り口は一般的だが、同じ若年層でも「男性・女性」、特に「学生・社会人」では、ライフスタイルは異なる。スマートフォンの普及で生活が急激に変化した今、マーケターが想像する以上に違いは大きいのではないだろうか。

Web広告研究会の5月月例セミナー第1部は、「若者のすべて~20代前半のSNS・動画調査~」と題し、「学生」「社会人」という2つの属性の違いと共通点を分析。動画活用委員会が主体となって行った定性調査と定量調査の結果をもとに、“今の若者の実態”を明らかにした。


4グループを対象に若年層のメディア利用を調査



定性調査をもとにした仮説を定量調査(Webアンケート)で検証


ニールセン デジタル株式会社
高木 史朗 氏


調査では、まず「若年層」として、次の4グループを設定した。大学生は4年生になると就職活動でメディアの利用状況が変わるため除外。社会人も職場環境に定着する3年未満は、学生時代の交友関係が強く残るため除外した。

1. 大学生・女性・19~22歳(大学1~3年生)
2. 大学生・男性・19~22歳(大学1~3年生)
3. 社会人・女性・24~27歳(社会人3年以上)
4. 社会人・男性・24~27歳(社会人3年以上)

調査は、「World Cafe」と「エスノグラフィー」による定性調査と、Webアンケートを用いた定量調査の2つに分けて行った。


若年層4グループを対象に定性調査と定量調査を実施


まず定性調査では、共通トピックについてディスカッションするワークショップ型調査の「World Cafe」を行い、そのなかからメディアの使い方が突出した「エクストリーマー」(計4名)を選出。自宅での生活状況を撮影する「エスノグラフィー調査(観察型調査)」を実施した。

World Cafeでは、メディアの利用状況、SNSでの情報収集の仕方、これまでの動画視聴サービス利用歴、利用デバイスなど、ポストイットも使いながら、さまざまな項目についてヒアリング。さらに男性だけ・女性だけ・混合のメンバーで、計7つのトピックについて話し合ってもらった。

エクストリーマーを対象にしたエスノグラフィー調査では、自宅でのある1日の様子を、固定・本人視点のカメラ2台で撮影し、その行動を記録した。また後日、行動観察をもとにしたデプスインタビューも実施している。


World Cafeのなかで見つけた「エクストリーマー」4名の特徴と選定基準は次の通り

・大学生・女性(22歳、大学3年生)
スマートフォンで動画サービスを利用しつつ、InstagramなどのSNSでファッション情報を収集。Twitterをメインに使い、Facebookも使うが事務的。
・大学生・男性(20歳、大学3年生)
InstagramやSnapchatなどを積極的に利用しフォロー数も多い。テレビ画面で番組を視聴しない。TwitterとFacebookは見るだけ。
・社会人・女性(25歳、社会人3年目)
Twitterがメインで複数アカウントを使い分ける。スマートフォンでの動画視聴が多い一方、テレビでも番組視聴する。
・社会人・男性(26歳、社会人3年目)
YouTube・ニコニコ動画など複数動画サービスを使い分け。PCで動画を長時間視聴している。SNS全般はあまり利用していない。


こうした行動観察を踏まえたうえで仮説を導き出し、それを検証するためにWebアンケートによる定量調査(4パターン各300名、計1200サンプル)を行った。

なお、年齢の異なるパターンについては、「ライフステージによる差異」と「時代背景の影響による差異」があるため、数年後に再調査を行うことで、同様の結果が出るかを検証する予定だという。


「Twitterは古い」など、若年層のリアルライフに大きな反応

デプスインタビューの対象者に選ばれたのは、多様なメディア接触をしている次のような4名。彼らの生活を密着観察し、あわせてデプスインタビューが実施された。

・家族と同居している大学生・女性
・テレビのない2階スペースで過ごす大学生・男性
・ソファで寝転がってスマホをいじる社会人・女性
・パソコンをデュアルディスプレイで活用する社会人・男性

エクストリーマーの選定基準としてあげられている内容は、「若年層のネット活用」の典型的なライフスタイルと考えられる。「テレビを見ながらTwitter」「LINEやSnapchatを使い分け」「Instagramで流行アイテムを検索」といった行動は、30代以上のマーケターでも想像できる範囲内だろう。しかし、実際に4名のエクストリーマーの生活を観察した結果、次のような行動・意見があり、会場では驚きの声があがった。

・「年下の大学生から、Twitterは古いと言われる」(大学生・女性)
・「Instagramがもっとも重要で、数百人とつながっている。テレビはあるけど見ない」(大学生・男性)
・「Facebookは、お父さん世代が使っているSNS」(大学生・男性)
・「Twitterは“なりきりアカウント”も持っていて、複数アカウントを使い分けている」(社会人・女性)
・「動画を見ながら、動画を見ることもある」(社会人・男性)


学生と社会人のメディア接触の違いが浮き彫りに

こうした観察を経て、「(1)メディア接触全般」「(2)SNSの利用」「(3)動画視聴」「(4)ながら利用」の4トピックで分析し、いくつかの仮説が提示された。


エクストリーマー4名の定性調査から得られた知見・仮説


そしてWebアンケート調査(定量調査)により、これらの仮説を検証した結果、次のような“今の若者の実態”が見えてきた。

(1)メディア接触全般
(2)SNSの利用
(3)動画視聴
(4)ながら利用



(1)メディア接触全般:スマホの普及で「布団・ベッド」の滞在時間が長くなる

学生は社会人と比較して1日の自由時間が1時間ほど長く、スマートフォンの利用時間も長い。特に、学生は動画やSNSの利用時間が長く、動画視聴時間は社会人の約2.5倍だった。自宅でのスマートフォン利用シーンは、4グループとも布団・ベッドが最も多い。

ここでは特に、スマートフォンを利用するため「ベッドでの滞在時間が長くなる」といった、ライフスタイルそのものへの影響が指摘された。今後、こうした利用時間帯を考慮したコンテンツ、あるいはベッド回りの生活用品・スマホ周辺機器などに焦点が当たるかもしれない。


学生は社会人よりも自由時間が1時間長く、メディアの利用時間も長い



学生はスマートフォンでのネット動画利用時間が社会人の約2.5倍



動画の主な利用シーンは自由時間と就寝前


(2)SNSの利用:複数アプリ・複数アカウントが当たり前

学生はTwitterとInstagramをよく使い、社会人は学生よりもFacebookの利用頻度が高い。学生は、Twitterで画像や動画をよく閲覧し、利用率は増え続けている。また、Instagramでは24時間で投稿が消える「ストーリー」もよく利用している。

複数アカウントを保有するSNSの割合は学生(男性57%、女性62%)が社会人(男性45%、女性48%)を上回り、特にTwitterは「複数は当たり前」「趣味と友人で使い分ける」「本アカ、芸人おっかけ、なりきりアカウント」など、複数保有の割合が最も高かった。

「情報処理の速度」という観点では、若年層が先鋭化しており、「貯まったSNSを“こなす”という発言が、仕事みたいで凄い」という感想が、高木氏から投げかけられた。「テレビを見ながら、Instagramでガンガン閲覧・投稿」といった使い方がこれに当たる。また学生は、10分未満の短い動画を集中して大量に見ているが、これも“こなす”感覚に近いのかもしれない。


Twitterの利用率は学生が高く、Facebookの利用率では社会人が学生を上回る



Twitterでは画像や動画の閲覧が多く、Instagramではストーリーもよく見られている



学生は複数アカウントを保有する人が多い


(3)動画視聴:「アニメ」がメインカルチャーとして浸透

無料動画サービスではYouTubeが圧倒的で9割以上が利用する。傾向として、ニコニコ動画は男性、C CHANNELは女性、AbemaTV・GYAO!・TVerは社会人の利用割合が若干高い。Amazon Prime VideoやHuluなどの有料動画サービス利用率は社会人が上回る。

視聴コンテンツの傾向を見ると、男性・女性、学生・社会人で、思った以上に大きな差があることが明らかとなった。学生と社会人のどちらもアニメをよく見ており、アニメが若者のメインカルチャーとしてしっかり視聴されていることも判明した。


YouTubeは9割以上とほとんどの人が利用



全体としてはバラエティをよく視聴しているが、属性ごとの特徴が現れた



ネットでテレビを見る人もいるが、YouTuberや一般消費者の動画を視聴している時間の方が長い


(4)ながら利用:6割が複数デバイスを同時利用、4割が動画を見ながら動画視聴

「私のなかで驚きだった」と高木氏が表現したのは、約4割もの若年層が「動画を見ながら動画を見る」行動をとっていた点だった。テレビがメインの場合もあれば、サブ機器の場合もある。すでに主従関係について明確な差はなく、どちらも同等の“再生デバイス”として扱われていることも驚くべき点だろう。

テレビの「ながら視聴」の態度については、「テレビはだいたい視界に入っている」という回答が25%~34%、「テレビは時々視界に入っている」が56%~65%となり、BGM化していると高木氏は指摘。コンテンツの作り手にとっては、複数動画を見ているユーザーに対して、音声で訴求することが大事になっていくのではないかと述べる。


6割以上がスマートフォン、タブレット、テレビ、PCなどの複数機器を同時に利用している



テレビから流れる音声や画像が番組注目のきっかけに



ながら視聴において、ニュース、バラエティ、音楽番組は特にBGM化しやすい


リアルライフから見えた若年層の姿

定量調査の結果から、当初の仮説にあった通り、学生と社会人では「生活時間の使い方が異なる」「見ている動画コンテンツが異なる」といったことが明らかになった。

一方、「若年層はInstagramやLINEに移行していてTwitterはあまり使わない」といったイメージには誤解があることもわかった。また、「テレビはパワーコンテンツ」だと今でもよく言われるが、「動画を見ながら動画視聴」など、視聴実態に驚かされたのではないだろうか。


定性調査と定量調査から明らかになった若年層の実態


第1部の調査結果からは、若年層向けのマーケティングを見直すうえで、示唆に富んだ仮説・知見が得られた。第2部では、現役マーケターたちが本調査結果をもとに、若年層とのコミュニケーション課題について議論を交わしたので、調査結果とあわせて今後のアプローチにぜひ活用してほしい。

2018年5月22日開催 月例セミナーレポート 第2部 

 

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