Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「デジタルマーケターも知っておくとハッとする「SDGs」の基礎。社会課題の解決がイノベーション機会につながる」2018年7月26日開催 月例セミナーレポート 第1部 イベント報告

  • 掲載日:2018年9月28日(金)


あなたは、「SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)」についてどれだけ知っているだろうか。

SDGs(エスディージーズ)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「世界を変えるための17の目標」だ。「貧困をなくそう」「饑餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」など、2030年までに実現すべき世界共通の目標が掲げられている。

「SDGs」(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の概要


SDGsは個人・企業、官公庁・民間企業、国内・国外、子ども・大人に関わりなく、地球に生きるすべての人に共通する普遍的な目標でもあり、企業や教育の現場でも真摯な取り組みが増えている。特に企業では、避けて通れない課題として、事業戦略やコミュニケーションのフレームワークの再構築が進んでおり、デジタルマーケティング領域との関わりも大きい。

Web広告研究会の7月セミナーは、「SDGsの達成に向けた企業の果たすべき役割 ブランドコミュニケーションの再構築へ」がテーマ。第1部では、クレアンでCSRコンサルタントを務める玉沖貴子氏が登壇し、SDGsの背景と企業の現状について紹介した。


「環境」「社会」「経済」の幅広いテーマを包含

「SDGs」は世界を変えるための17の目標だが、この17個は並列ではなく、「環境」「社会」「経済」の各段階で立体的に幅広く関係しているのが特徴だ。日本では、2003年頃からCSRへの関心が高まってきたが、SDGsもその延長線上にあるという。

最も大きな枠組みとしては環境の問題があり、それにより成り立つ社会の問題、社会を支える経済の問題など、それらが有機的に働き合い、1つずつ目標の解決を図るイメージだ。同時にこれらは、「個人の目標」「企業の目標」「国家の目標」でもある。


株式会社クレアン
CSRコンサルタント
玉沖 貴子 氏


「今日ご参加の皆さまには、企業として取り組むべきゴールはもちろんのこと、市民の立場から個人として対応するべきゴールについても今後考えていっていただきたい」(玉沖氏)

SDGsの特徴


「環境」「社会」「経済」の幅広いテーマを包含しているのがSDGsの特徴だが、一見いまの日本社会と結び付きにくいと感じる目標もある。たとえば「貧困をなくそう」が、そうした指摘をよく受けるという。

しかし、玉沖氏は「1日○○ドルで生活するという、純粋な金額で見た“絶対貧困”だと日本は裕福と思われがちだが、物価などを加味した“相対貧困”だと日本も貧困率は高い」と指摘する。世界の絶対貧困率は8人に1人だが、相対貧困率でみると日本は6人に1人が貧困だというのだ。つまり、SDGsは日本にとっても普遍的な目標となっている。


業界も投資家も積極支援、経団連は特に注力

SDGsは、業界団体からも好意を持って受け止められた。国内では経済同友会、日本証券業協会、日本化学工業協会のほか、特に経団連はSDGsに力を入れており、加盟企業への働きかけを先導している。具体的には、経団連が制定した行動原則「企業行動憲章」について、「SDGsの達成」を柱とした改定を2017年11月に行っている。

さらに大きなプレイヤーとして参加しているのが投資家だという。たとえば、オランダやスウェーデンの年金基金が、SDGsへの投資を宣言している。その背景には、非財務要素で企業投資を判断する「ESG投資」(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治の観点での投資)の活発傾向が働いている。

また、年金基金において世界最大とされる日本の「GPIF」(年金積立金管理運用独立行政法人)がSDGs活用に積極的な方針を打ち出したことは、大きな話題になった。こちらは、ESG投資の際に、運用委託先機関と企業とのコミュニケーション言語(共通認識)として、SDGsの活用を促すというものだ。

たとえば、「海の豊かさを守ろう」「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」というSDGsの目標に沿って、プラスチックごみによる海洋汚染問題やクリーンエネルギーに関連した社会課題や環境課題への取り組みを、企業の評価指標とする。

GPIFはSDGs活用に積極的


一般や教育現場にも浸透するSDGsのコンセプト

では、こうした企業側のアクションに対して、一般生活者はどのように受け止めているのだろうか。朝日新聞社が2017年7月と2018年2月に行った「SDGsの認知度調査」によると、目標内容に「関心がある」とした人たちの合計は、半数近く。女性あるいは学生では、半数を超えた。認知度についても、10~50代男性あるいは管理職で増加している。

外務省も啓発を強化しており、SDGsの取り組みを評価する「ジャパンSDGsアワード」を2017年から実施している。

教育現場でもSDGsを巡る取り組みは当たり前になりつつある。慶應大学・上智大学などでイベントが開催されているほか、さまざまなSDGsの目標に取り組んでいるキャンパスも多い。こうした動きは、すでに小中学校や高校にも広がっており、試験問題や教材、カリキュラムにSDGsが浸透しつつある。


SDGsへの取り組みは「リスク」と「機会」の2つの観点から

このような動きの先には、SDGsを誰もが受け入れ意識している状況が生まれるだろう。これについて玉沖氏は「リスクと機会という、2つの側面で企業は考えていく必要がある」と指摘する。

まず、SDGsに取り組んでいることは、企業にとって大きな意味合いを持つが、逆に取り組んでいないことは「リスク」になる。政府・自治体・消費者・学生などが企業と接するときの「チェック項目」としてSDGsが機能するからだ。

「SDGsは社会課題なので、それを達成するために動いているかいないかを、いろいろなステークホルダーがチェックするための有効ツールになる」(玉沖氏)

SDGsの観点でリスクがチェックされる


一方、SDGsに積極的に取り組むことは、さまざまな事業機会や市場を創出する「イノベーションの機会」になり得る。SDGsの各目標の達成にかかわる市場規模は、2017年時点で数100兆円規模と試算されており、最も大きな「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」は803兆円規模に達する。企業にとっては飛躍のチャンスにできるのだ。

SDGsに取り組むことは事業機会にもなりうる


2030年までに目標を達成するため、「すでに先端的な企業は、経営計画にまでSDGsを組み込んでいる」(玉沖氏)という。オムロン、日立製作所、SAP、大和証券グループ、伊藤園、サントリー、SOMPOホールディングスなど、中期経営計画や事業戦略にSDGsを取り入れる企業が増えている。

これらの企業は、事業を通して社会課題の解決に取り組むと同時に、企業広報・企業コミュニケーションにも反映している。事例をまとめたサイトの開設、統合報告書などによる進捗開示、コーポレートブランドの再構築、社内ワークショップの開催といった展開が行われている。

SDGsの取り組みをステークホルダーにわかりやすく伝える


SDGsを用いたコミュニケーションは、顧客に対するメッセージ発信であると同時に、社員に対するインターナルコミュニケーションにおいても重要な要素だ。こうした情報の多くは、各企業のサイトなどでも公開されている。興味を持った企業担当者は、チェックしてみるといいだろう。

 

2018年7月26日開催 月例セミナーレポート 第2部


 

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