「B2B領域があぶりだす“企業とインフルエンサーの関係性”。先入観を捨てると“エモいB2B”が見えてくる」2019年5月31日開催 月例セミナーレポート(4) イベント報告
- 掲載日:2019年9月4日(水)
B2B領域があぶりだす“企業とインフルエンサーの関係性”。先入観を捨てると“エモいB2B”が見えてくる Instagramでインフルエンサーを探すわけにはいかないB2B企業の担当者は、インフルエンサーマーケティングをどうみているのか。B2B領域での「その筋の専門家」というインフルエンサーの価値、採用観点、そしてコーポレートコミュニケーション全体での活用を突き詰めていくと、インフルエンサーマーケティングの本質が見えてきた。
Web広告研究会では、2019年5月の月例セミナーを「インフルエンサーと企業のこれからの関係づくり」をテーマに5月31日に開催。その第4部(パネルディスカッションPart 2)では、パナソニック、UUUM、THECOOが「B2B領域でのインフルエンサーマーケティング」をテーマに議論。そのなかから、B2Cの世界だけでは見えづらかった「企業とインフルエンサーの本質的な関係性」が見えてきた。
【登壇者】(順不同・敬称略)
・鈴木 恭平 氏(パナソニック株式会社 コネクテッドソリューションズ社)
・石橋 尚也 氏(UUUM株式会社/WOMマーケティング協議会)
・中山 顕作 氏(THECOO株式会社)
・モデレーター: 芹沢 美稀 氏(株式会社ラバブルマーケティンググループ(LMG)/株式会社コムニコ)
“B2B領域でのインフルエンサー”はInstagramでは見つけられない
このセッションで広告主側の立場として登壇した鈴木氏は、
・PR会社での、企業の広報支援やソーシャルメディアの運用支援
・IT企業での、広報担当およびオウンドメディアやソーシャルメディアを活用したコンテンツマーケティング
といった業務を担当し、2018年9月から現職だという。
ディスカッションは、「 Corporate CommunicationあるいはB2B事業広報の視点でのインフルエンサーマーケティング」というテーマで進んだ。
鈴木(パナソニック): パナソニック コネクテッドソリューションズ社は、「セキュリティカメラ」「センサー」「画像認識テクノロジー」などを扱っており、企業さま向けに提案したりSIを行ったりしています。こうした B2B領域の活動でインフルエンサー的な役割を果たすのは、主にメディアやアナリストです。
しかし、視点をソーシャルメディア文脈にうつすと、インフルエンサーになるのは
・経営者
・専門家
・学者
・社内のスタッフ
といった人です。すこし意味合いは違いますが、アンバサダーも入るでしょうか。こういう人たちをいかに巻き込みながら展開していくか、試行錯誤しながら取り組んでいます。
具体的な例の1つとして、「現場プロセスイノベーション」というものを進めています。現場の課題解決をテーマに、オウンドメディア「GEMBA」でインフルエンサーをとりあげています。そのため、まずは彼らとの関係作りから入ります。
GEMBA | "現場"の未来を切り拓くメディア
https://gemba-pi.jp/
芹沢(LMG): そういった方たちはどうやって探すんですか?
鈴木: 「工場」とか「物流」とかテーマを決め、大学の先生などの専門家を当たります。たとえば講演会に行って関係構築を図ったり、つながりを作ったりすることに重きを置いています。
B2Bというのは、機密事項があって気軽に写真を撮って公開するわけにもいかないこともあり、UGCが発生しづらい領域です。そのため、 “Instagramの投稿を参考に探す”といったことはできません。現場の方を見つけて・取材して・登場してもらうのは、なかなか難しい面がありますね。
そもそもB2Bの商談は半年から数年かかるものですから、ステークホルダーとの関係もおのずと中長期的な作り方になります。
ただ、サブスクリプションサービスやクラウドなどの新しいサービスを出したときに、「これを使ってみたい」という声をいただいて、それを第三者的に語っていただくといったことはやりました。
【左】鈴木 恭平 氏(パナソニック)
【右】芹沢 美稀 氏(LMG/コムニコ)
UUUMとTHECOOはこう見る、B2B領域でのインフルエンサー活用
芹沢: こういった B2B領域でのインフルエンサーマーケティングについて、お二人はどう思われますか? 実績があったりしますか?
中山: 楽屋で一通り話したんですが「ないよね」という話になりました(笑)。
しかし米国などでは、B2Bインフルエンサーマーケティングが実際の事例としてけっこう行われているという話も出ました。そうした日米の差の理由は知りたいですね。
とはいうものの、日本でも今取り組めることはあります。その方向性を考えるにあたっては、「B2B」「B2C」といった枠組みでとらえるのではなく、むしろ「コーポレートコミュニケーション」としてインフルエンサーをどう起用していくのか、という発想が重要になると思います。
石橋(UUUM): B2Bインフルエンサーマーケティングをてがけたことはほぼないんですが、専門家・有識者の方からインフルエンサーを見つける方法として、「All About(オールアバウト)」を活用するのは良い試みだろうと感じました。
芹沢: B2B領域だと、いわゆる“インフルエンサー”ではない、従来の定義とは異なる方が活躍できる余地がありそうですね。
鈴木: 素晴らしい視点だと思います。弊社では「未来のコンビニを考えるワークショップ」をシリーズでやっているんですが、参加している人は、高校生から会社員、おじいさんまで、幅広い一般の方です。こういう方たちが、食品廃棄や人材不足といった社会課題を踏まえて、コンビニに提言を行うという動きをしているのです。
もちろんこの方たち1人ひとりは、インフルエンサーではありません。しかし、コンテンツの場を作ることで、人が集まり、世の中に問いかけることはできるのだと思いました。もうすこしわかりやすく言うと「こちらのフィールドで“インフルエンサーが集まる場”を作り、そこで発信してもらう」というのはアリかもしれません。
B2Bの商材というのは、すぐには売れないものです。イベントを行うなどしてインフルエンサーを育てていくことに継続的に取り組むのが課題ではないかと思っています。
芹沢: 社内の人材をエバンジェリストやインフルエンサーとして起用して、ドンドン情報発信をしていこうという企業さんも増えています。御社の場合はどうですか?
鈴木: マイクロソフトさんやIBMさんのような外資系企業では、「エバンジェリスト」という役割の人が普通にいますよね。制度として持っていたりもする。さらには欧米だとYouTuberもいたりする。でも日本だとあまり見かけない。
これは日本の市場がまだそこまで成長できていないからでしょう。広告主側が育てないと、こういうスタイルのインフルエンサーは現れてこないように感じます。
【左】中山 顕作 氏(THECOO)
【右】石橋 尚也 氏(UUUM)
企業とインフルエンサーの関係性が重要
芹沢: 打ち合わせで出ていたトピックとしては「今後は、採用目的でインフルエンサーマーケティングを活用したい」というものがありましたが、これについてはどうでしょう?
石橋: 採用ページなどで社内インタビューを掲載したりするのはよくありますよね。同じような活用はできると思います。“社内の見える化”といった使い方ができるでしょう。
中山(THECOO): 少し前に「FBIがInstagramを始めた」という話題がありました。こういう “やりそうにないところが(SNSなどを)やる”のが、現時点ではフックになるかもしれません。B2Bであっても若者に寄り添う企業姿勢が打ち出せると良いかもしれません。工場見学に近い発想でコンテンツを作るとか。
鈴木: まさにそういったイメージでした。“工場ロボット”なんて、見た目もかっこいいし動きもある。そうしたものをうまく工夫して活用することで、企業文化を伝えていけるといいですね。
また違った観点では、企業活動のなかには倫理面や社会課題への取り組みもあります。そうしたことをうまく伝えられれば、若い方たちに“B2Bもエモい”と思ってもらえるかもしれないですね。そのうえでインフルエンサーが動いてくれれば、なお良い。
石橋: そうしたことも考えると、鍵になってくるのは、コーポレートコミュニケーションもブランドも合わせて、“企業としてどうインフルエンサーと付き合うのか。長期的にどう付き合うのか”という、これからの関係性の作り方なのだと思います。
中山: B2B領域に視点をうつすと、インフルエンサーマーケティングをあらためて考えるきっかけになります。日本ではインフルエンサー像が画一化してしまっているので、定義を広げて考えたほうが良いですよね。
芹沢: 企業がインフルエンサーさんたちと良い関係性を作っていくためには、インフルエンサーの定義を先入観で決めつけずに、「自分たちの作りたい未来に共感してくれる人」を探さないといけないですよね。
鈴木: B2Bの観点で言うならば「販売アップでしかインフルエンサーを活用できないと思っているのか?」という話ですよね。短期的な販売には直結しなくとも、中長期的な関係構築ができるような、インフルエンサーマーケティングの新たな道を見つけていきたいと思います。
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