「企業Webサイトが訴えられる? 増加するアクセシビリティ関連提訴の現状とWeb担当者がやっておくべき4つのアクション」2019年7月23日開催 月例セミナーレポート(3) イベント報告
- 掲載日:2019年9月30日(月)
「あなたの企業Webサイトがアクセシビリティを確保できていないために問題が発生した」として企業が訴えられる例が、2017年を境に急増している――そんな米国の状況と、なぜ訴えられるのか、企業側ではどう対応すべきなのかを、専門家のトーマス・ローガン氏が解説した。
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会(以下、Web広告研究会)は7月23日に月例セミナーを開催。「誰のためのUX? ~アクセシビリティを再確認しよう~」というテーマのもと、第2部ではWebアクセシビリティに造形の深い3名が登壇し、それぞれ20分間のショートプレゼンを行った。
ショートプレゼン2人目として登壇したのは、Equal Entry社のトーマス・ローガン氏。ローガン氏は、1か月半前に東京に引っ越してきたばかり。現在はインフォアクシアのパートナーとして、アクセシビリティ改善に携わっている。
トーマス・ローガン氏(Equal Entry LLC. Owner)
ローガン氏によると、Webアクセシビリティに関する提訴が2017年以降アメリカで急増しているのだという。2017年に年間800件強だったWebアクセシビリティ関連の提訴だが、2018年には前年比117%増の2285件、そして2019年には半年の時点ですでに前年を超え3300件となっている。
Webアクセシビリティ関連の訴訟は、2017年以降急激に増加している
提訴件数増加の背景には1990年に設定され2008年に改定されたたアメリカ障害者法(ADA: Americans with Disabilities Act)の判例がある。
この法律が制定時に想定していたのは、公共施設のアクセスに必要なエレベーターや入り口などだ。実際に2002年に航空会社Webサイトのアクセシビリティに関して提訴されたのだが、このときはADAは適用されないと却下された。
しかし、2017年にWebサイトのアクセシビリティに関する提訴があり、そのときは訴訟が認められた。これを機に提訴件数が急増していったというわけだ。
ローガン氏は、訴訟の一例として2019年6月に最高裁判所に上告された米ドミノ・ピザの事例を取り挙げた。ドミノ・ピザでは、Webサイトにアクセスすると獲得できるディスカウントクーポンを用意していた。しかし、このクーポンはスクリーンリーダーではアクセスできないので、視覚障害者は安く購入できなかったのだ。セールやクーポンなど金銭のやり取りに関連する情報は特にアクセシビリティを確保するべき情報だとして、訴訟を起こされたのである。
クーポンを取得する[ADD COUPON]ボタンをスクリーンリーダーでは操作できない
また、ピザのトッピングを細かく指定する画面でも同様に、スクリーンリーダーでは適切に操作できないという問題もあった。
トッピングを細かくカスタマイズする画面もスクリーンリーダーでは操作できない
ローガン氏は、アメリカでさまざまな企業のアクセシビリティ向上の検証や技術サポートを行ってきた。そのうえで「ADAは、事業内容や業種などを問わず適用されるので、米国では、企業がADAに基づいて提訴されるリスクがある」とローガン氏は主張する。
アメリカの場合、提訴の始まりは「Demand Letter」からだ。どういったアクセスの障壁があるかが書かれている。提訴された場合でも、和解契約書によって企業と原告の間で和解できる。企業が提訴されて、裁判となった場合は、専門家証人 (Expert witness)が呼ばれ、ガイドラインに準拠しているかどうかを判断することになる。
最後にローガン氏は、Webサイトの運営者がやっておくべきこととして、次の4つを挙げ講演を締めくくった。
・何をアクセシブルにするのかを知り、Webサイトで使われている技術を認識すること。
・インフォアクシアの植木氏が紹介した「Webアクセシビリティ確保・向上の基本の『キ』」で挙げられたことができているかどうかを監査すること。
・監査した結果問題があれば修正、改善する
・監査した実績、監査結果、修正内容などをドキュメントとして残しておくこと
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