「5G時代に動画広告はどうなっていくのか? 今、広告主が知りたい動画プラットフォーマーの現在とこれから」2019年8月27日開催 月例セミナーレポート(2) イベント報告
- 掲載日:2019年11月1日(金)
広告主として、動画広告にどう取り組んでいけばいいのか? 動画広告を提供するC Channel、Twitter、TikTok Adsの各社が、動画広告の現状と将来的な可能性について、広告主からの問いに答えた。
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会(以下、Web広告研究会)は8月27日に月例セミナーを開催。「知らないとまずい動画プラットフォーマーと動画メディアの本音」というテーマのもと、第二部パネルディスカッションでは、コーセーの小林氏がモデレータとなり、第1部で登壇したC Channel、Twitter、TikTok Ads各社の動画サービスや動画広告に関して質問をした。
小林氏が広告主としての立場から各社にするどい質問を投げかけ、各社がそれに誠実に答える形でディスカッションが進み、動画広告の現状と将来的な可能性が浮き彫りになった。
パネリスト:
・武藤 崇雄 氏(C Channel株式会社)
・篠原 佳名子 氏(Twitter Japan株式会社 )
・田村 千秋 氏(TikTok Ads)
モデレーター:
・小林 祐樹 氏(株式会社コーセー、Web広告研究会幹事)
写真: モデレータを務めた小林 祐樹 氏(株式会社コーセー、Web広告研究会幹事)
こんな人に動画広告に挑戦してもらいたい、各社の思い
【小林】 動画広告に挑戦してほしいお客さんはどんな会社ですか? またどんな風に活用してもらいたいですか?
【田村】 もちろんどんなお客様でも大歓迎ですが、個人的には、TikTokの特徴として、「楽しい」というポジティブな気持ちやユーザー発信の情報が人を動かすという点があるので、従来の方法で広告枠を使って消費者に一方的に伝えることに対して限界や課題を感じている企業さんと一緒に取り組めたらと思っています。
【小林】 会社で企画を通すにあたって、「おもしろい」「楽しい」を数値化するなど、会社の共通言語での説明があると助かるのですが、そういう取り組みはありますか?
【田村】 我々もまだビジネスを開始して1年ちょっとなので手探りではあるのですが、実際に、「ハッシュタグチャレンジ」という、TikTokでユーザーに動画を投稿してもらう座組みのキャンペーンにおいて、
・動画を投稿した人
・見た人
・何もしなかった人
を比較して、関与の高いユーザーはそうでないユーザーに比べて、
・購買意欲がかなりリフトされていた
・実際に来店率が高くなった
というような結果が出た事例もあります。
【小林】 Twitterさんはいかがですか。
【篠原】 お願いも含めてお伝えすると、まずTwitterで自身のブランドがどういう風にツイートされているか調べてみてほしいです。リアルなツイートは、ブランドが伝えたいメッセージと同じなのか違うのか、それを知ってから動画広告を始めると良いと思います。
【小林】 ブランドメッセージとユーザーのツイートにギャップがある場合、
・ユーザーの声に合わせにいく
・自分たちのコミュニケーションに誘導する
どちらのほうがいいのでしょうか。
【篠原】 どちらもありですが、ユーザーのツイートに合わせたほうが会話が生まれやすいですね。ツイートの文脈に、トンマナ、クリエイティブを合わせる形です。
【小林】 C Channelさんはどうでしょうか。
【武藤】 動画制作については、企業とメディア、プラットフォーマーがパートナとして一緒に取り組む必要があります。TikTokならC Channelとは異なる動画の作り方になりますから、メディア特性を理解して新しい取り組みをしたいという方と一緒にやりたいですね。
【小林】 C Channelはいろいろなプラットフォームに配信していますが、コンテンツの作り分けはしていますか。
【武藤】 作り分けているものもあります。たとえばTwitterだと15秒くらいにしています。Facebookでは、以前は長尺でも見られましたが、最近は視聴時間によって反応が違うことがわかってきています。理想は、プラットフォームごとに作り分けることですが、制作の手間がかかるので、バランスを見ながらだと思います。
【小林】 YouTuberはプロだと思うんですが、C Channel的にはクリッパーの方もプロという扱いなのでしょうか?
【武藤】 トップのクリッパーはプロのクリエイターとして動画を作っています。もちろん、そこまで習熟していないセミプロ的なクリッパーさんもいますが。
写真: 武藤崇雄氏(C Channel 株式会社)
ライブコマース、AR、店舗連携。5G時代に向けて広がる動画広告の可能性
【小林】 続いて、5G時代ならではのやりたいこと、やれること、動画のコミュニケーションの変化などについて聞きたいと思います。
【篠原】 Twitterとしては、ライブコマースなど、もっとライブ配信がやりたいですね。今でもライブ配信はできますが、現状は再生をオンにしているとパケット上限の問題もありますし、見続けるのがしんどいです。5Gになれば、そうした通信環境も変わるでしょうから、テレビとの連動などをやってみたいですね。
以前に映画『ちはやふる』をテレビで放送したときに、出演キャストが集まって映画にまつわるエピソードや裏話を語って盛り上げるという生コメンタリー番組をTwitter独占で配信し、Twitter利用者がテレビとTwitterを同時利用し副音声的に楽しめるという新しい取り組みがありました。
5Gが本格的に普及していったら、こうした体験を、リアルタイム性を活かして場所やパケットを気にせずにできるようになっていくと思います。
写真: 篠原佳名子氏(Twitter Japan株式会社 )
【小林】 動画でコマースができるようになれば、たとえばTikTokなどは、動画からの購買に繋がりますし、成果報酬型にすれば放送する個人にもメリットがあるんじゃないでしょうか。
【田村】 個人的には、可能性は無限かと思っています。Eコマースに限らず、オフライン購入もできるようなコミュニケーションはやっていきたいですね。スタンプをARで見られるような機能があるので、動画認証技術を使って、物を認識するようなこともできると思います。
【小林】 第一部のTikTok Adsさん講演で最後に紹介してくれた「手でハートを作るとハートが出る」のは、手のいろいろな状態を記憶させて認識させているのですか。
【田村】 手のポイントを関節ごとに認識して、手のポーズを把握しています。
【武藤】 「5G時代ならではの」でいうと、データ通信の容量や速度という観点だけでなく、モノがインターネットにつながるIoT領域の視点のほうにも興味があります。IoTならどんな端末でもデータの送受信ができるので、電車、教育現場、車、山の中など、さまざまな場所で動画を見るようなこともできると思いますし、普段接触できなかった場所でコミュニケーションができるようになります。
【小林】 そうしたことを実現していったら、こういう場所で動画に接触してもらえるようにしていきたいという夢はありますか。
【武藤】 モノの購買に近いところですね。店舗のサイネージ連携などができれば、スマホで動画を見て、店舗に行ったときにもう一度背中を押すようなことができます。
【小林】 プラットフォーマーが対応しないといけないこともありますよね。
【武藤】 はい、データをつなぐことが難しいですね。APIを開放してくれないので、どういうユーザーなのかわからないことがあるので、一緒にやっていきたいですね。
【小林】 Twitterはいかがですか?
【篠原】 夢のある話をすると、テレビCMの売上につながる勝ちパターンを変えられると思っています。
たとえば事例で言うと、ファミリマートさんがファミペイをスタートさせたとき、テレビCMで「今から48時間以内にTwitterのファミリマート公式アカウントをフォローして、告知ツイートをリツイートすると抽選でクーポンが当たる」というキャンペーンを実施しました。実はこれによってファミリーマートさんは第1回は約24万、第2回は約23万ものリツイートが得られました。テレビCMでTwitterのキャンペーンを知らせることで、行動を起こさせるパワーがあることが明らかになったんですね。
これまでのテレビCMとは異なる、Twitterの参加や対話の特性を加味したキャンペーンで行動をうながすことは、もっともっとできると思います。
各プラットフォームで拡大するユーザー層、そして海外での展開
【小林】 C Channelは、当初の想定以外に伸びているユーザー、エリア、事業などはありますか。
【武藤】 第一部の講演でも少し触れた「ママタス」があります。C Channelと同じコンセプトで、課題解決のハウツーなどを紹介しているメディアです。C Channelが5年目に入り、ユーザーや社員がママになり始めていたタイミングで「スマホネイティブなお母さんに向けたメディアが欲しい」という声を受けて、2019年4月にリリースしました。現在、ママ向けのメディアアカウントとしてはInstagramフォロワー数ナンバーワンになっています。
【小林】 元C Channelユーザーが移ってきているのですね。ママ向けメディアはほかにもいろいろありますが、そうしたメディアとの違いは?
【武藤】 コンテンツでつながっていることが強みですね。既存ユーザーがコンテンツを見て拡散してそれが他ユーザーへの露出に繋がり、新たなフォロワーを獲得します。
【小林】 海外での展開ではいかがですか。
【武藤】 C Channelは、タイとインドネシアで順調に成長しています。タイではクリッパーオーディションや化粧品のアワードなどイベントもやっています。
人がメディアになる時代は、人が発信する情報に価値があります。今後はインフルエンサーを発掘する、社員をYouTuberに育成するなどの取り組みができそうです。
【小林】 TikTok Adsもグローバル展開をしているようですが、他の国ではどうでしょうか。
【田村】 そうですね、冒頭でもご紹介させていただきましたが、実はすでに現在150の国と地域で展開しておりまして、やはりどこででも「ショートムービー」という領域でユーザーから愛され、ビジネスも大きく展開しています。個人的にはインドマーケットに興味津々です(笑)。
写真: 田村千秋氏(バイトダンス株式会社)
他のプラットフォーマーやメディア・出版社とはこう連携していきたい
【小林】 他のプラットフォーマー、メディア、メーカーなど、「一緒にソリューションを考えたい」「こういう会社と組みたい」という希望があれば、教えて下さい。
【武藤】 コンテンツ軸で提携しているプラットフォーマーはすでにありますが、広告の領域では共同メニューがあっても販売促進ができていない現状があります。
たとえば弊社C ChannelがTikTok Adsさんと組みAIを使って化粧品メーカーとコラボするなど、広告主1社に対してより多くの価値を提供していけるといいですね。
【小林】 広告主の立場からいうと、紙媒体のメディアは個性やブランドがあるので「この商材ならここ」と選択しやすいのですが、デジタルではそうではないという課題があります。似たような情報の発信が多いので、違いや差別化点がわかりづらいんですね。プラットフォーマーとメディアのブランディングをしてくれると、より選びやすくなります。
【武藤】 プラットフォームごとのコンテンツの出し分けはそこまでできていないので、力を入れていきたいです。
【小林】 出版社のSNSプラットフォーム使い分けがうまくて、出版社の逆襲のような勢いを感じています。C Channelが出版社と組むことはあるのでしょうか?
【武藤】 アカウント連携したり、出版社の読者モデルをインフルエンサーにしたりといった取り組みはあります。
【小林】 出版社やテレビ局のデジタルコンテンツの配信などは、TikTokはありますか?
【田村】 はい、コンテンツプロバイダの皆さまとは一緒にコラボパッケージを作るなど、積極的に取り組んでいます。また、広告主としてもテレビ局がドラマの裏側などを配信する事例も増えています。エンターテインメント領域との親和性はとても高いということもあるかと思います。
【小林】 Twitterはすでによく連携していますよね?
【篠原】 出版社さんが「雑誌のTwitterアカウントで、雑誌の広告主のTwitterスポンサーシップ広告も出す」など、シナジーを出しています。Twitter文脈にあわせながらも、メディアのトンマナで動画を作成して広告として配信することで、Webの誌面を読んでいる人に行動を起こさせるような、マーケティングファネルを深くするような取り組みは進んでいます。
データ計測、EC連携、B2Bビジネスでの活用、リスク対応……聴講者が知りたい疑問に答える
ここからは、セミナー中にTwitterで寄せられた登壇者への質問へと移る。
【小林】 実店舗での売上効果などを求められますが、計測はできますか?
【武藤】 Web上の行動は連携できているのでECサイトはできますが、実店舗の計測はまだですね。
【小林】 ECサイトの売上は加速していますか? ボトルネックは?
【武藤】 ライブコマースもやっていますが、人の依存度が高すぎて難しい部分も多いです。フォロワーが多くて売りがうまいインフルエンサーは成果がでましたが、普通のクリッパーはまだまだ弱いので、テコ入れしていきたいと思います。
【小林】 B2Bビジネスでの使い所はありますか?
【田村】 そうですね、完全に個人的な感想になりますが、私自身はこの会社の画像認識・動画認識・レコメンデーションなどテクノロジーに惹かれて入社した部分もあるので、こうした技術を使った企画を考えたいです。メイクの疑似体験とか、店頭でバーチャルに試着するとか、そういった取り組みでB2Bでの連携という方法は模索してみたいですね。
【篠原】 TwitterにはB2Bチームがあり、Twitterマーケティングのアカウント「@TwitterMktgJP」を運用しているので、フォローしていただければと。このアカウントでは、セミナーに登壇したときのダイジェスト動画、商品紹介の動画などを作って発信していますし、Twitterを上手に運用している企業の引用リツイートなどもしています。
さらに言うと、最近マーケティング業界では、実名でTwitterを使っている人が増えています。B2Bの活動でリーチしたいなら、B2Bマーケティングのハッシュタグでリーチできる人もいます。
【武藤】 商品開発や採用PRという観点がいいかもしれません。
C Channelでは、大学生を集めた「イエロープロジェクト」という活動をしています。150名くらいが登録していて、週に1回オフィスにきて大学生が学んだり、企業の課題を考えたりしています。その場を使えば、普段接することができない大学生のナマの意見が聞けるので、商品開発に使うなどの事例もあります。
企業の採用PRでの活用事例もあります。若い世代を採用したいときに、どういう先輩社員がいるのか、どういう環境で働くのかを動画で紹介して、関心を高めています。
【小林】 広告を出す側はリスクも理解しておきたいです。Twitterでの質問でも、SNSのネガティブな影響、ブランド毀損、安全面などに関するものがありました。監視体制などがあれば安心ですが、各社どうでしょうか。
【田村】 ブランドセーフティは対応するべき一番の課題だとTikTok Adsでは捉えています。機械学習によるレコメンデーションについて、アメリカで議論になることもあります。プラットフォームの健全性を担保するためのチームを強化していて、24時間の監視体制で、問題のあるコンテンツは表示されないようにしています。セーフティの基準が国によって違うので、それぞれに合わせています。広告主向けには、広告の前後のコンテンツを選べる機能も提供しています。
【篠原】 Twitterはパブリックカンバセーションなので、ブランドの良いことも悪いこともユーザーの意見であり、それをTwitterとしてコントロールすることはないというスタンスです。ただし、ネガテイブな雰囲気を醸成しないためのルールとして、特定の人物やブランドへのヘイトは削除したりアカウント凍結したりしています。AIでルール違反を検知する仕組みもあり、日本語でも前後を読んでアカウントを凍結することもあります。
Twitterは購買前に最も検索されるプラットフォームの1つです。それは、良い情報も悪い情報も書かれているからです。Twitterのインフルエンサーは、身近な存在なこともあって影響力が強いです。それは、良い情報も悪い情報も発信するので信憑性が高いと思われているからです。そうしたカルチャーは大切にしています。
【武藤】 C Channelの場合は、自前でコンテンツを作っているので中身は安心してほしいですね。専門部署で監視していますし、コンテンツへのコメントもすべて返信しています。ユーザーの反応は、良いものも悪いものもとらえたいからです。
【小林】 各社の取り組みがよくわかりました。ありがとうございました。
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各社とも、動画広告という新しいコミュニケーションスタイルに対して、前向きかつ協力的に取り組んでくれることを、パートナーや広告主に期待していることがわかった。将来的な活用については、C Channelはオンラインだけでなく、店舗などリアルな場でのコミュニケーションを、Twitterはライブ配信などリアルタイム性を活かした活用を、TikTokは技術を活用した新機能を武器に、各社とも戦略的に考えていることがうかがえた。
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