「企業SNSのためのKPI設定フレームワーク Ver.1.0」を提唱 ~ ソーシャルメディア委員会が実務担当者の声をもとに、 企業SNS運営の課題解決に向けた議論のベースモデルを発案 ~
- 掲載日:2022年9月6日(火)
- 委員会・ワーキンググループ:ソーシャルメディア委員会
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構(所在地:東京都中央区銀座 代表幹事:中村 俊之、以下DMI)は、企業SNS運営の課題解決に向けた議論をするためのモデルとして「企業SNSのためのKPI設定フレームワーク Ver.1.0」を提唱します。
企業SNSの運営の実務担当者には様々な課題や苦労があります。SNS運営に関する議論が深化することを期待して、このフレームワークを提唱することとなりました。
このフレームワークは企業SNS運営の実務担当者(いわゆる「中の人」)が集い、課題意識や事例、知見を共有することで、企業とソーシャルメディアのよりよい関係を作るための研究活動を行っているソーシャルメディア委員会の発案により制作されました。
2022年2月に企業のSNS担当者向けに実施した「企業のソーシャルメディア運営に関するアンケート」の回答を分析した結果、企業SNS担当者は「KPI設定/分析」「コンテンツ企画」「運営方針」などに課題を感じていることがわかりました。アンケートでのコメントにも「何をKPI/KGIとすればよいのか、現在設定しているKPI/KGIが正しいのかがわからない」(IT関連企業)、「SNSらしさを活かして運用していますが、販促や認知向上への貢献が測れないのでなかなか大きい施策まで乗り込めない」(金融関連企業)といった声が寄せられました。
この結果を踏まえて、ソーシャルメディア委員会では課題解決のための議論を行ってきました。今回、企業SNS運営に関わるマーケターも広く巻き込んで、ソーシャルメディア委員会の中に留めずに議論を行うために「企業SNSのためのKPI設定フレームワーク Ver.1.0」を制作しました。
トリプルメディア(※)の中でアーンドメディアと位置づけられることが多いSNSですが、ソーシャルメディア委員会としては企業が運営するSNSではオウンドメディアやペイドメディアとしての側面もあると考えています。オウンドメディアやペイドメディアとしての要素が強い企業SNSの運営においては、「商材の特性」と「UGC(User Generated Contents、SNS上のクチコミなどを指す)の量」がSNS運営の戦略を分けると考えられます。「企業SNSのためのKPI設定フレームワーク Ver.1.0」では、以下の画像のように、4つの類型を提示しています。
※DMIが2009年に提唱したトリプルメディアの定義は下記の通り。
【トリプルメディア】
ペイドメディア(Paid Media)
“買う”メディアのこと。企業が広告費を払って広告を掲載する従来型のメディアを指す。
オウンドメディア(Owned Media)
“所有”するメディアのこと。自社コーポレイトサイトやブランドサイトなど、企業が直接所有するメディアを指す。
アーンドメディア(Earned Media)
“得る”メディアのこと。信用や評判を得るメディア、SNSやブログ、Twitter等といったソーシャルサイト等を指す。
① (低関与商材かつUGC量が多い):マスプロモーション戦略
主に消費財(シャンプー、洗剤 etc.)や外食、飲料のように検討期間が短く購買頻度が高い、SNSでのクチコミ量も見込める商材においては、キャンペーンやSNS広告等の展開から売上への相関関係を計測し、費用対効果やマーケティング投資の回収という視点でのKPIを設定することができます。その一方で、エージェンシー(広告代理店)等SNS運営のプロフェッショナルが運営に参画し、マーケティング活動の中で明確に宣伝予算が割り振られるため、SNSという本来はユーザーが主体となる場において一方的な宣伝活動を行いがちになってしまうという課題があります。
※ここで言うマスプロモーションは、リーチ重視のフロー型(キャンペーン型)広告やコミュニケーションを指しています。
②(低関与商材かつUGC量が少ない):無形商材のコンテンツマーケティング戦略
主にアプリやSaaS形式で提供されるソフトウェア等、無形商材で、検討期間は短いものの、顧客の維持(リテンション)が重要な指標となる商材においては、ターゲットとなる顧客へ絞り込んだSNS広告を展開し、Webへの流入数や登録/ダウンロード数などをKPIとして設定することが望ましいと考えられます。①との違いとしては、商材のターゲット顧客がある程度限られるため、広告展開に関する予算や規模感は小さく、大きな予算は消化ができないという特徴があります。また、既存顧客のリテンションを高めるためのサポートや、有益なコンテンツの提供などをSNS運営に取り入れていく必要があるため、デジタルマーケティング活動全体との連携がきわめて重要になります。
③(高関与商材かつUGC量が少ない):コーポレートコミュニケーション戦略
金融商品やB2BのITソリューションといった検討期間が長く、購買頻度も低い無形商材は、①や②のような戦略だけでは成果をあげることが困難で、間違った戦略を取ることでリソースを無駄にしてしまうというリスクがあります。この類型における戦略で重要なことは、時間をかけてブランド価値を高めていくコーポレート・コミュニケーションとしての側面が強いということを経営者やSNS運営担当の上司が理解することです。
SNSの投稿にユーザーからの反応を得る、フォロワー数を獲得するといった地道な活動を通じて、SNSアカウントの発信力を高めることで、ターゲット顧客や自社社員との接点を生み出し、ブランド価値を高め、購買意向を高める連鎖反応を起こすことが理想像の一例です。理想に近づくためには、日々のオーガニック投稿のみならず、エンゲージメントを獲得しやすい投稿への広告投資や、思い切ったキャンペーンの企画などにリソースを割く覚悟が必要となります。ここではスキルのある実務担当者に活躍してもらうためのマネジメントの支援が欠かせません。
④(高関与商材かつUGC量が多い):クチコミが主導するソーシャル・リスニング戦略
パソコンや携帯電話といった検討期間が長く購買頻度も低いが、クチコミ(UGC)が発生しやすく、購入の判断にも影響を与える耐久消費財に関しては、発想の逆転が必要です。このような耐久消費財はマスプロモーションへの投資が大きく、SNS運営もマス向けのキャンペーン等で連携をするため一見すると①の類型に近い世界に思えます。しかし、重要なのは自社の発信はさておき、発生しているクチコミを分析し、キャンペーンの効果検証や、企画等に活かしていくというソーシャル・リスニングの取り組みです。ユーザーがどのように自社や他社について認識しているのか、どのような課題を持っているのかといった貴重なデータをSNS上のクチコミから得ることができるという側面に着目することでマーケティング活動に新たな顧客の声を取り入れることができるでしょう。
DMI ソーシャルメディア委員会では、今後もSNSにおける企業コミュニケーションの「質」向上を目指して議論をしてまいります。今回提唱する「企業SNSのためのKPI設定フレームワーク Ver.1.0」をより実用に資するものとしていくためにも、DMI自身のSNS運営の見直しや、事例の研究等を行ってまいりますので、ご興味をお持ちいただけましたらソーシャルメディア委員会にぜひご参加ください。
デジタルマーケティング研究機構について
日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構(Digital Marketing Institute)は、1999 年 4 月 1 日、社団法人日本広告主協会(現:日本アドバタイザーズ協会)ディジタルメディア委員会内の研究会を母体として発足しました(発足時名称:Web 広告研究会)。業界の枠を超えて Web 広告・マーケティングに取り組む全てのプレイヤーによる研究活動を行う場として、インターネット上の広告展開における様々な課題について、広告主と関連企業・団体(広告会社、メディアレップ、媒体社、調査会社、システム提供会社など)が共通の場で研究活動を行うことにより、インターネット上の広告の健全な発展を促進することを目的としています。
●会員社 340 社(2022 年 8 月 31 日現在)
●代表幹事 中村 俊之(株式会社ポーラ)
●所在地 〒104-0061 東京都中央区銀座 3-10-7 ヒューリック銀座 3 丁目ビル8階
●Web https://dmi.jaa.or.jp/
この件に関するお問合せ
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構
E-mail:info@dmi.jaa.or.jp