I.C.E. U35プロジェクトイベント「クリエイティブアワード U35 C&CA 最優秀チームが語る『企画の裏話』 」を開催しました! イベント報告
- 掲載日:2024年10月24日(木)
- 委員会・ワーキンググループ:U35プロジェクト
『U35 Creative & Communication Award 2024(以下 U35 C&CA)』の応募開始(受付期間:2024年9月5日(木)〜10月15日(火))を目前に控えた8月27日(火)にU35 C&CA 2023の最優秀チームとU35 C&CA事務局によるトークセッションを開催しました。
※ 2024年度の募集は終了しました。
※『U35 Creative & Communication Award』は、さまざまな企画の仕事に携わる35歳以下のビジネスパーソンを対象に、挑戦と経験の機会を提供することを目的として開催する、クリエイティブアワードです。協力企業様より実際の事業に即した具体的な課題をご提示いただき、応募者は企画書形式でエントリー、コミュニケーション課題を解決するアイデアとクリエイティブを競います。詳細は特設ページよりご確認ください。
https://i-c-e.jp/news/archives/469
登壇メンバー
U35 C&CA 2023 最優秀チーム
株式会社パズル 高井佑輔/ディレクター・プロデューサー
株式会社パズル 中村はづき/デザイナー
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構(以下、DMI)
ソニー株式会社 工藤康平
株式会社リクルート 笹瀬園子
一般社団法人 Interactive Communication Experts(以下、I.C.E. / 呼称:アイス)
株式会社ワンパク 山地夏菜子(モデレーター)
昨年の最優秀企画:寝るだけで、自分の絵が美術館に並ぶ!?「SLEEP ART MUSEUM」
昨年は株式会社ブレインスリープ様より、睡眠研究から生まれたコイン型の睡眠計測デバイスとアプリであるブレインスリープ コイン(デバイス・アプリ)を使いたくなるプロモーションを実施し、デバイスの購入数・アプリのインストール数が増えることを目的に企画を募集しました。
こちらの課題で最優秀賞を受賞したパズルの高井さんと中村さんの企画は、” ブレインスリープ コインで睡眠データを詳細に取得し、その日見た夢の内容をAIの画像生成機能と組み合わせることで絵画をつくることができる” という企画でした。
昨年のU35 C&CAレポート
https://i-c-e.jp/activity/report/archives/458
トークセッションのハイライト
どういったプロセスで企画が出来上がったのか?
山地氏(I.C.E.):まずはこの企画がどのようなプロセスで生まれたのか、企画の起点となったのはなにか教えてください。
中村氏(パズル):企画を考え出す上で、まずは雑談レベルでブレストをして、自分たちはあまり睡眠を取らないよね、休日に寝溜めするタイプだよね、などの意見交換を行いました。
高井氏(パズル):課題で提示されていたターゲットは層が広めに設定されていたので、自分たちは30代のビジネスパーソンにターゲットを絞りました。その中で、自分たち自身も不規則な生活をしていて睡眠をとれていないことから、「ソーシャルジェットラグ」(平日に十分な睡眠を取らず、休日に寝溜めすることによる時差ぼけのような状態)に最初は着目しました。
笹瀬氏(DMI):ターゲットはどのような経緯で30代に絞ったのですか?
高井氏(パズル):30代は仕事も頑張り時だと思いますし、ブレインスリープ コインについて調べてみるとコインをお子さんに着けて使用している方も居て、家族が増えたりする年齢層でもあるのでこのターゲットに決めました。
山地氏(I.C.E.):企画を考えるプロセスで色々な案が出てまとまらないこともあると思いますが、本企画ではどのようにして考えをまとめていったのですか?
中村氏(パズル):「SLEEP ART MUSEUM」に関してはブレストした時の案は使われなかったですね(笑)
高井氏(パズル):実際に1週間アプリを使ってみたのですが、1週間でも習慣化させることができませんでした。「どこが課題なんだろう」と考えた時に、「コインのつけ忘れ、アプリを開くのを忘れてしまう」といった課題が出てきて。そこに着目して企画を考え始めたのは提出締切の前日だったのですが(笑)、そこからアプリを開きたくなるような仕掛けを考えようと思い、企画をまとめていきました。
2023年度の審査のポイントについて
山地氏(I.C.E.):アワードに応募していただいた企画には、審査員からひとつひとつにコメントをお返ししています。昨年審査員をしていた工藤さん、笹瀬さんは、パズルさんの企画にどのような印象を受けましたか?
工藤氏(DMI):パズルさんの企画はまず目に止まりました。事業会社で広告・宣伝の仕事をする中で、自分にはまだ企画の採否を決める裁量がないので、ご提案の内容を自分のものにして上司や他部署に提案しなくてはなりません。そういった自分の目的に叶う企画であるかという点と、そしてシンプルに実現可能性も審査のポイントになってきます。「夢」に着眼点をおいているのはパズルさんだけだったので、ビビッときました。
笹瀬氏(DMI):私には、全体の整合性と企画の独自性がすごく響きました。整合性というのは、①「コインを使ってより精度の高い睡眠計測をしてほしい」というクライアントの課題、② 睡眠アプリの選択肢がたくさんあり習慣化にもハードルを感じているユーザーの課題、③ コインを使うことで精度の高い睡眠データが蓄積されるというプロダクトの価値、という3つ考慮すべき点がある中で、そのベン図の中心に「夢」と「AI」という独創的なアイデアがあるのがとても秀逸でおもしろいと思いました。ターゲットが30代というところに対してAI技術を取り込んだのも、整合性がとれていると思いました。
工藤氏(DMI):「夢」というキーワードはどのようにして出てきたのですか?
高井氏(パズル):どういう時に寝れないかをブレストしてた時に、「ワクワクする時って寝れないよね」という話が出てきたりもして、どうしたら睡眠を取りたくなるかを考え始め「寝る楽しみ」と「睡眠データ」とを掛け合わせた企画ができないかと思い、「夢」というキーワードが出てきました。
山地氏(I.C.E.):U35 C&CAではいくつでも企画を提出することができます。今回パズルさんからは、「SLEEP WELL」という企画もご提案いただいていました。
高井氏(パズル):この企画では、家族と離れて暮らしていたり、忙しかったりすると「おはよう」「おやすみ」のコミュニケーションも取りづらくなるという仮説をもとに、家族間での朝と夜のコミュニケーションのためのツールを考えました。寝る時間、起きる時間が家族間で共有されるので、互いに健康状態もチェックすることができます。
笹瀬氏(DMI):睡眠に対するハードルがある中で、モチベーションを促すような着眼点はすごく良いというフィードバックが出ました。一方で、家族を巻き込まないと利用につなげられない点はハードルを感じました。とはいえ、企画の段階でこのレベルのクリエイティブを作ってきてくれたのはすごいと思います。
工藤氏(DMI):スケーラビリティという点でいうと、夢の企画の方がオープンで余白があり、伸びていくイメージを持つことができました。
伝わる企画書づくりのポイントは?
山地氏(I.C.E.):企画の内容だけでなく、企画書自体もとても見やすく、ビジュアルも素敵でした。アワードの企画書は10枚以内という規定にしていますが、作っていく上で気にかけたポイントや、高井さんと中村さんの役割分担を教えてください。
中村氏(パズル):企画書を作る上では、メリハリをつけることを大切にしています。企画書には説明フェーズとアイデアフェーズがあると思っているのですが、説明フェーズでは文字量が多く単調になりがちなので、アイコンをつけたり、一番伝えたい言葉は大きく印象に残るように。アイデアフェーズでは企画書を見る人にワクワクして欲しいので、華やかにするようにしています。華やかにすると言っても気を衒ったものを作るのではなく、誰もがイメージでき、伝えたいことがきちんと読み手に伝わるようなデザインを心がけています。
笹瀬氏(DMI):「夢」のイメージ画像を資料に入れてくださったことで、どういう画像が生成されるのか具体的にイメージすることができたのもとてもよかったです。私たちが魅了されるということは、ユーザーにも魅力を感じてもらえるだろうと思いました。
高井氏(パズル):企画書に入れている画像も、実際に自分が見た夢をもとにAIで生成したものです。
笹瀬氏(DMI):プレゼン時にもそのお話をしてくれましたよね。実際にできそうだな、と具体的にイメージすることができたポイントでした。
●最終プレゼン時に意識したことは?
山地氏(I.C.E.):U35 C&CAは最初に書類審査があり、通過した5組の方々に会場に来ていただいてプレゼンをしていただいています。プレゼンの際に意識したことや、事前に準備したことはありますか?
高井氏(パズル):頭に残るフレーズを企画書に散りばめて、強調して話すようにしています。また、あまり難しい言葉を使わず、自分の中で噛み砕いて、自分でもきちんと分かりやすく理解できる言葉で話すように心がけています。そのように意識することで、企画書も自然とわかりやすいものに仕上がっていきます。
笹瀬氏(DMI):昨年のパズルさんのプレゼンからはすごく自信を感じました。ご自身の言葉で話してくださった結果、こちらの記憶にも残ったのだと思います。
山地氏(I.C.E.):U35 C&CAに参加いただいている若手のメンバーという点も踏まえると、普段の仕事では、自分で考えた企画を自分でプレゼンするという機会はなかなかないかもしれませんね。
高井氏(パズル):私は新卒で入社して4〜5年目くらいから提案の場に立たせてもらえるようになったのですが、1年目の時からずっと企画・プレゼンはやりたいと思っていました。プレゼンを重ねるごとに自分の話し方の癖などが見えてくるので、経験を積めたのは良かったですし、他社の方が作られた企画書は普段なかなか見ることができないので、それを見ることができたのも貴重な機会でした。
また、昨年のプレゼンでは審査員の方々との距離が近かったので、みなさんの目を見てお話しできたのもとても良かったです。
次回のアワード応募者に向けてアドバイス
山地氏(I.C.E.):昨年の良かったところ、反省点なども踏まえて、今年の応募者に向けてアドバイスをお願いします。
中村氏(パズル):アイデアに正解はないので、的外れかもと思っても気軽に投げかけてみればよかったと個人的には反省しています。U35 C&CAでは何案でも提出することができるので、思いつくだけ企画を出してみるというのも良いと思います。
高井氏(パズル):何案も出せるのは、私もこのアワードの良いところだと思っています。普段の業務ではアイデアやクリエイティブ以外にも色々と気にかけることが多く、結果まとまったアウトプットに対して「このクリエイティブ、イケてるかな?」など気にしてしまうこともありますが、U35 C&CAはアイデア勝負で挑むことができました。また審査員の中には実際のクライアントさんも入っているので、きちんと商品と向き合いながら企画を考えることもとても重要だと思います。
昨年の受賞者のお二人からお話を聞くことで、企画の裏側を知ることができとても貴重なイベントとなりました。
今年のU35 Creative & Communication Awardの受付期間は2024年9月5日(木)〜10月15日(火)です。皆さまのご応募をお待ちしております!
写真提供・撮影/I.C.E. U35プロジェクト
取材・文/I.C.E. U35プロジェクト