Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2010年6月22日開催 Web広告研究会6月月例セミナーレポート(2) 「Social Mediaガイドライン」 ビジネスやローカルな事情も踏まえてガイドラインを策定する イベント報告

  • 掲載日:2010年7月29日(木)
  • 委員会・ワーキンググループ:ソーシャルメディア委員会

(前ページ)2010年6月22日月例セミナー第一部・二部

第三部「Social Mediaガイドライン」
ビジネスやローカルな事情も踏まえてガイドラインを策定する



マイクロソフト株式会社
セントラルマーケティング本部
デジタル マーケティング&アナリティクス グループ
オンライン マーケティング マネージャー
熊村 剛輔氏

第三部では、マイクロソフトの考えるSocial Mediaガイドラインについての説明が行われた。マイクロソフトでは、「デジタルマーケティングイニシアティブ」という概念があり、その概念をまとめたDCOE(Digital Centers of Excellence)というフレームワークが作られている。「Online Ad」「E-Mail」「Search」「Campaign Site」というDCOEの4つのガイダンスに加えて5つ目の柱として加えられたのが、ソーシャルメディアでマーケティングを行うためのガイダンス「SMCOE」(Social Media Centers of Excellence)だ。約束事が細かく決められたガイドラインというよりは、ハンドブックに近いものだと熊村氏は説明した。




マイクロソフトが掲げるDCOEとSMCOE

SMCOEでは、ソーシャルメディア戦略に対して4つの柱がある。戦略立案のHow Toから行動規定までを網羅した「SMCOEハンドブック」をもとに全社的な「トレーニング・セミナー」を行い、定期的なモニタリングと情報共有を行う「Social Media Listening」を経て、「Pilot Project」を作っていき、その結果や時代の変化を「SMCOEハンドブック」に反映していくという流れをサイクルで回している。

SMCOEでは、20%が「知る」という部分で、70%が「攻める」、残り10%が「守る」の3つのパートで構成されていると熊村氏は説明した。世間で言われているソーシャルメディアポリシーやガイドラインといったものは、ソーシャルメディア参加の行動規定を示した「守る」の部分だが、それはマイクロソフトではほんの一部でしかなく、実際に活用する部分の「攻める」を重要視している。現在、企業が関わらなくても、ソーシャルメディア上で製品やサービスは語られており、参加しないにしても、ソーシャルメディア内で語られることに対してどう向き合うかは考えなければならない。


ソーシャルメディアポリシーにあたる「守る」が占める割合は10%

SMCOEの最初のパートは、「ソーシャルメディアを効果的に活用すれば強力な武器となるが、企業として活用するにはリスクがある」事実を「知る」必要があるということを示している。リスクを最小化するためには、社員および関係者の知識を向上し、知識レベルを均一化していくことが重要となる。

次に最も重きを置く実践のためのガイドラインとなる「攻める」は、「プランニング」「予算」「実装」「効果測定」「最適化」の5つのパートに分かれている。最も重要なものがプランニングで、「攻める」全体の7割を占めるものとなる。問題点と課題を抽出し、その問題に対して5W1Hを明確にし、そのうえで基本戦略をPOST(People、Objectives、Strategy、Technology)プロセスを踏まえて策定することが重要だ。

プランニングでは、「ソーシャルメディアをマーケティングに活用するかどうか」が最も重要である。Twitterなどのプラットフォームのアカウントを取ってから考えるのではなく、マーケティング施策のゴールに対してソーシャルメディアを使うことにメリットがあるのかどうかを考えることが先で、どのようなプラットフォームを使うかはその後に出てくることだと熊村氏は説明した。

これらの施策を行ったうえで、行動規定である「守る」が定められていく。SMCOEでは、細則ではなく10項目の原則でこの部分を規定しているが、これは「細則で縛ると無理が出てくるため」だと熊村氏は話した。細則をいくら細かく規定しても限界があり、辞書1冊分書いても網羅しきれない。それよりもコミュニケーションの原点に立ち返って、原則で定義していくことがマイクロソフトの方針となっているのだ。

続いて熊村氏は、なぜマイクロソフトでSMCOEが作られたのかについて話を進め、他の失敗例から「間違った認識を持つと失敗する」ということは理解していたと話し、全社的にソーシャルメディアマーケティングを定義し、方法論を策定することが重要だと考えたのだと説明した。さらに、マイクロソフトでは、ソーシャルメディアマーケティングはマスメディアと対立するものではなく、これまでのアプローチに対してどうやって絡めていくかを重要視し、幅広い使い方に対して包括的な規定や方法論を整備していったことを熊村氏は明かしていった。また、米国と日本ではFacebook内のコミュニケーションのしかたが違うように、日本ローカルのものを作らなければならないとも考えたようだ。

ソーシャルメディアマーケティングを行うために最も重要なのは、内部調整とパートナー選びだ。専門のチームを作れれば理想的で、米国のマイクロソフトには専門チームがあるが、日本の場合は各部門から成るタスクフォースを作ったことで小回りの効く組織となったと熊村氏は説明した。その後の啓発を想定してトレーニング専門の部門もタスクフォースに加えたことも重要で、関係する部門を連携させることが重要だと話した。また、客観的な視点や評価を取り入れるために、エージェンシーと協力することも重要だ。理想的なエージェンシーとは、特定のツールやプラットフォームに長けているタイプではなく、オールラウンドにソーシャルメディアを活用できるエージェンシーであり、何よりもその担当者自身がソーシャルメディアを十分に活用している必要がある。ただし、最後の「守る」の部分は、社内だけで策定したという熊村氏は、ビジネスの進め方でルールは変わるため自分たちのルールは自身で作ることが重要だと説明した。

また、熊村氏はソーシャルメディアガイドラインを策定するうえで、情報を受発信する部門とは密な連携を行うこと、「啓発」は重要だが「煽る」は別物で禁物ということ、「規制」が重要なのではなく「実践」が重要である(規制しすぎると何もできなくなる)ことなど、7つの項目に注意してガイドラインを作ったことを話した。



ガイドライン策定で強く意識した7項目


最後に熊村氏は、ソーシャルメディアの推進役となる人に向けて、まずソーシャルメディアを使い倒したうえでソーシャルメディアを客観的に語り、マーケッターに夢ではなく目標を持たせることが重要だと話した。また、関係部署数に組織階層数を掛けただけの調整は覚悟しなければならず、「長期間の作業となるが、高いモチベーションを維持し、コミュニケーションを決してあきらめないようにすれば、企業としてソーシャルメディアに向き合うためのヒントが出てくるはず」と、熊村氏も構想から実現までに3年を要したことを話し、それらの調整を成功させるためには社内に仲間を数多く作ることが大切だと伝え、講演を終了した。