2011年7月26日開催 Web広告研究会セミナーレポート メディア定点調査2011から生活者の今を読み解く 事例から見るソーシャルメディアへの取り組み方とサイト統合のコツ(1) イベント報告
- 掲載日:2011年8月31日(水)
【2011年度 第5回月例セミナーレポート 第一部】
メディア定点調査2011から生活者の今を読み解く
事例から見るソーシャルメディアへの取り組み方とサイト統合のコツ
Web広告研究会の7月月例セミナーが7月26日に開催された。第一部では、毎年恒例となった博報堂DYメディアパートナーズによる「メディア定点調査」が発表され、第二部では、デルのコンシューマ向けオンラインマーケティングでソーシャルメディアがどのように活用されているかが発表された。第三部では「サイトあらびき団(β)」として、会社統合にともなうサイト全面リニューアルを行ったJX日鉱日石エネルギーの発表もあり、多くの実践的な情報を得られる充実したセミナーとなった。
スマートフォンの急激な普及で
生活者のメディア接触はどう変化したか
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
メディア研究所
所長
吉田 弘氏
最初に登壇した株式会社博報堂DYメディアパートナーズメディア 環境研究所 所長の吉田弘氏は、「生活者のメディア接触のイマ =メディア定点調査2011より=」と題した講演を行った。メディア定点調査は、2011年で7年目となる博報堂DYメディアパートナーズが毎年行う調査だ。生活者の接触実態を把握して、広告メディア市場動向の「兆し」を発見することを目的にし、48種類のハードウェアやサービスを、東京、大阪、愛知、高知の4地区で比較している。
今回の調査は、震災前の2月4日から17日に行われており、例年通り時系列で調査できたのではないかとしたうえで、吉田氏はその中からメディア接触時間、メディアイメージ、メディアサービス浸透度、その他項目の4つについて発表を行った。
まず、各地区のメディア接触時間を比べると、東京はPCからのインターネット接続が多く、地方ほどPCが減ってテレビが増えてくるという。大阪は若干テレビ好きという傾向があり、これらは毎年同じような傾向となっている。また、高知や愛知など、車の利用が多い地域はラジオが多く、「東京に比べて地方はPCからのインターネット接続は少なくなるが、携帯電話からのインターネット接続の時間にはそれほど差がないというのがここ何年かの傾向だ」と吉田氏は解説した。メディア総接触時間は約350分で、1日の4分の1は何らかのメディアに接触している。
東京地区のデータを2007年から時系列に比較すると、2007年に比べて2011年は携帯電話からのインターネット接触時間が倍に増えており、PCを含めてインターネット接続時間が増えてきていることがわかる。また、吉田氏は「マスメディアの接触時間が減っていると一般的に言われているが、マスが減っているというよりも相対的にインターネット接続時間が増えている」と話した。
性年齢別比較では、20代男性でPCからのインターネット接続がテレビを超えていること、10代女性の携帯からのインターネット接続時間が88.2分もあることが顕著な例として示された。また、以前は携帯電話からのインターネット接続は10~20代が多く、30代以降は大きく減っている傾向にあったが、今年は30代男女も携帯電話からのインターネット接続が広がっている。これについては、「スマートフォンの普及が影響しているのではないか」と吉田氏は話した。
メディア接触時間・性年齢別比較<東京地区>
携帯電話のメディアイメージが向上
メディア定点調査では、各メディアに対するイメージを22項目用意し、どのようなイメージを持っているかという調査も毎年行っている。これまでの調査では、年ごとの変化がなく同じような結果であったため、Web広告研究会では深く言及してこなかったが、今年はその傾向に変化が見られるという。
最も大きく変化したのは、携帯電話に対して、「情報が早くて新しい」「時代を切り開いていく」「自分にとってなくてはならない」など、複数のイメージ項目を選択する人が大幅に増えていることだ。これについて吉田氏は、「これまで携帯電話は『メディア』というイメージをもたれていなかったが、スマートフォンの普及などによって、PC並みにメディアというイメージが付いてきているのではないか」と分析した。
放送メディアサービス、PC(ネット)関連メディアサービス、携帯メディアサービスのそれぞれの利用経験を調査したメディアサービス浸透度の調査結果も発表された。まず、放送メディアサービスに関しては4地区でそれほど差が出ないが、ビデオオンデマンドやテレビを使ったインターネット接続では、地方の利用が若干少なくなっているという。
PC(ネット)関連メディアサービスの利用経験は東京が多く、地域格差が大きい。東京地区の各年の時系列変化では、今年から調査を開始したソーシャルゲームやライブ動画配信などが20%を超えていることや、ネットショッピングが70%を超えていることが特徴的だ。利用経験の年代格差は大きい一方、50代であっても動画投稿サービスの閲覧やネットショッピングの利用率が高いことも傾向として表れているという。
携帯メディアサービスでも東京の普及率が高いが、PCほどの地域格差はない。また、時系列で見ていくと、すでに打ち止めとなりつつあるサービスもあれば、ライブ動画配信や今年初めて調査して利用経験が23%となったソーシャルゲームなど、今後の伸びが期待できるサービスが見えてくるという。ただし、携帯メディアサービスの性年齢格差はPCよりも大きい。たとえば、女性のSNSへの書き込みや携帯コミックなどは10~20代が60%前後なのに対し、60代はほぼ0%という結果となっている。
携帯(ネット)メディアサービス利用経験 時系列変化<東京地区>
スマートフォンは男性ビジネスマンを中心に普及
今後は10代女性の活用に注目
その他項目としては、まずスマートフォンの所有状況が発表され、東京が他の地域に比べて最も普及していることが示された。2011年2月の調査段階で昨年の倍近くまで利用者が増えているが、春以降、各社が多くのAndroid端末をリリースしているため、これからさらに増えていくことも予想されるという。性年齢別の所有では、男性の20~30代が多く、40~50代も比較的多いことから、ビジネスマンが普及を牽引していることがわかる。吉田氏は、「携帯電話を牽引してきた10代女性への普及はこれからで、どのような使い方をするのかが楽しみだ」と話した。
スマートフォン所有状況 性年齢別<東京地区>
Twitterの利用頻度についても東京が多く、スマートフォンと同様に都市型のメディアだと言える。また、新しいコミュニケーションサービスは女性が牽引するものだが、20代男性の利用が多く、女性と比較して男性のほうが多い傾向にあるのも特徴だという。
さらに、radikoについても調査を行っており、ラジオの主要聴取年齢層である40~50代よりも20~30代が多くなっていることから、radikoは若い世代にラジオが受け入れられるキッカケとして期待できると吉田氏は分析した。
まとめとして吉田氏は、「PC・携帯の接触時間や新しいメディアサービスの利用経験は、急速に拡大している。ただし、皆があまねく接触するメディアは必ずしも多くない。スマートフォンは着々と浸透し、今後メディアとしてパワーアップする兆しがある。また、メディア総接触時間の350分は上限で、これ以上増えるのは難しく、今後は各メディア間でのパイの奪い合いが顕著となるのではないか」と話した。
最後に吉田氏は、iPhoneを利用している東京の30代女性会社員と高知に住む女子高生に密着してメディア接触の状況を取材したビデオを公開。それぞれテレビ視聴やモバイル機器の活用法が異なり、来場者には、実際にこれらの層がどのようにメディアと接触しているのかを知るよい機会となった。
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