Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2011年7月26日開催 Web広告研究会セミナーレポート サイト統合によるリニューアルの結果アクセシビリティの向上に成功(3) イベント報告

  • 掲載日:2011年8月31日(水)

【2011年度 第5回月例セミナーレポート 第三部】


サイト統合によるリニューアルの結果
アクセシビリティの向上に成功

JX日鉱日石エネルギー株式会社中村 章夫氏 
JX日鉱日石エネルギー株式会社
広報部
ウェブコミュニケーショングループ
中村 章夫氏

第三部では、第3回「サイトあらびき団(β)」としてJX日鉱日石エネルギー株式会社 広報部 ウェブコミュニケーショングループの中村章夫氏が登壇し、2010年の新日本石油と新日鉱HDの会社統合にともなうサイト全面リニューアルを経て、企業サイトユーザービリティ評価1位を得たことについて解説が行われた。

2008年12月に両社の経営統合は発表されたが、その時点では両社の接触は禁止されており、接触が解禁されたのは2009年10月の経営統合の契約締結からだという。その後、2010年1月から制作を開始し、2010年4月1日にJXホールディングスのウェブサイトを公開し、7月1日にJX日鉱日石エネルギーのウェブサイトを公開したのが現在までの経緯だ。

具体的には、2010年2月から3月末にグループ会社全体のウェブサイトを共通化し、2010年4月初旬から6月末にコンテンツ所管部にサイト統合の協力を依頼して、極力サイト更新を控えてもらうようにしたという。コンテンツ所管部が行う修正は旧社名を新社名に変えることが主であったが、「一括変換する方法もあったが、旧社名のまま記載したほうがふさわしいコンテンツもあるため手作業とした。更新を控えてもらったのは、差分管理が大変なため」と中村氏は説明した。また、2010年5月には、JXやENEOSブランドのガイドラインを確定。6月21日にティザーサイトを公開してSEOを行い、公開前日の6月30日にはトップページ以外のウェブサイトを本番公開して、当日のリスクを軽減するようにしている。

要件整理では、グループ全体のサイトに統一感を持たせることやユーザーが知りたい情報を提示できることが目的とされ、目標には訪問者数とページビュー数の増加や、各種外部調査での業界上位ランキング獲得が設定された。また、低コスト・低リスクでのサイト制作を目指してCMSを統一し、各社のコンテンツは最大公約数で残すことなどが前提条件とされている。

両社サイトの現状分析を基にサイト設計を行ったJX日鉱日石エネルギーだが、結果的には旧新日本石油のサイト構成をベースに作業が行われたという。これについて中村氏は、「期間が短かったこともあり、規模が大きなサイトに合わせて、もう一方を埋めていく形ならば手間がかからないと判断した」と説明した。

また、サイト設計ではアクセシビリティを重視し、JIS X8341への対応が考えられた。「JIS X8341はレベルAからAAAまであるが、最低でもレベルAはクリアし、できるところまでレベルを上げていった」と中村氏は話した。サイト構成やトップページデザインなどの統一も行い、トップページ左上には必ずJXロゴと社名を入れるようにし、ユーザーニーズが高い人気コンテンツはトップからすぐにアクセスできる場所にリンクを置くなど、ブランドの統一とユーザビリティの向上を図った。後述する外部調査によるアクセスビリティ調査では、「トップページのカテゴリからどのようなコンテンツがあるかがわかりやすいという評価を受けた」と中村氏は説明した。また、「サイトマップ」「よくあるご質問」「お問い合わせ」などはヘッダーに配置してどのページからもアクセス可能にした。

第2階層では、さまざまな検討を行ったが、扉ページとなることを意識し、左側のナビゲーションを排除している。その結果、ページによってはカテゴリの下に大きな空白ができてしまう場合が出てきたが、ニーズが高い人気コンテンツへのリンクを「おすすめコンテンツ」として置くことにしたという。中村氏は、「各部署からコンテンツを前面に出してほしいという要望があるが、これらをすべて受け入れると設計がわかりづらくなってしまうため、設計とは別にし、見せ方で要望に応えるようにした」と説明する。

会社統合の場合は、重複するコンテンツを統合していく必要があり、JX日鉱日石エネルギーでも二者択一を行ってきたが、その中でも両社にあったサービスステーション検索は、コスト削減を目指してASPサービスを使い、1つのコンテンツに統合したという。また、クリエイティブを重視するスペシャルコンテンツについても、独自のルールとガイドラインを作って対応している。

JX日鉱日石エネルギーは、サイトリニューアルの目標として日経の企業サイトランキングの上位を目指していたが、2010年度は評価実施が見送りとなっていたという。しかし、トライベック社の「Webユーザビリティランキング 2010 企業編」(http://www.tribeck.jp/usability/ranking/2010/)で1位を獲得することができたと中村氏は話した。

今後の課題について中村氏は、「いくつかやり残したことがある」と話を続ける。同社は、野球部と女子バスケットボール部を運営しているが、企業スポーツにおけるブランドイメージを統一し、JXおよびENEOSのブランド訴求を行うことが課題であるとしている。また、モバイルサイトの統合も課題の1つで、2008年公開のサイトを現在のトレンドに沿ったものへ、全面リニューアルを検討中とのことだ。

最後に、中村氏は2011年7月13日にスマートフォン専用サイトを公開したことを話し、「公式アプリである『ENEOSなび』でENEOSのガソリンスタンドを検索できるので利用してほしい」と伝え、講演を終えた。

講演後は、質疑応答が行われ、サイトの来訪者の傾向や「おすすめコンテンツ」の効果などについての質問が来場者から出てきた。「サイトあらびき団(β)」は、実際にWeb制作に苦労した担当者の生の声が聞けて、質疑応答で直接疑問点をぶつけられるため好評を得ており、第4回以降も活発な議論の場として期待される。