「広告主がホンネで語るソーシャルメディアツール活用の現場、ユニリーバ/コニカミノルタ/サントリーが公開」2013年4月23日開催 月例セミナーレポート(3) イベント報告
- 掲載日:2013年5月24日(金)
広告主がホンネで語るソーシャルメディアツール活用の現場、ユニリーバ/コニカミノルタ/サントリーが公開
さまざまなソーシャルメディア関連ツールが登場するなかで、広告主はどのような視点でツールを選定し、どのように活用しているのだろうか。Web広告研究会4月月例セミナー第三部では、広告主の視点でツール活用についてパネルディスカッションが行われ、課題や導入経緯、現場での活用例などが語られた。
広告主がホンネで語るツール活用の現場
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社
徳力 基彦氏
ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング株式会社
山縣 亜己氏
コニカミノルタ株式会社
中村 俊之氏
サントリーホールディングス株式会社
坂井 康文氏
第三部「広告主はツールをどう考えているの?」では、アジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦氏をモデレーターに、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの山縣亜己氏、コニカミノルタの中村俊之氏、サントリーホールディングスの坂井康文氏がパネラーとして登壇した。まず徳力氏は、ツールの活用状況について各社にたずねる。
ユニリーバの山縣氏は、グローバル企業であるため、世界共通で利用するツールが決められており、ソーシャルメディアツールも本社が決めたものを日本で導入したという。
コニカミノルタの中村氏は、ソーシャルメディアをコミュニケーション手段として活用するための投稿や分析ツールと、大きなデータベースとして捉え活用するための話題抽出・分析ツールを、それぞれ活用し始めている段階だと話す。
サントリーの坂井氏は、複数のソーシャルメディアのアカウントを運用しているが、ツールについてはまだ研究段階であり、ソーシャルリスニングでリスク管理を行うツールは導入しているが、運用効率化や効果測定でツールを活用してみたいと話した。
今回のパネラーは三者三様で、「本社が選んだツールを利用している」ユニリーバ、「ツール活用を広げようとしている」コニカミノルタ、「ツールの活用を検討中の」サントリーという形になっている。徳力氏に「グローバルなツールだと日本語対応などに問題はないのか」と話を振られた山縣氏は、「特定のツールを活用するように指示されるが、早い段階で導入することが多いため、日本語対応が十分でない場合も多い」と、実際の運用経験を話した。
担当者のニーズに合わせるか、将来の統合も見据えて導入するべきか
続いて徳力氏は、第二部で紹介されたツールを次のように分類し、「今回紹介されたツールは、担当者向けのものが多い気はするが、ツールの価値をどのように感じているか」とパネラーにたずねる
ソーシャルメディアツールの分類
・「comnico Marketing Suite」(コムニコ)
Facebookページに特化した分析ツールで運用担当者側のツール。
・「BUDDY MEDIA」「HootSuite」(cci)
2つともグローバルで有名だが、BUDDY MEDIAはキャンペーン管理で、アカウント管理ツールのHootSuiteはユーザー向けから企業向けへと発展している。キャンペーン担当者や運用担当者向けのツール。
・「Topic Finder for Advertiser」(博報堂DYメディアパートナーズ)
マス広告を出している広告主に特化したフルタイム分析ができるツール。
・「Adobe Marketing Cloud」(アドビ システムズ)
トリプルメディアにも対応した総合マーケティングツール。
・「social gear」(satisfaction guaranteed)
オウンドメディアへのリーチを増やすためのソーシャルメディア活用ツール。
・「Movable Type」「Lekumo」「Zenback」(シックス・アパート)
オウンドメディアを構築するためのツール。
山縣氏は「本社から指示されたすべてのツールが日本語にしっかりと対応していれば非常に便利になるはずだが、一部日本語に対応できていないツールもあるので、全体像をつかむためにフリーのツールを使ったり、アナログで対応しなければならず、かえって作業が増えてしまうのが現状」だと話し、担当者向けに優れたツールが提供されているにもかかわらず、日本語対応が問題になり運用面で手間がかかっていることを明かした。
海外本社に報告するレポート作成のためにツールを活用している同社では、数値や指標を合わせるためにもグローバルで同じツールを使う必要があるため、このような苦労が出てくるようだ。特に、リスニングツールなどは、しっかりとした日本語対応がないと使いづらいという。
「運営を手助けするようなツールはよく使っている」と話す中村氏は、social gearや投稿管理ツールを使っていることに加え、自社でTwitterのモニタリングと解析を組み合わせたシステムを開発していることを明かした。データ取得は特別な仕組みではないが、解析は市販のツールやアウトソースでは取れないデータを取得するために活用しているという。
リスニングツールを先行して導入している坂井氏に対して、徳力氏は「運用管理に問題を感じていないということか」とたずねる。坂井氏は、大きく3つの問題意識があると、次のように話す。
「複数のソーシャルメディアのアカウントがあるため、“ガバナンスも含めた投稿管理と作業効率化”“効果測定を個別または全体のどちらでやるのか”“リスニングをリスク管理または積極的なマーケティングのどちらでやるのか”、と大きく3つの問題意識がある。リスニングを積極的にマーケティングに役立てることは他の部署がやっていて、リスク管理はすでに行っているため、投稿管理と効果測定をどうするかを研究している最中」(坂井氏)
会場の受講者に有料の投稿管理ツール、効果測定ツール、リスニングツールを利用しているかというアンケートをとった徳力氏は、「担当者の運用を支援するツールを導入している企業はまだ少ない。人力でやってしまえばツールのコストはかからないため、ツールを導入するというと上司に渋い顔をされるという話はよく聞く。海外では、人件費をちゃんとコストと考えているので、ツールのコストが人件費よりも低ければ受け入れやすい」と話す。
運用支援ツールの導入に上司の理解を得られたか、という質問に対して、中村氏は「ツールを導入することでさまざまな価値のあるデータが出てくることを理解してもらった。人的コストに対する意識もあったので、運用支援ツールについては目的と作業時間の軽減を伝えて理解を得た」と答えている。
一方、坂井氏は「Facebookは予約投稿ができるが、Twitterはできないので必要に応じて投稿管理ツールを入れる方向で考えている」と話すが、個別にツールを入れてよいのか、統合したいときにどうするかといった漠然とした不安もあることを語った。
坂井氏の話を受け、徳力氏は、「日本ではサントリーのようなケースが多いと思う。担当者がまずやってみて、問題を感じてからツールを検討し、コニカミノルタのように上司の理解を得られればツールを導入する。一方で、海外ではユニリーバがグローバルでまとめてツールを導入しているように、先にツールを用意するケースが多いように感じる」と山縣氏に話を向ける。
それに対して山縣氏は、「日本のように問題意識を持ってから、どのようなツールがあるかを知るのが正しいように感じる。ツールを使うことありきで渡されても機能を把握することに時間がかかるし、日本で使えるように海外ツールの製造元とやり取りするのにも手間がかかる」と話し、グローバル企業では最初からツールが選定されていてよいと思われがちだが、日本語対応の面で非常に苦労する場合があることを明かした。
統合化が進む海外と個別ニーズに応えてきた日本
続いて、議論はツール導入で何が課題となってどう乗り越えたか、という話題に移る。
坂井氏は「リスニングはリスク管理という目的があったのでコストの問題はなく、必要性で導入できた。投稿管理や効果測定の場合は、ツール導入・運用のコストと時間に対してどのような見返りがあるかがシビアに見られると思う」と話す。また坂井氏は、ツール選びに関しても次のように話している。
「まだツール選びの視点が定まっていない状況なので、一概に選べない。企業の状況をヒアリングしてツールの選定をサポートするサービスもあるくらい、企業にとってツール選びは難しいものだと思う。一度選択してしまえば、業務に入り込んで数年使い続けることになるので、金額の大小にかかわらず慎重にならざるを得ない」(坂井氏)
中村氏は、「我々はさまざまなツールを使っているが、断片的に目的に合わせてツールを入れていった結果、システム連携ができていないことが現在の悩み」だと、ツールの統合が課題となってきていることを明かす。これに続けて、徳力氏は第一部の講演を振り返り、「海外では買収と統合が進んでいるので、個別のツールを使うよりも、どのブランドのツール群を選ぶかという選択肢になってきている。日本は担当者のニーズに合わせて進化してきている途上なので、確かに横のつながりは弱い印象はある」と話す。
山縣氏は、日本語対応の課題が大きく、特に日本語に対応していると言われたリスニングツールが日本語の意味をまったく理解していなかったという苦労話を明かしてくれた。そのうえで、日本語対応がしっかりしたリスニングツールを探した経験を次のように話す。
「どのようなツールがあり、使い勝手がどうなのかというのがわからなかった。情報量が少ないので、ネットで検索したり、研究会などに参加して話を聞き、何社かに問い合わせてみるといった地道な作業が必要となる。そうやって選んだツールも、社内での説明会などを行った後に使い勝手の悪さや不具合が見つかり、大変な苦労をしながら新たなツールに変えなければならなくなった。最終的には代理店のコンサルを受けて、どのような企業でどのようにツールが活用されているかを教えてもらい、現在のツールに落ち着いた」(山縣氏)
徳力氏は、「将来のイメージを描いてシステムを導入しないと後で困ることになるが、今のところ将来のイメージもわからず、買収の方向性もよくわからないので、担当者が一番便利なツールを入れてしまっているというのが一番の課題」だとまとめる。
リスニングツールは使い勝手を実感しやすい
次に徳力氏は、「とはいえ、実際にツールを試してみるというのは必要だと思う。これからツールを使ってみようと考えている人に、どの領域から始めるのがよいなど、失敗談や経験談から話せるヒントはあるか」と3人にたずねる。これについては、まず坂井氏が次のように答える。
「リスニングは比較的独立して考えられるので、先に導入してリスク管理したり、マーケティングに利用して社内へのフィードバックが行えると思う。投稿管理と効果測定はひとまとめで考えたいが、ソーシャルに関る社員が増えてきて複数人で投稿するようになっているので、ガバナンスも含めてすぐに導入を進めなければと考えている」(坂井氏)
中村氏も「リスニングは比較的導入しやすい」と話す。ソーシャルリスニングから得られた情報が他部署で価値があることも多いので、積極的に共有して理解を得られれば、導入のしやすさにつながると説明する中村氏は、「ソーシャルメディアを運用しているとさまざまな部署と連携する必要があるので、他の部署の理解を得られることは非常に活きてくる」と話す。また、効果測定ツールについても、導入することで作業負荷が減り、非常に助かっていることを明かした。
各社の話を受けて、徳力氏は次のように話す。
「ソーシャルメディアの担当者は、せっかくさまざまな分析をしているのに自分たちだけで使い、自分たちのコストにしてしまっている。会社によって事情は異なるが、他の部署に情報を回すことによって、コスト負担も分担できるようにするという考え方もおもしろいと思う」(徳力氏)
また山縣氏は、試行錯誤を行いながらツールの活用法を見つけてきたことを、次のように明かした。
「リスニングツールは、少しだけでもやってみれば、どの程度何に使えるかが見えてくる。業界や企業規模、担当者の数などで、ツールの使い方はまったく違ってくると思う。ユニリーバの場合は日用品を扱っているので、製品についての熱い発言が頻繁にソーシャルに書き込まれることは少ない。したがって、我々は中身の情報を分析するよりも、割り切って量などの測定にリスニングツールを使っており、CMの投下量や新商品発売時のバズなどを測るときに活用している」(山縣氏)
三者三様の広告主の立場から、ソーシャルメディアツールの選定や導入、活用の現場などの貴重な経験が明かされた本セミナー。徳力氏は、最後にツール導入の順番とポイントを以下のようにまとめて、パネルディスカッションをまとめた。
・リスニング(傾聴)は、ツールを使った方がやりやすい
・投稿管理ツールは、複数の投稿者となったときにリスク管理の手段として利用開始する
・効果測定ツールは、より深く見るために導入したほうがよいが、投資するかどうかはビジネス上の成果が出ているかどうかによる
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