Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「リアルな体験がブランド愛を育む、ニューバランスとサンリオが実践するブランドロイヤルティ構築」2016年7月26日開催 月例セミナー 第1部 イベント報告

  • 掲載日:2016年10月3日(月)

製品・サービスがコモディティ化し、モノが溢れる現代において自社を選んでもらうためにはどうしたらいいのか。Web広告研究会の7月月例セミナーは、「体験がリアリティを生む ~ブランドロイヤルティを上げるための体験設計とは?~」テーマにニューバランスとサンリオが登壇。ブランド体験を提供する2社の先進的な取り組みが発表された。

体験がブランドロイヤルティに寄与する


株式会社インフォバーン
執行役員
アカウントプランニング部門及びDIGIDAY事業 担当
田中 準也 氏

モデレーターとしてセミナー冒頭に登壇したインフォバーンの田中氏は、体験や経験がマーケティングにどのような効果をもたらすかという考え方が「経験価値マーケティング(EXPERIENTAL MARKETING)」であると説明する。

製品・サービスの機能やデザインが成熟してきている現代では、顧客に「感情」や「感動」を、「体験」や「経験」を通じて提供することが重要になる。そこで提供する体験や経験が、どのようにブランドロイヤルティに寄与するのか、というのが今回のテーマだ。

スポーツブランドとしての認知を高めるニューバランス


株式会社ニューバランス
マーケティング部
ブランドマーケティング マネージャー
山崎 祐仁 氏

続けて登壇したニューバランスの山崎祐仁氏は、同社のブランドマーケティングチームのミッションを、「顧客に対する適切な価値提案によって、認知→信頼→愛着のストーリーづくりを実行する」ことだと話す。

ランニングシューズのイメージが強いニューバランスだが、2013年頃からスポーツブランドとしての認知獲得を加速させており、スポーツブランドのトップ3を目指して活動している。山崎氏は、目標達成のために野球、サッカー、テニス、ゴルフなどの分野で認知を高めることが同社のミッションとなっていると説明する。

また、女性に受け入れられるブランドになることも重要なミッションと考えており、女性向けのプロダクトラインの充実も進めている。そのためには、直営店の出店を進め、ターゲットユーザーにブランドをより深く知ってもらうことも重要だと山崎氏は説明する。

目標はサッカー市場のブランドトップ3

そんななか、ニューバランスが2015年の秋冬から展開しているのが、「ALWAYS IN BETA」というブランドプラットフォームだ。常にBETA(未完成)であるからこそ、成長の機会があり、成長することに前向きな人たちを応援するブランドであることから名付けられた。

ALWAYS IN BETA
http://www.newbalance.co.jp/

実際にALWAYS IN BETAでニューバランスがどのような取り組みをしているのか、山崎氏はサッカーを事例として紹介する。目標は、サッカーのブランド市場においてトップ3に入ることだ。

グローバルでファンや観客が多いサッカーは、ブランドを露出させる機会が多く、選手の活躍によってブランドの信頼感を得やすいことに加え、若い年代にアピールする機会も大きい。ニューバランスは、シューズだけでなくチームウェアなどの提供も行っている。

サッカーブランドのトップ3に入るためのニューバランスの強みは、「FIT(履き心地)」と「CRAFTMANSHIP(モノづくりへのこだわり)」にあると山崎氏は説明する。これらの強みを消費者にアピールし、1人でも多くのプレイヤーにプロダクトを体験してもらうことが重要になる。

リアルな体験でブランドの価値を感じる

ブランドの認知向上のために有名選手やプロチームにプロダクトを使ってもらうことは重要戦略の1つだが、ニューバランスでは、G2G(Ground to Ground)マーケティングも重視していると山崎氏は話す。

G2Gは、リアルな場での体験を通して製品価値やブランド価値を知ってもらうマーケティング活動だ。具体的には、量販店やサッカー専門店の店頭スタッフ向けに試し履きイベントなどを行い、製品の勉強やミニゲームなどを通じて製品価値をスタッフに知ってもらう。店頭スタッフは、G2Gの活動をよりよい接客につなげることができる。

G2G(Ground to Ground)の活動

G2Gの対象は販売店だけではない。2016年には、小中高の各年代の選手育成・強化のためのサッカー大会「ニューバランスカップ」を開催。もう1つの全国高校サッカーとして、メディアからも注目を集めている。もちろん、大会で使われる用具はニューバランス製であり、選手は最新のスパイクなどをリアルに体験できる。

ニューバランスカップのコンセプト

最後に山崎氏は、ニューバランスは世界でトップ3のスポーツブランドを目指すために、「RUN」「LIFESTYLE」「FOOTBALL」「WOMEN」に注力し、グラスルーツ(草の根運動)と育成によってプロダクトのよさを納得してもらい、信頼を勝ち取るようにしているとまとめる。

今後は、G2Gのアウトプットをデジタル化することで、ターゲットに適したコンテンツを適した伝達手法で露出していく方針だという。

リアルとネットを行き来する施策を行うサンリオ

続いて、サンリオからは田口歩氏と鈴木理恵氏が登壇し、同社の経験価値マーケティングの取り組みを紹介した。

株式会社サンリオ
メディア部
ジェネラルマネージャー
田口 歩 氏

まず田口氏は、「メディア部のミッションはエンゲージメントファーストにあり、キャラクターとユーザーの絆づくりが重要だ」と話す。しかし、約450ものキャラクターを保有し、未就学児から40~50代までの幅広いユーザー層が存在するなか、店舗やテーマパーク、Web、SNSなどの多種多様な顧客接点のどこに注力すべきかが大きな課題だという。

そこで求められたのが顧客コミュニケーションの再構築だ。カスタマージャーニーを作成し、デジタルやオンラインでのエンゲージメント施策、およびリアルやオフラインでのブランド体験の2つの企画を行うようになったと田口氏は説明する。

サンリオユーザーのカスタマージャーニー例。リアルとネットを行き来しながらブランドロイヤルティを高めていく

デジタル上のエンゲージメント施策では、キャラクターごとの公式Twitterアカウントを通じ、ユーザーに寄り添うバーチャルな体験を提供している。ちょっとした朝のあいさつであっても、キャラクターが自身の言葉としてツイートすることで、エンゲージメント率が非常に高くなると田口氏は説明する。

キャラクター自身がツイートを投げかけることでエンゲージメントが大きく向上

また、毎年のファン投票企画としてキャラクター大賞を実施。2016年は新たに、スマホの画面を一定時間“なでる”ことで投票できる「なでる投票」という仕組みを作り、これまでにない体験を提供した。

「なでる投票」による新しい体験

その他、2015年夏には、ピューロランドの集客プロモーションとして「ちゃんりおメーカー」という企画を実行。スマートフォンでアバターを作り、ピューロランドに来場するとデジタルパレードに参加できるというこの企画は、1か月半で1億PVを超え、2,000万体のアバターが作成されたという。

ユーザーが求める最高の購買体験

リアルでの体験は、国内115店舗の直営店と、百貨店内など展開される100店舗以上のサンリオショップが重要だと田口氏は説明する。サンリオのユーザーは、ECの利便性よりも店舗での購入を好み、サンリオらしいおもてなしを求めており、最高の購買体験を提供する必要があるためだ。

また、購買体験以外でも子供向けの店頭イベント「サンリオプレイスクール」を開催し、顧客の育成を行っている。その他、これまで期間限定だったキャラクターカフェの常設や、ピューロランドのようなキャラクターと触れ合えるテーマパークの海外展開も行っている。

キャラクター自身が呼びかけ触れ合えるリアルプロモーション

リアルなプロモーションとしては、2016年3月に実施した「抱きつきプリン」が紹介された。新宿の地下通路の柱に人気キャラクターのポムポムプリンを設置し、キャラクター自身がこれに抱きついてほしいとTwitterで呼びかけると、投稿後3時間で2万5,000リツイートされ、フォロワーが5,500人増加したという。

抱きつきプリンの主な成果
・インプレッション数:870万回
・いいね!数:6万8,000
・リツイート数:5万7,000
・エンゲージメント総数:169万
・フォロワー数:5,500人増加

新宿の地下通路で実施した体験型のプロモーション

ユーザーは、リアルとネットを自由に行き来してブランドへの接触を繰り返すことによってロイヤリティを高めていくと説明する田口氏は、ネットはより早く多くの人に情報を伝えることができ、Always Onでいつでもキャラクターがそばにいる体験を提供できるとした。また、リアルな体験には時間や空間の制約があるが、体験によって感動を引き起こすことができ、ブランド愛を確かなものにすることができると説明した。

体験の積み重ねがブランド愛を育てる

続いて、入社2年でブランド愛が高まったと話す鈴木氏が、実体験をもとにしたカスタマージャーニーを紹介した。


株式会社サンリオ
メディア部
鈴木 理恵 氏

鈴木氏は、幼少期にサンリオのキャラクターに触れていたものの、その後はキャラクターが付いた商品を選ぶことはほとんどなかったという。ところが、女の子を出産することで再びキャラクターに触れるようになったと説明する。

また、米国を旅行した2013年は、海外セレブの間でキティブームが起こっており、それをきっかけに洗練されたデザインだと感じるようにもなったという。こうして鈴木氏は、サンリオのキャラクターをファッショナブルなものとしてとらえるようになる。

サンリオのブランドを体験するまでのカスタマージャーニー

そして2013年にサンリオに入社し、ピューロランドに足を運んでみると、非常に大きな感動体験を得られたと話す。その後は、サンリオ商品を購入するようになり、今では何度もピューロランドに通い、ママ友にも拡散するようになったという。

田口氏は、鈴木氏の例のように、さまざまな体験を積み重ねることによって、キャラクターに興味がなかった人がブランド愛を持つように変っていくと最後に説明し、第一部を終えた。


2016年7月26日開催月例セミナー 第2部

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