Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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2010年9月29日開催 Web広告研究会 第22回WABフォーラムレポート(2)第二部「ビジネスのためのWebを考えよう」 マーケティングで最も重要なWebを活用するために必要な変革とは イベント報告

  • 掲載日:2010年10月26日(火)

(前ページ)2010年9月29日 第22回WABフォーラム (1)

第二部「ビジネスのためのWebを考えよう」
マーケティングで最も重要なWebを活用するために必要な変革とは


第22回WABフォーラム第二部のパネルディスカッションは、「ビジネス改革+Web広告研究会=良いWebコミュニケーション ~ビジネスのためのWebを考えよう~」をテーマに行われた。第一部に登壇した若い世代の声を受けて、Webの現場に長く関わってきたパネリストたちが、企業がどのようにWebコミュニケーションを展開していけばよいのか、議論を交した。

日本の企業はコミュニケーションの変化に対応しきれていない

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Web広告研究会 幹事
本間 充氏


パネルディスカッションは、モデレーターにWeb広告研究会の幹事である本間充氏、パネリストにアドビシステムズ株式会社でマーケティングを統括する伊藤かつら氏、RIA(Rich Internet Applications)の開発を手がける株式会社サイトフォーディの隈元章次氏を迎えて開始された。

各登壇者の自己紹介後、伊藤氏から「もう少し制作側の意見も取り入れてディスカッションをしたい」という要望があり、WebクリエーションアウォードのWeb人賞を受賞した株式会社ワンパクの阿部淳也氏が急遽招き入れられ、4名でのディスカッションとなった。

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アドビシステムズ株式会社
伊藤 かつら氏

最初に「第一部の感想を」と本間氏に振られた伊藤氏は、「広報的な立場の人が多いからかもしれないが、日本の企業ではまだまだWebに対して受身だと感じたことがショック」と話した。広報、宣伝を問わず、ビジネス活動としてWebが必要であり、マーケッターが顧客とコミュニケーションをとり、その結果を数値化して示すためにはWebが必須である。そのことを、日本の企業の経営層などがわかっていないのではないかと感じたのだという。実際にアドビシステムズでは、この5年間でオフラインの広告を減らし、オンラインのキャンペーンへと移行してきたというが、伊藤氏はその理由について、「Web上のお客様の行動を数値化して見せられること」と、Webならではの特性を話した。これを受けて阿部氏も、「Web担当者も代理店も、制作プロダクションも、今のままではダメだということは十分わかっている。さまざまな企業のお客様と仕事をしていくなかで、気付いているのになぜ変われないのかと感じることは多い」と話した。

Webはマーケティング内で最も重要な要素


株式会社サイトフォーディ
隈元 章次氏


隈元氏は、「エンタープライズ系のイベントに出席すると、開発の人たちの方が、Webマーケッターの人たちよりも先進的で、ソーシャルやコミュニケーションについて真剣に考えていると感じる」と話した。たとえば、イントラネット上の社長メッセージにFacebookのような“いいね!”ボタンを付ける発想があるなど、ソーシャル的な手法を取り入れようという動きがあるというのだ。これらの話を受けて本間氏は、「マーケッターがWebマーケティングにフォーカスするだけでなく、もっと広く見ていく必要があるのに、マーケティング以外の部門の人の方がもっとスゴイことをやっているのが現状」とまとめた。


マーケティングが経営に直結する体制作りが必要

伊藤氏は、「最近の技術革新はWebやインターネットの周りでしか起きていない。IT部門は“ビジネスを変える”ということを要求されているため、Webのテクノロジーにその可能性を見出しているのではないか」と現状を別の視点から分析する。

Webの領域で生まれた新たな技術が他の領域にも大きく影響を与えているなかで、「企業はビジネスのためにWebを活用はしているが、視野が狭くなっているのではないか」と本間氏が話を向けると、伊藤氏はマーケティングを全体で考えることの必要性を伝えた。基幹システムの分野とマーケティング活動が切り離されている企業が多いが、理想を言えば、マーケティングと基幹システムの両方のデータや数値を融合させて、サイトへの広告表示やコールセンターでの顧客対応時のデータとして活用しなければならないのだという。

「全体を視野に入れた広い範疇でマーケティングを行い、キャンペーンを行っていく必要がある」という伊藤氏は、企業の体制についても触れ、外資系の企業のなかには“マーケティング”の部署があり、そのなかにキャンペーンの部署と広報の部署があることを明かす。宣伝の機能はなく、キャンペーンの部署がオンラインとオフラインを含め、すべてのキャンペーンを統括していくのだ。日本の企業は、第一部でも触れられたように、メディアヒエラルヒーによってメディアごとの投資配分が別の場所で決められていることが多い。しかし、マーケティングの部署を設けている企業では、コーポレートブランディングなどの一部の例外を除いて、キャンペーンマネージャが目標を達成するために、どのメディアにどれだけの予算を投資するのか、オンラインとオフラインのどちらを選択するのかなど、すべての配分を行っていく。伊藤氏は、「マーケティングが経営活動に直結し、マーケティングのなかでもWebが非常に重要であることがきちんと理解されている体制が取られている」と、企業体制の違いを話した。


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株式会社ワンパク
阿部 淳也氏


社内体制に関して本間氏が、「外資の会社と日本のドメスティックな会社では、組織図自体が違うことも大きな要因になっている可能性がある。極論すると、大企業であればあるほど看板で仕事をしてしまって、1人ひとりの社員の顔を見せることを美徳としていない」と話すと、阿部氏も「組織がブラックボックス化してしまっていて、お客様に向き合うスタンスとなっていない気がする」と答え、「ソーシャルがオープンでボーダレスな時代になっているなかで、組織はもっとフレキシブルになり、各部署が対外的にコミュニケーションをとらなければならない」と話した。

また、意外と経営幹部はWebを理解しているが、的確な情報が伝わらないため決裁権者で話が止まることが多いということも話し合われた。隈元氏は、日々の仕事のなかで「テクノロジーや方法論について話していけば現場や経営層には理解してもらえるのに、途中で止まってしまうケースが多い」と感じているようだ。一方で、阿部氏は「ソーシャルなことをやろうとすると、広報がやるのか、広告がやるのかといった議論で止まってしまうことも多い」と話した。

本間氏は、「本来は、ロイヤリティ確保のためにソーシャルを使うなら、各部署の担当者がやるべきこと。しかし、ソーシャルがでてくると、Webチームがやるという話になりがち。また、事業部は自分たちの商品をどうするかを考えるべきなのに、最初から“Twitterを使いたい”ということが目的になってしまっている場合がある」と指摘した。伊藤氏の言うような体制であれば、事業部が商品に関するメッセージやブランディングを考え、それを実現するために、キャンペーンマネージャがTwitterを使うべきなのかという判断を行うのだが、日本の多くの企業ではそのような体制になっていないのだ。

コミュニケーションにふさわしい手法を選択する

本間氏は、「隈元さんや阿部さんのようなパートナーさんは企業のなかにまで入ってやる覚悟があるのに、企業がなかなか変わっていかないのは、自分たちのような企業側の決定権者に問題があるのではないか」と指摘する。隈元氏も、インタラクティブなWebを作ろうとしたときに、過去の失敗から「Flashは嫌」などと言われるケースが多いことを明かし、「何らかの新たな試みを行わなければならないのに、最初から事故や失敗を恐れて先に進めない」と話した。

「新たなことをやるのであれば、しっかりとリスクを理解し、自分で判断して覚悟を決めなければならない」と本間氏が続けると、伊藤氏も「失敗を恐れず、日々勉強していく必要がある」と語った。


小さな成功からはじめ、Webの価値をアピールすることが重要

本間氏はこれまでのディスカッションの流れを聞き、「今後は、Web広告研究会でも企業のマーケティングの本質について踏み込んでいく必要があるのではないか」と話すと、伊藤氏は「マーケティングの位置付けを証明できない限りは、会社のお金は使えない」と答えた。そのためには「最初にビジョンが必要で、Webの可能性を信じた上で提案書などを書けばよい」と伊藤氏は話し、「ソーシャルメディアなら低コストで済む。予算ゼロで、自分の時間の範囲内で、まず小さなことから始めて結果を出していくことが重要」だとした。また伊藤氏は、「自分の役割を今のキャリアで限定せずに、常に自分よりも2つぐらい上の肩書きの目線で判断すれば、自分の役割やプロジェクトを俯瞰して見ることができる」と話した。




また、広告主はキャンペーンの提案依頼書(RFP)をしっかり書けるようになって自らのコンセプトを表現できるようにならなければならないという話や、失敗してすぐにパートナーを変えるのではなく、長く付き合えるようにすべきだという話がされた。「なぜ失敗したのか」という経験を分析することが、より大きな成功へとつなげるチャンスにもなるため、一度の失敗でパートナーを変えてしまうのはもったいないというわけだ。また、新たな技術やブラウザ、デバイスなどの細かな情報をすべて企業側が追いかける必要はなく、プロに任せられるものはプロに任すといった話、コミュニケーションを取りまとめる大きな権限を持った役員を置くような組織改革を行えば部署間連携もうまくいくといった話も議論された。

今回のディスカッションでは、“成功しなければならないのが外資企業で、失敗してはいけないのが日本企業”という、企業の体質についても話し合われた。それに対して本間氏は、「日本企業も成功しなければならないが、成功してもそれほど評価は上がらない。どちらかといえば、失敗したことをうまく説明することができず、次への成功へつなげられないということも言える。失敗を振り返って分析せずに曖昧なまま終わらせるという傾向もある」と答えた。自分たちが行ってきた仕事をしっかりととらえなければ、まわりを動かすことはできないが、失敗の説明や成功時の効果の説明をしっかりと行えれば、まわりを動かすことができ、より大きな仕事ができるのだという。

失敗を分析することで次の成功へつなげることができる

一方で伊藤氏は、「まだWebが重要なマーケティングコミュニケーションとして理解されていないのならば、逆にチャンスだ」と切り出し、「認められていなければ、少しぐらい失敗しても目立たない。成功したときは大きくアピールすることで、Webの価値を知らせていけばよい」と話すと、本間氏も「成功したときには大きくアピールしないと誰も誉めてくれない。Web広告研究会で、成功したときのプレゼンテーション研究会というセミナーを開いてもいいかもしれない」と答えていた。また、成功したことをしっかりと説明するには、前述のよう俯瞰してプロジェクト全体を見る目が必要となることも強調された。さらに、Web上で顧客とコミュニケーションしようとする人が、社内のコミュニケーションを取れないようでは意味がない、もっと社内を走り回って各部署との調整を取れるようにならなければならないといった話も出てきた。一方で、広告主は広告代理店や制作会社との付き合い方も変えていかなければならない、という議論も行われた。「なにを達成したいかのか、目標は決めてほしい」との声があがったように、企画を丸投げするのではなく、しっかりと約束事やゴールを設定し、それに基づいて適材適所に制作会社や開発会社を置いていく必要がある。

今回のディスカッションでは広告主と制作の両方の立場からさまざまな議論が行われたが、本間氏は「まず、組織改革を行ってマーケティングという部署を確立させること。また、Twitterなどの武器を先に口に出すのではなく、ゴールや目標が先にあってそのための武器がTwitterなどであることを理解すること」と2つの大きな課題を話し、来場者の質疑応答に場を移した。

<小見出し>
マーケッターに必要な要素とは

「マーケティング部門を設立するにあたってどんな人材が必要か」という質問に対して伊藤氏は、「まず、マーケティングの基礎用語や概念を教育して理解させるだけでも大きな進歩」と話し、マーケティングのやり方を理解してスキルを持っているが用語を知らない人は意外に多く、共通の言葉で話ができるだけで意味があることを明かした。次に「どのような広告主であれば仕事をやりやすいと感じるか」という質問に対しては、隈元氏と阿部氏が「責任や覚悟があって、一緒になって作っていくことを考えられる人」と答えた。広告主の立場である本間氏と伊藤氏も「一緒に苦労して失敗することが重要」と両氏の意見に同意。本当にパートナーとしてモノを作っていくのであれば、一緒に苦労していくことでより強いつながりができ、以降の仕事もよりよいものとなるということなのだろう。



また、「日々自分が変化するために何を行えばよいか」といった質問も飛び出し、パネリストたちの仕事に向かう考え方や姿勢、心がけていることなども披露された。第二部は、広告主とパートナーという双方の立場から、今後のWebコミュニケーションをよりよくするために何を行っていくかが本音で語られ、予定を超える1時間半のディスカッションのなかには、さまざまな立場の来場者が自社で実行できるヒントがある有意義なものとなった。

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