Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

2010年3月24日開催 Web広告研究会3月月例セミナーレポート 日本の広告費の現状とクロスメディア広告戦略の考え方(1) イベント報告

  • 掲載日:2010年4月13日(火)

2010年度 第一回Web広告研究会月例セミナーレポート
日本の広告費の現状とクロスメディア広告戦略の考え方


2010年3月24日、2010年度の第一回となるWeb広告研究会の月例セミナーが開催された。今回の第一部は、電通の小野裕三氏の「日本の広告費とインターネット広告の潮流」と題されたセミナーで、広告費の現状と今後の広告戦略に何が求められているかが話された。第二部では、日本テレビ放送網の太田正仁氏による「日本テレビのクロスメディア広告戦略と事例紹介」が行われ、テレビ局がクロスメディア戦略をどのように考えているかが示されている。複数のメディアを連携させる広告が注目されるなか、セミナー会場はほぼ満席となり、多くの聴講者が情報に耳を傾けていた。


第一部 日本の広告費とインターネット広告の潮流
新聞を抜き第2のメディアとなったインターネット広告
第一部に登壇した小野氏は、まず電通が2月に発表した「2009年日本の広告費」をもとに日本の広告費の推移をグラフに示し、説明を始めた。

2010032401.jpg



株式会社電通
デジタル・ビジネス局
インタラクティブ・プロデューサー
小野 裕三氏


日本の広告費の総額は2年連続で前年実績を下回り、電通の調べではマス4媒体の広告費は5年連続で減少し、広告費全体の5割を切る結果となった。一方で、2008年に初めて広告費全体の構成比の1割を超えたインターネット広告は、2009年には構成比を11.9%にまで伸ばしているという。前年から増加したのは衛星メディア関連とインターネット広告のみで、マス4媒体の広告費は印刷媒体(新聞や雑誌)の落ち込みが大きいものの、2008年から連続して見ると2009年後半には回復傾向を見せていると小野氏は指摘する。また、トータルの広告費(媒体費+広告制作費)で新聞を抜いたインターネット広告が、テレビに次ぐ“第2のメディア”となっていることも大きなトピックとして取り上げられた。

しかし、新聞とインターネット広告を媒体費のみで比較すると、まだ新聞のほうが高いというデータも出ている。純粋に媒体費だけを見れば、新聞がメディアとして上回っていると考えられるが、一方でこの数値は「インターネット広告の多様性と特異性を示すものだ」と小野氏は分析した。インターネット広告で制作費が占める割合が高いのは、バナー広告の制作費だけでなく、製品やサービスのキャンペーンサイトの制作費も含まれているためで、インターネット広告はメディアとしての側面に加えてツールとしても活用されているのだ。

2010032402.jpg


インターネット広告の制作費からはその独自性が読み取れる


広告費全体ではなく、インターネット広告に絞ってデータを見ると、2008年まで大きく成長してきたインターネット広告費も、2009年は前年比で100%を少し超える微増にとどまっている。全体傾向として、各広告媒体のPVの伸びが頭打ちになってきたことなどもあり、バナー広告などのディスプレイ広告が減少し始めているが、検索連動広告は広く活用され、引き続き堅調な傾向にある。インターネット広告への評価は着実に定着してきており、行動ターゲティング広告などの新しい領域も成長が見込まれ、ソーシャルメディアの広告活用も今後期待されていく分野となることが予測される。

モバイルに関しては、3G端末や通信定額制の普及、ソーシャルメディアの普及拡大による企画性の高い広告展開、端末の高度化によるコンテンツの進化などが市場の成長を後押ししている。iPhoneなどのスマートフォンも、広告活用のさらなる進展材料として期待されるだろう。


テレビとネットメディアを核とした戦略が重要

続いて小野氏は、「生活者のインターネット利用状況」という観点から解説を続ける。マスメディアへの接触時間が減少するなか、ネットメディアへの接触時間は増加傾向にあり、1位のテレビに続くメディアとなっているため、テレビとネットメディアを核としてコミュニケーションを設計していく必要があると小野氏は話した。また、メディアの接触時間が減っていると言われるが、テレビだけを見ると大きく減少しておらず、10代ではテレビがメディア接触時間の大半を占めているという意外なデータも示された。

「日常生活での重要なメディア(1〜2番目の組み合わせ)」を見ても、「テレビ×ネット」が最も多く、「ネット×テレビ」が次に続く。全体を見ても、他媒体とネットやモバイルといった組み合わせが多く、ネットが非常に重要なメディアとなってきたことがわかる一方、若い層ではテレビへの評価が依然として高いことも見逃せないと小野氏は説明した。また、各メディアの特性に応じた「使い分け」が行われており、「情報収集の中心となるメディア」としてはPCのインターネットがテレビを抜き1位であることが示され、この「使い分け」は商品の購買行動にも顕著に現れているとした。

これらの消費者行動に対応したマス広告とインターネット広告について、小野氏は電通が提唱するAISAS(Attention Interest Search Action Share)のフレームに当てはめて説明を続けた。マス広告はAttention(認知)とInterest(興味)に力を発揮し、Search(検索)以降のAction(購入)やShare(共有)に力を発揮するインターネット広告や自社サイト、ソーシャルメディアと組み合わせていく必要があることを示し、テレビとインターネットのクロスメディアで効果が高まっているというデータも示した。

2010032403.jpg


AISASフレームにおけるマス広告とインターネット広告の位置づけ

将来的な展望については、Twitterなどのソーシャルメディアの台頭が注目される。企業サイトに対しても比肩しうる存在となってきたソーシャルメディアに今後取り組んでいくには、ペイドメディア、自社メディア、ソーシャルメディアの3つのメディア(トリプルメディア)をうまく組み合わせていこことが重要で、自社メディアに誘導することも必要だが、むしろソーシャルメディアにコンテンツを出していくという逆転の発想も必要となってくる。

さらに小野氏は、拡大するライフログ的なコミュニケーションを広告に活用した例として、行動ターゲティング広告や海外でのマーケティング活用の例を紹介。モバイル端末の多様化によって、AR(拡張現実)を活用したデジタル世界がリアル空間に拡大している例を、位置情報を利用したiPhoneアプリの「セカイカメラ」や「iButterfly」を例に示し、これらの技術によってより進化したマーケティングの時代が始まることも解説した。最後に小野氏は、「短期的な視点と中長期的な視点での話をしてきたが、これらのデータや活用例が皆さんのヒントとなればうれしい」と話し、セミナーを締めくくった。

第二部へ
日本テレビのクロスメディア広告戦略と事例紹介
自社メディアだけでなく他社メディアとの連携で広告効果を生み出す