2010年4月27日開催 Web広告研究会4月月例セミナーレポート(1) 急速に進化するモバイルとクラウド技術はWeb広告にどう関係してくるのか イベント報告
- 掲載日:2010年5月27日(木)
2010年度 第二回Web広告研究会月例セミナーレポート
急速に進化するモバイルとクラウド技術はWeb広告にどう関係してくるのか
4月27日のWeb広告研究会の第二回月例セミナーは、「マーケティングからみたテクノロジー」という観点で開催された。第一部では、Android携帯などのスマートフォンを生み出し、さまざまなスマートフォン向けのサービスを展開しているグーグルの技術について、同社のブラッド・エリス氏が講演。第二部では、何かと話題になっているクラウドについての解説を早稲田大学大学院の丸山不二夫教授が行った。今後のWeb広告のあり方を模索するなかで、モバイルの世界やネットワークの世界がどのように変化しているかをテクノロジーの観点から学ぶ貴重な機会となった。
第一部 Googleのモバイル市場に対する現状と期待
モバイル広告は費用対効果の高いものとなる
AndroidやiPhoneのようなスマートフォンや、フルブラウザの登場によって、従来のPCでの検索体験がモバイルでも実現できるようになってきている。世界中のあらゆる情報を整理して、使いやすく提供することを目的としているグーグルでは、モバイルの分野でもさまざまな研究開発を行っているとブラッド氏は話す。ブラッド氏によれば、全世界における携帯電話の出荷台数に占めるスマートフォンの割合は、2008年の9%から2013年には46%に増え、スマートフォンの利用台数がPCを抜くことが予測されるという。また、日本国内において、一般的な携帯電話よりもスマートフォン利用者の方が約2.5倍の頻度で検索を行っているという調査結果も発表した。
グーグル株式会社
Product Manager, Japan Mobile
ブラッド・エリス氏
ブラッド氏はさらに、スマートフォンを利用した検索件数は昨年に比べて約5倍の伸びがあり、モバイルへの広告出稿の重要性が高まっているにも関わらず、現時点ではモバイル広告への注目度がそれほど高くないことを指摘した。実際に、モバイル広告は、PCと比較して低コストでコンバージョンアップを見込める場合があり、より高い費用対効果を得られる可能性があるという。
モバイル端末の進化に加え、“クラウド・コンピューティング”の登場によって、さらにモバイル端末の可能性は拡がるとブラッド氏は話を続けた。クラウドのような処理能力の高いインフラをベースに、モバイルのスピーカー、カメラ、GPS、マイクといった機能を組み合わせることが期待されているのだ。
その一例としてブラッド氏は、2009年12月に開始したAndroid端末やiPhoneで音声検索ができる「Google音声検索」のデモを行った。デモでは実際にAndroid端末を使い、マイクに口頭で住所を言うだけで検索が行えたり、「宇宙から見た日本の夜景の写真」といった言葉でも検索が行えることが示された。これらの技術は、音声認識の技術向上だけでなく、これまでどのような言葉で検索が行われてきたかというデータを分析することによって精度を高めており、クラウド側のデータベースを活用することによって、難しい地名や英単語交じりの言葉、特異な商品名なども、高速かつ正確に認識されるようになっているという。
また、画像認識技術を利用した検索の「Google Goggles」の紹介も行われた。デモでは、ニューヨークのクライスラービルの写真をAndroid端末のカメラで撮影し、ビルなどをカメラで写すだけでビルの詳細を検索できることや、絵画を写真に撮ることでその絵画の詳細情報を検索できることが示された。これらの2つのデモを通じて、ブラッド氏は「これらの技術はまだ始まりの段階で、今後はモバイル端末の機能とクラウドを組み合わせることで、もっとさまざまなことができるようになるはず」と話した。
さらにブラッド氏は、位置情報を利用したサービスも今後進化していくと話し、広告という観点から考えれば“目的が近いと、人は動く”という考え方が重要であると説明した。食事をしようと考えている人が検索を行うときに、その人の近くの店を広告として表示できれば、より効果的というわけだ。
グーグルでは位置情報を利用したサービスとして、Googleマップ上に広告を表示する「Googleプレイス」や、AndroidやiPhoneのGPSを利用して近くのスポットをリストアップする「Near me now」などが用意されている。ブラッド氏は、これらに加える有効な広告手段として、「Click-to-Call」オプションを紹介している。
Click-to-Callは、モバイル広告に電話番号を表示させ、ユーザーがそれをクリックすることで直接通話ができるサービスだ。位置情報を利用して近くの店や会社を検索したユーザーが、実際に訪問する前に、問い合わせや予約などを直接通話して行うことが可能となる。携帯電話では、PCと比較して、広告主のWebサイトを見るよりも直接端末を使って電話をかけたいと考えるユーザーは多いため、新規の見込み客の獲得にClick-to-Callは大きな効果を発揮するという。
実際に、他の経路に比べてClick-to-Call経由では、関連性の高い通話が22%多くあり、見込み客の獲得が他の経路に比べて31%多いという調査結果をブラッド氏は示した。また、Click-to-Callで電話番号を表示させることによって信頼性が上がり、Webサイトへの誘導率も3割近く向上できるという。グーグルのモバイル戦略と新たな技術・サービスについて解説したブラッド氏は、最後に「モバイルならではの機能を使った効果的な広告の種類をもっと増やして提供していきたい」と話し、講演を締めくくった。
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第二部 日本のクラウド 全世界で最もコモディティ化が進んだ携帯電話