Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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『Webアナリスト4人がGoogleアナリティクスで実践! 東北観光サイト「旅*東北」の改善提案』2013年10月4日開催 第五回東北セミナーレポート(2) イベント報告

  • 掲載日:2013年12月9日(月)

Webアナリスト4人がGoogleアナリティクスで実践! 東北観光サイト「旅*東北」の改善提案

Webアナリストはどのような視点でデータを分析していくのか。Web広告研究会の第五回東北セミボラの第二部では、東北観光・旅行のポータルサイト「旅*東北」の課題と解決法を、4人のWebアナリストがGoogleアナリティクスを使って解析するパネルディスカッションが行われた。

東北観光の誘致を目的としたポータルサイト「旅*東北」

第二部では、Web広告研究会 東日本大震災・被災地支援プロジェクトの江尻俊章をモデレータに、Webアナリストとして、ゴンウェブコンサルティングの権成俊氏、Ana Marcheの村上佐央里氏、トラスの小佐野宇志氏、ラウンドナップ・コンサルティングの中山陽平氏の4名をパネリストに向かえ、東北観光・旅行のポータルサイト「旅*東北」をGoogleアナリティクスで解析していった。また、「旅*東北」を運営する東北観光推進機構のWeb担当者も参加し、4人のWebアナリストの解説や意見に耳を傾けた。
登壇者紹介(PDF)



Web広告研究会 東日本大震災・被災地支援プロジェクト 江尻 俊章(株式会社環)
旅東北につかえるGoogleアナリティクス(PDF)

モデレータの江尻は、「旅*東北」のサイトを分析することによって、東北観光の活性化のアドバイスを行っていきたい」と挨拶し、今回の分析や結果の資料がWeb広告研究会の公式サイトからダウンロードできることを明かした。

4人の現役WebアナリストによるGoogleアナリティクス活用術

東北観光推進機構の設立は2007年7月。「旅*東北」は東北観光・旅行のポータルサイトとして、東北の認知度向上や国内や海外(特に東アジア)からの観光客誘致を目的としており、2012年3月にリニューアルしている。

「旅*東北」の主なターゲットは東北旅行の初心者や中級者で、少人数グループ旅行の「検討→決定・予約→当日行動」という実際の旅行までをアシストする。東北に詳しい上級者には、個別の観光協会で情報を見てもらうことを前提としている。


「旅*東北」


また、海外旅行者向けに英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語に対応している。SNSとしては日本語版と英語版のFacebookページを持っており、中国版のTwitterともいわれる微博(ウェイボー)のアカウントも開設している。

サイトの目的とユーザーの絞り込みで「旅*東北」の改善点を指摘

「旅*東北」は、2013年3月まで運営されていた「東北観光博」や「東北パスポート」の事業を継承したため、リニューアル後のPV数は飛躍的に増加した。しかし、コンテンツ統合のために初心者や中級者向けではなくなった感があり、地域によって更新に偏りが出始めたことが課題だ。また、外国語サイトのコンテンツが基本的に日本語サイトの翻訳にとどまっているため、こちらのPV数が伸び悩んでいることも課題となっている。

最初に解説を行った権氏は、「サイトの目的を明確にすることでユーザーが絞り込まれ、そのユーザーがサイトを使うシナリオを考えることでサイトの理想形が見える」と話す。


株式会社ゴンウェブコンサルティング
代表取締役
権 成俊氏 セミナー資料(PDF)

実際の「旅*東北」のサイトをスクリーンに表示させながら、サイトの良い点と悪い点を指摘した権氏は、さまざまな機能が盛り込まれている一方で、機能ごとに対象ユーザーが異なること、ターゲットユーザーが広すぎることなど、各ユーザーに対して何を提供するかが明確に設計されていないことを指摘する。そのうえで権氏は、次のようなユーザーシナリオを描く。

「旅*東北」のユーザーシナリオ
・東北観光に興味がある人がメインスポットを決める
・その周辺で足が伸ばせそうなサブスポットを検討する
・観光スポットへの移動手段を検討して、宿泊予約・交通手配を行う


また、サブスポットまで検討して旅の大筋を決めた後は、一緒に旅する家族や友人との相談も行われるため、移動手段の検討や宿泊予約は数日から数週間後となる可能性があり、同じサイトで提供する意味があまりないと指摘する。さらに、各スポットの詳細情報が載っていないため、詳細情報のある観光協会サイトやスポットのサイトを行き来しながら探さなくてはならないことも指摘した。

その結果、権氏は、旅行検討のシナリオは長くて複雑であり、1つのサイトでシナリオを完結することはできないため、ユーザーやシーンにフォーカスした機能に絞り込んで、その他の機能は他のサイトに任せてしまったほうがよいと話す。

ユーザー目線から東北全体を観光スポットと考える

東北観光推進機構の事業目的は東北観光産業の活性化で、「旅*東北」の目的は「県別の観光協会サイトを補完すること」だと話す権氏は、「東北全体を観光スポットと考えると、『県境をまたいだ観光スポットを周遊するための情報を求めている人』がユーザーとなる」と示す。

「旅*東北」の訪問キーワードをGoogleアナリティクスで分析しても、「東北+観光」といったキーワードで訪問してきたユーザーのほうが、観光スポット名で検索してきたユーザーよりも閲覧ページ数や滞在時間が高い。東北のどこを旅しようかと考えるユーザーにとっては使いやすくても、スポットごとの情報を求めるユーザー向けのサイトではないということだ。

しかし、直帰率の高いスポット情報を求めて検索しているユーザーを詳しく調べていくと、その中でも直帰しなかったユーザーはサイトをじっくり見ていて滞在時間が長い。「『旅*東北』訪問時の検索キーワードに関連したメインスポットの周辺のサブスポットを探しているのではないか」と権氏は説明を続ける。

実際にこれを立証するためにはユーザーテストなどを行う必要があるが、このようなユーザーモデルであれば、スポットの組み合わせを考える周遊プラン機能に絞り込むことがサイトの目的に合致すると権氏は説明する。


分析をもとに導きだされたユーザーモデル

ユーザーモデルをもとにコンテンツを再考


Ana Marche(アナマルシェ)
村上 佐央里氏 セミナー資料(PDF)

続いて村上氏が、権氏が絞り込んだユーザーモデルに対してどのようなサイト改善を行えばよいかを説明していく。

東北観光のモデルコースの紹介ページは、トップページに続いて2位のアクセス数があり、現在もさまざまなカテゴリでコースが紹介されている人気コンテンツだが、カテゴリを絞りながらコースを増やすべきだと村上氏は話す。また、モデルコース内で紹介される各スポットの地図では、スポット周辺の地図だけでなく、スポット間の移動距離やルートがイメージできるものを追加する必要もあるとした。さらに学校関係者に向けて、修学旅行用のモデルコースを提供するというアイデアも出された。

観光スポットのページでは、周遊したいユーザーに対応するためにいくつかの改善案が示された。

・県をまたいでスポット情報を探せるようにする
・アクセスページにはスポットやゾーン間移動の距離、時間がわかる広域マップが必要
・トップページにはターゲットユーザーのニーズにマッチさせるため、県をまたいでスポットを周遊できる地図を配置する
・新規訪問が多いサイトなので、ブログは時系列で新着順に載せるよりも、スポットごとに分けて紹介したほうがよい




時系列のブログ紹介は、新着情報が一目でわかるリピーター向けの構成だが、新規ユーザーが多いためスポット紹介を優先すべきだと分析された。

再びマイクを握った権氏は、「サイトの目的を絞り込んで改善するだけで十分ではない」と説明する。東北全体の観光を紹介し、詳細な情報はリンクで各観光協会サイトやスポットのサイトに任せている「旅*東北」だが、行ってみたいと思わせるためには詳細情報をより豊富にしていくことが必要であり、その働きかけが必要だ、とした。


「東北観光に行ってみたい」と思わせるために必要なこと

しかしながら、各スポットのコンテンツを増やしていくのは手間も費用も掛かる。そのための解決手段として提案されたのが、Googleマップの写真掲載機能だ。旅行者やボランティアに撮影した写真や動画をネット上のコンテンツとして公開してもらうことによって、現地の人とのコミュニケーションが生まれ、旅行者の参考にもなり、クチコミ情報も得やすくなるというのだ。

最後に権氏は、「サイトを運営する場合には、サイトの価値や効果がどれくらいの金額になるかを意識しなければならない」と話す。また、今回は検索キーワードとPV、滞在時間をもとに改善策を打ち出してきたが、アクセス解析で重要なのは、解析レポートを数多く出すことではなく、少ない解析から多くの改善案を考え、実際に結果を出すことだと説明した。

来訪者の流れを分析して個別の改善策を考える

続く講演では、「検索エンジン経由に絞ったサイトの改善」をテーマに、中山氏がGoogleアナリティクスとウェブマスターツールを活用した改善手法や考え方について解説を行った。


ラウンドナップ・コンサルティング
代表
中山 陽平氏 セミナー資料(PDF)

Googleアナリティクスに加えて、ウェブマスターツールも重要なツールであり、ぜひ活用してほしいと話す中山氏は、検索エンジン経由に絞ってアクセス解析のポイントを説明する。「旅*東北」は、検索エンジンからの来訪者が多く、目的が売上などの数字に直結しないため、有料のリスティング広告などを活用することは考えづらいからだ。

中山氏は、「分析の前に改善とは何かを捉え直し、それをサイトの運営者全員が知って意思統一することが重要である」と説明する。改善は、目標と現実のギャップを埋めるために行うものであり、ぼんやりとした「アクセス数や売上を伸ばしたい」という目標ではうまくいかない。

解析ツールを見ているだけではうまくいかないのは、目標をきちんと設定していないからだ。目標を決めるためには目的を設定し、現実を知るためにデータを取って読み取る必要がある。また、いきなりすべてを改善するのは非常に難しいため、問題を個別に分解して1つずつ撃破していくことが重要であると中村氏は説明した。

では、どのように検索エンジン経由の来訪者の動きを分解するのか。中山氏は、自分ならどのような行動をするのか、検索時の行動を考えながら、その流れを分解することが重要だと話す。


検索エンジン経由で訪れたユーザーの一般的な動き

そのうえで、分解したそれぞれの段階での改善を行う必要があるとする中山氏は、検索の段階では、自らのサイトが上位表示される必要があり、まず現状の流入キーワードや検索順位などを知る必要があると解説する。その際に重要なのは、次の3つだ。

・適切なターゲットキーワードを意識しているか
・1ページ目に表示されているか
・ターゲットが検索しそうなキーワードをどれだけカバーできているか


こうした現状を把握したうえで、集客キーワードを追加し、定期的にキーワードごとの検索順位やクリック数、サイトへの集客数などを計測していく。数百ものキーワードを洗い出していくには、グーグルアドワーズのキーワードプランナーやサイト内検索のキーワードを活用したり、Q&Aサイトなど分析したりすることも重要だという。

ブログの活用は、キーワードを多く散りばめることができるため、検索エンジン経由の集客に効果を発揮させることができる。一定のルールでブログを運用していけば、ロングテール集客を狙うことができるが、現状の「旅*東北」の各ブログでは「東北」などの重要なキーワードが入っていないため、ブログの書き手が最低限どのようなキーワードを使わなければならないかを意識させる必要がある。

ユーザーが検索結果を吟味する段階では、検索結果に表示されるスニペット(タイトルとディスクリプション)を改善する方法が紹介された。「スニペットを改善するだけで、簡単に2~3倍のアクセス数を得ることもある」と話す中山氏は、ウェブマスターツールの「検索クエリ」を確認し、そのキーワードの検索順位が高いのにCTR(クリック率)が低い場合は、スニペットがよくない場合が多いと指摘する。

旅行先の検討初期段階では、多くの人が5~6のサイトで比較検討するため、直帰率の高いページを改善する必要があり、できれば50%以下、理想は30%以下に抑えるように改善を行わなければならない、と中山氏は指摘する。

また、サイトのキャッチフレーズなどを示すタグラインの課題にも触れ、「東北の観光情報ポータルサイト」としか書かれていない「旅*東北」では、もっとアピールする必要があり、ポータルサイトという言葉も曖昧だと指摘。ユーザーが求めているものを把握し、その回答となるものや来訪者の知りたいことを明確に定量化して伝える必要があるとした。

最後に中山氏は、「ツールはきちんと目的を持って使わないと時間だけが過ぎるため、前段階として、さまざまな考え方や使い方を知ることでアウトプットが改善される」と述べ、講演をまとめた。

各国のインターネット事情を考えたグローバル戦略

4人目のコンサルタントとして登壇した小佐野氏は、「旅*東北」のグローバル展開について解説を行った。


株式会社トラス
取締役
小佐野 宇志氏 セミナー資料(PDF)

小佐野氏は、統計データなどを示しながら、海外からの宿泊者の多くを占めるアジアのなかでも、特に上位を占める台湾、韓国、香港、中国からの観光客を集めるためには、「旅*東北」でも中文ページや韓国語ページが特に重要だと説明する。

また、国内向けページはアクセス目標を超えているのに対し、海外向けページは海外でのプロモーションを行っていないためにアクセス目標を大きく下回っていることも指摘された。さらに、日本語版Facebookのファンが約5,500人、英語版Facebookのファンが約4,800人なのに対し、中国版Twitterの微博のフォロワー数が約1万1,000であることから、中文圏で日本や東北に対する関心が高いことを説明し、微博から「旅*東北」へのリンクを付けることも提案された。

グローバル展開の現状を確認した小佐野氏は、「なぜ海外向けページへのアクセス数が少ないのか」というテーマに移る。海外向けページには、「認知」「コンテンツ」「行動」の3つの壁があると話す小佐野氏は、認知について、海外向けサイトを日本のサーバーに置いても一部の海外の検索エンジンには引っかからず、広告も出しにくいと指摘する。また、コンテンツの充実やオンライン予約など、行動の壁も存在する。そのうえで、次のような目標とKGI、KPIがあると説明した。


海外向けページの目標1


海外向けページの目標2

認知の壁について、海外SEOを考える小佐野氏は、「旅*東北」は海外検索エンジン経由の流入が少ないことを指摘し、流入上位を占める各国の検索エンジンシェアは、「中国(百度)」「台湾(Yahoo!)」「香港(Google)」「韓国(NAVER)」といったように異なると説明する(台湾のYahoo!はBingの検索エンジンを採用)。

加えて、海外向けのSEOを行うためには、国によってアクセス制限される場合があるため、各国内にサーバーをおくことを小佐野氏は勧める。特に中国内でWebコンテンツを提供するには、政府発行のICP(Internet Content Provider)登録が必要になることや、百度やNAVERではリスティング広告の枠が多すぎるためオーガニック検索で上位表示させることが難しいなど、ハードルが高いことを小佐野氏は示す。

こうしたハードルの高さから、SEOよりもリスティング広告を展開することを勧める小佐野氏は、日本食への関心の高さから、中国の百度では日本食を絡めたキーワードが有効であると話す。また、有効期間3年で何度でも日本に訪れることができる、観光ビザが東北三県(岩手県,宮城県、福島県)を訪問する中国人個人観光客に発行されることを、キーワードに含むことが有効だと推察する。

また、韓国のNAVERは、さまざまなカテゴリの検索結果を同時に見せる統合検索結果となっており、1つの検索結果に対して最大15個のリスティング広告が表示されるため、ファーストビューのほとんどが広告であることも示した。


NAVERのファーストビューの多くはリスティング広告が占める。海外向けSEOでは各国の特性を把握しなくてはならない

コンテンツの壁については、小佐野氏が海外の人々に日本に旅行したい理由をアンケート調査した結果、「食文化」「伝統的な祭」「日本人の気質や文化」などに魅力があるという回答を得たことを示し、日本の文化や心とコミュニケーションできるコンテンツを作ることを提案している。

たとえば、中国の微信(ウェイシン、WeChat)やLINEなどのチャットを使い、「旅*東北」のガイドを登場させて日本の文化や人の良さをコンテンツとして提供し、コミュニケーションを取ることが考えられると小佐野氏は説明する。また、海外のネットショッピングサイトで東北の名産品を販売することや、日本のアニメやコスプレに対する興味の高さから、仙台コミケを開催するなどの提案も行われた。

講演の後半は駆け足での解説となったが、4人のWebアナリストの解説は改善案も含めて非常に具体的なものであり、プロのアナリストがどのような視点で分析を行い、改善へとつなげていくのかを知ることができる実践的な内容となった。なお、当日の講演資料やモデレータの江尻による補足資料はWeb広告研究会のサイトで公開されているため、ぜひ参考にしてもらいたい。
4人の現役WebアナリストによるGoogleアナリティクス活用術

2013年10月4日第五回東北セミナーレポート(3)
2013年10月4日第五回東北セミナーレポート(1)

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