Digital Marketing Institute | デジタルマーケティング研究機構

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「これからのマーケターに求められる要素とは? リコー×キリン×ライオンが議論」2016年3月24日開催 第30回WABフォーラムレポート第二部 イベント報告

  • 掲載日:2016年6月7日(火)

デジタル環境の変化を楽しみながら、企業価値を高めるマーケターになってもらいたいとの意図を込めて発表された「デジタルの変化に対応できないマーケターは淘汰される」というWAB宣言。WABフォーラム第二部では、デジタルマーケティングを推進するマーケターたちが、デジタル環境の変化や未来のマーケティングについて語った。

デジタルのコミュニケーションすべてに関わる人が変化すべき

第二部講演は、アジャイルメディア・ネットワークの徳力 基彦氏がモデレータとなり、リコーの伊藤 恵美子氏、キリンの小川 直樹氏、ライオンの中村 大亮氏がパネリストとなって、WAB宣言を受ける形でパネルディスカッションが行われた。

モデレータ
アジャイルメディア・ネットワーク株式会社   
取締役CMO
徳力 基彦氏
株式会社リコー
コーポレートコミュニケーションセンター
戦略・統括室
伊藤 恵美子氏

 

キリン株式会社
CSV本部
デジタルマーケティング室          
デジタルマーケティング担当   
ソーシャルメディアチーム
小川 直樹氏
ライオン株式会社
宣伝部
デジタルコミュニケーション推進室
主任部員
中村 大亮氏

 

まず、2016年WAB宣言「デジタルの変化に対応できないマーケターは淘汰される」の第一印象について、パネリスト3名は次のように答えた。

伊藤氏:Webの立ち上げ当初は、情報をわかりやすくまとめて伝えることが重要だったが、現在はマーケティングツールの1つとしてWebが存在し、マーケティング部門の意見も聞きながらやらなければならない。マーケターだけでなく、デジタルでコミュニケーションをしているすべての人が変化に対応できないと、仕事がやりづらくなってきていることを実感しているので、共感できるところは多い。

小川氏:環境が大きく変化してきていることを感じ、お客様にあわせてしっかりとしたマーケティングをやっていく必要があると感じている。中長期でのブランディングをみんなで考えて作っていく必要が出てきており、デジタルをマーケティングに取り入れなければいけないと感じている。

中村氏:マーケターがデジタルマーケティングを考えるのは当然の時代となってきており、CTRなどをGRP単価と同じように計算できるマーケターが増えてきている。一方で、デジタルには詳しくないから任せっぱなしにするマーケターがいることも課題だと考えていたので、今回の宣言にシンクロしていると感じた。

モデレータの徳力氏は、今回の宣言は、言葉だけを見ると過激だが、マス側のマーケターだけに言っているのではなく、自戒の意味も込められている点が重要だと説明する。マーケティング側が変わるだけでなく、IT側もマーケティングのことも理解する必要があるとし、徳力氏はディスカッションを円滑にするためにも、会社として話すのではなく、1人のマーケターとしてどのように考えているか、忌憚なき本音の意見を交わしたいとパネリストに呼びかけた。

個のアプローチが可能な時代へ

「デジタルの時代になって何が変わったのか」をテーマにした議論では、中村氏が顧客のインサイトを把握できるようになったことが大きいと話す。それによって顧客中心のマーケティングができるようになったことが、デジタル時代とアナログ(マス)時代の大きな違いだ。

伊藤氏は、BtoBではデジタルマーケティングによって、ユーザーの情報収集や検索行動など、流入経路を把握できることが大きく変化した点だと話し、顧客へのアプローチの方法が変わってきており、関心を集める情報を提供することが重要だと説明した。

中村氏は、デジタルが普及する一方で、アナログなアプローチも増えてきていると話す。これまで見えてこなかった情報が見えてくることで、個へのアプローチが可能となり、データを深堀りするなどして、さまざまなアプローチにトライしているのが現状だという。

マーケターは広い視野で全体を見なくてはならない

では、デジタル側の人たちは、どのように変わっていけばいいのだろうか。

デジタルの専門家ではなくマーケターにならなければならないと話す小川氏は、顧客を知り、最適な形でコミュニケーションを取ることをみんなで考える必要があると説明する。

また中村氏は、オペレーターは外注でもまかなえるので、マーケターにはビジョンやマーケティング的な思想、スキルが求められ、営業まで理解する必要も出てきていると話す。データの分析からメディアのプランニングまで、すべてのプロセスを理解する必要があり、マーケターとして施策の良し悪しを自分で判断し、その後のビジョンもしっかりと持ってほしいという。

伊藤氏は、デジタルマーケティングには組織の壁を越えた部門間の連携が必要で、ブランド全体のことを考えてプランニングをする必要性があり、自分の領域だけでなく、視野を広げてプランニングすべきだと述べる。また、自身が立てた施策の結果を見て終わりにするのではなく、途中経過を分析し、その理由を考えて改善を行うことも重要であると話す。

マーケティングが変化していることを全社的に理解する

「デジタル側の人たち以外に変わってほしいところはないか」と問われた小川氏は、テレビCMが決まった後に、デジタルへの誘導をついでに行うという話は多いが、施策の最初からデジタルの人を入れるようにしてほしいと話す。

ライオンでは、統合的なコミュニケーションを考える意識が芽生えてきているところで、デジタルの部署が最初の段階からコミュニケーション設計に参加できるように徐々に変化しているという。中村氏は、自身がデジタル側ではないからといって、「わからないから任せる」という時代ではなく、マーケティングが変化していることを理解してほしいと説明する。

続けて、経営者に求める変化に話題が移ると、徳力氏が「トップの経営者は問題意識が高いと思うが、部門長や統括、または他の部署は、リスクを中心に考えてしまうのではないか」と話す。また、海外はマーケティングドリブンの会社が多いのに対し、日本は縦割りの会社が多く、経営者の出身部門によってマーケティングに対する考え方が変わってしまうことを指摘する。

組織横断のプロジェクトになることが多いデジタルマーケティングでは、経営層の理解を得ながら、旧来からのルールを変える必要がある。そうしたなかで、スムーズに進行できないことも現場の課題だという。社内の理解を得るためには、デジタルによって何が変わり、何ができるようになるかを、専門用語を使わず、だれにでもわかるように説明することも重要になる。

求められる組織と人材像

続いて、テーマは「デジタルマーケティングの専門部署を作るのか、全社でデジタルマーケティングに取り組んだほうがいいのか」に移る。

スペシャリストを増やすのか、ゼネラリストを増やすのかと問われた中村氏は、どちらか一方に偏るのではなく、事業部や宣伝部のマーケティングコミュニケーション担当は、広い意味でデジタルを理解し、細かなところは専門部署に任せるといった折衷案が日本の組織にあっていると話す。

小川氏は、ブランドを支えて中長期のブランディングを行う場合と、さまざまなブランド間をつなげた施策を考える場合では、それぞれ違うと話し、各ブランドのマーケティングに集中しすぎると、横のつながりが希薄になりがちだと説明する。

伊藤氏は、デジタルを推進している部門が各部門のマーケティング担当に働きかけて、新たな施策を支援しているが、一度成功体験を得て事業部に浸透していけば、デジタルを推進する部門は不要になると説明した。

デジタルとマスの共通指標は必要か

「デジタルとマスで共通のKPIをどのように作っていくか」について、小川氏は、施策の結果を振り返って資料を作るのは時間がもったいないので、結果をリアルタイムで見られるような仕組みを作りたいと話す。また、複数のブランドを見るときには、キリンのブランドファンの行動データを横断して取っていくことも課題だという。

中村氏は、テレビCMとWebの両方の目的が一緒であれば共通指標で見る必要があるが、たとえば、テレビCMがリーチ、Webが理解促進のように目的が違えば、指標を共通化する必要はないと話す。

また、ソーシャルメディアを例に挙げ、ロイヤルティの高い顧客とのコミュニケーションの場としてソーシャルメディアを使っているのであれば、バズらないことや、オウンドメディアへの誘導が少ないことをことさら気にする必要はないとし、指標は目的によって考えるべきだとした。

伊藤氏は、マス媒体の施策は専門誌などの雑誌広告が多く、問い合わせ件数などの指標でターゲットユーザーを見ているため、同じ指標で見ることができるという。また、マス広告のほとんどがブランディング広告であるため、施策のすべてを通して、ブランドイメージ向上にどのように貢献したかを見ていると説明した。

エージェンシーとサプライヤーに期待すること

講演の最後は、「エージェンシー(広告代理店)やサプライヤー(サービス提供事業者)に期待すること」をテーマにパネリストが議論を交わした。

中村氏は、社内も外部もデジタルのリテラシーやディレクション力がまだ身についていないと話し、「どのエージェンシーが良いのか」という話ではなく、「どの人と仕事をするか」が重要になっていると話す。また、スペシャリストだけでなく、ゼネラリスト的な役割を担える人がエージェンシーにいることを期待したいと語った。

小川氏も同意見で、やりたいことをうまく言葉にできなくて抽象的になったとしても、具体的な形に落とし込めることをエージェンシーには期待し、会社というより人として付き合えることを重視しているという。

伊藤氏は、会社の理念やサービスについては最低限、理解してほしいと話し、単発ではなく、長く付き合うつもりでチームを組んでほしいと話した。

最後に徳力氏から「淘汰されないためにマーケターがすべきことは何か」と問いかけられ、パネリストは次のように答えた。

伊藤氏:社内のメンバーだけでは煮詰まってしまうので、Web広告研究会のような組織でさまざまな人の話や事例を聞いて、刺激を受け、知識を広げることをおすすめする。異業種の話が非常に参考になることがある。

小川氏:ビジネスネットワーキングが大事。自分だけで情報収集するには限界があるので、さまざまな人の話を聞いたり、コラボしたりするほうがよい。経験値が上がれば、やれることも多くなる。

中村氏:得意分野だけにまい進するのではなく、さまざまな分野に関心を持って、その分野の人と会うことを意識していけば、自分の引き出しも増え、得意分野を増やしていけると思う。



 
2016年3月24日開催 第30回WABフォーラム 第一部


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